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広尾デリヴァランス
広尾デリヴァランス(2)
しおりを挟む「わっ!!」
スマホがコルヴェナの手を離れ、アスファルトに落ちて転がる。
モジャコが飛びつく。
「メモリーカードは!? あれだっ!!」
モジャコは尻尾を引っつかんでジシェを飛ばした。
ジシェもこうなればヤケクソ。
空中を舞うメモリーカードへ。
「にょーん」
「させん!」
コルヴェナがしぶとくつかみ取った——が、モジャコはすでにコルヴェナの間合いに入り、その腕をつかみにかかっていた。
「むぎゃー」
上空でも、リグナとデッサが建物の上を跳び移りながら光弾を撃ち合っていた。
「なぜだ、なぜ貴様のような旧型の失敗作に、ここまでコケにされなければならないのだ?」
「……」
リグナは答えず、とにかく光弾を躱し、あるいは角度を変えて空へ逃がしていく。
「動きがおかしい……」
見上げてハルはつぶやいた。
受け身になっているのは周辺に低い建物しかないためだろう。
高い位置を取らない限りなかなか自由が利かない。
しかし、ここまでに解放されたリグナの力は、デッサのそれをもう凌駕しているはずだ。
「ガルバルデが負けることなどあり得ない! わたしが証明してやる!!」
デッサは弾幕に紛れて強引に接近する。
リグナは受け止め、撥ね返そうとした。
「……?」
思うように体が動かない……。
弾き飛ばされ、アスファルトの地面に激突する。
ハルは急いでスマホのアプリを切り替え、リグナにリモート接続した。
落としたせいか通信がもたつく。
どうにか確立された接続のなかでコマンド一覧を引き出し、ハルは明らかな異変に気がついた。
使用可能だったはずのコマンドが消えている。
そして、バラバラだったジグソーパズルのピースが頭の中で組み上がった。
ハルは浜町付近で見たメッセージを再表示した——。
その背面拡張コンソールは開放された。
3枚のカードを挿入すれば、その能力は解き放たれるだろう。
(——!?)
そんなはずはない——という確信がハルにはある。
最初に見たときメッセージはこうだった——。
彼女の背面拡張コンソールは開放された。
3枚のカードを挿入すれば、彼女の能力は解き放たれるだろう。
(—— HER が ITS に変わってる! ここだけじゃない、ほとんど全部だ……!!)
思い当たるところをしらみつぶしに調べていく。
そして、リグナの状態が自分の推測したとおりであることがわかって、ハルは愕然とした。
(もっと早く気づいていれば……!!)
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