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広尾デリヴァランス
広尾デリヴァランス(9)
しおりを挟む「どのみち、これ以上そのアプリケーションに依存するのは危険ではないのか」
〈追憶のカケラ〉を探索する際、スマホからは微弱な電波が発生する。
コルヴェナたちは、すでにそれを探査して行動しているのではないか——というのがリグナの推測だ。
「そうかもしれないけど……」
「さっきいってたけど、〈追憶のカケラ〉は全部で9個って、なんでわかったんだ?」
コルヴェナとデッサが現れる直前、ハルは正二十面体を見て、〈追憶のカケラ〉の数は全部で9つだといっていた。
——と、瀕死の数ヲタが急に瞳を輝かせたので、モジャコはものすごく嫌な予感がした。
きらり~ん。
「広義の正多面体が全部で9つだから☆ 要点だけいうとね——」
正多角形とは、辺の長さがすべて等しく、内角の大きさもすべて等しい多角形のことであり、ふつう辺が交差しないものを正多角形と呼ぶ。
これに対して、辺が交差するものを『星形正多角形』と呼び、星形正多角形まで含めたものは、広義の正多角形といえる。
たとえば星形正五角形——いわゆる五芒星。
5本の辺の長さはすべて等しく、5つの内角の大きさもすべて等しい。
ここまでが2次元の話。
正多角形は無数に存在する。
正多面体とは、面がすべて同じ正多角形で、頂点に集まる面の数がすべて等しい多面体のことであり、ふつう面が交差しないものを正多面体を呼ぶ。
これに対して、面が交差するものを『星形正多面体』と呼び、星形正多面体を含めたものは、広義の正多面体といえる。
正多面体は次の5つ。
・正二十面体
・正十二面体
・正八面体
・正六面体
・正四面体
正多面体はプラトンの立体ともいう。
星形正多面体は次の4つ。
・小星形十二面体
・大星形十二面体
・大十二面体
・大二十面体
前の2つをケプラーの多面体、後の2つをポアンソの多面体ともいう。
あわせると、広義の正多面体は次の9つ。
・小星形十二面体
・大星形十二面体
・大十二面体
・大二十面体
・正二十面体
・正十二面体
・正八面体
・正六面体
・正四面体
このうち、ハルたちは、小星形十二面体、大星形十二面体、大十二面体、大二十面体、正二十面体の5つに遭遇している。
「——〈追憶のカケラ〉は正多面体のどれかに対応している、って考えるのが自然だと思うの」
「だから全部で9個ってことか」
モジャコは納得する——が、要点っていったい……。
あと、〝プラトン〟とか〝ケプラー〟とか〝ポアンソ〟とか……説明に必要ですかね?
えー、ものすごく端折ったのにー——と、ハル心の叫び。
なお、プラトンは古代ギリシャの哲学者、ヨハネス・ケプラーはドイツの天文学者・数学者、ルイ・ポアンソはフランスの数学者。
数学史、大事(JM)。
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