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広尾デリヴァランス
広尾デリヴァランス(8)
しおりを挟む「距離を考えれば、共鳴が発生するよりも早く行動を開始しているとしか考えられない」
つまり、中距離間を直線的に高速に移動するフォルトヴがあるとはいえ、広尾にコルヴェナたちが出現したタイミングは想定よりも早過ぎる——ということらしい。
「その携帯デバイスが目標物を探査する際には微弱な電波が発生する。すでにそれが探査されていると判断するのが自然だ」
「やっかいだな」
モジャコはポケットから自分の携帯電話——2つ折り・背面サブディスプレイ付き——を取り出した。
開いて誰かに電話をかける。
「おう、ポジ? いきなりで悪いけど、都電に楽に乗り換えれる地下鉄の駅ってどこ? あー、速い、もっとゆっくり」
話しながら、空いた手でハルのスマホを操作し、路線図と地図を確認する。
都電=都電荒川線。
都電荒川線は、新宿区から豊島区、北区、荒川区にかけて、23区の北部を走る路面電車で、地下鉄では都営三田線の西巣鴨駅、副都心線の雑司が谷駅、有楽町線の東池袋駅、南北線の王子駅、千代田線の町屋駅、そして日比谷線の三ノ輪駅と乗り換えが可能。
「——ただし、西巣鴨駅は都電荒川線の新庚申塚停留所からは離れている? じゃあ、そこ以外で、なるべく上から見えづらいのは?」
モジャコは、目的地が三ノ輪であることを付け加えてから、「上から見えづらい」を「雨に濡れない」に訂正した(意味わかんないし)。
答えは有楽町線の東池袋駅。
「えーと、都電のほうは東池袋四丁目停留所と——。ん? 停留所ではなく停留場? あーそう……」
電話をポケットに突っ込んでから、モジャコは改めて路線図を確認した。
横から、なんじゃらほーい——と、リグナが覗き込む。
「この路線で直接、行くのではないのか」
「日比谷駅で有楽町線に乗り換える。東池袋駅まで行って、そこから都電。向こうもそろそろこっちの動きを読んでくるだろうし」
モジャコはハルに視線を向ける。
「大回りだけど、ちょっとのんびりする時間があってもいいじゃん」
「なるほど」
トンネルの向こうから電車が入ってきた。
少し歩いて真ん中あたりの車両に乗り込む。
空いている席にモジャコはハルを座らせた。
ありがと——と座って、ハルはスマホを確かめた。
「やっぱり駄目だ……」
「どうした?」
モジャコは覗き込む。
スマホの画面は止まっていて何をしても反応しない。
しばらくして真っ暗になり、勝手にホーム画面に戻ってしまった。
「アプリを起動するとフリーズするの。次の〈追憶のカケラ〉の位置は、あのとき覚えてたからよかったけど……」
それを普通の地図アプリ上でプロットしたのが、先ほどのピンの位置らしい。
「ハードの問題だと思う……」
「落とした衝撃?」
「たぶん……」
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