新宿アイル

一ノ宮ガユウ

文字の大きさ
71 / 116
面影橋メモリーズ

面影橋メモリーズ(10)

しおりを挟む

「松が谷のあき神社でポジヲくんを待たせてもらいましょ」

 踊り場から左手、中目黒方面の1番線ホームへ下りていく。

「このへんにもあるのか、あき神社?」
いり駅から少し歩いたとこ。御祭神は、火産霊ほむすびのおおかみさま、みづめのかみさま、はにやまめのかみさま。明治のころは秋葉原にあって、それが秋葉原の名前になったんだよ」
「へえ、そうなんだ」

 いり駅までは上野方面へ1駅。


 中目黒寄りの改札口を抜けて階段を上っていく。
 地上に出たところが1番出口で、大きな交差点の目の前だった。

 南南西から北北東へのびる昭和通りにこととい通りが十字に交わり、さらにきよばし通りが南から斜めに合流するところだ。

 車のヘッドライトは途切れることなく、歩道を行き交う人も多い。

 ——で。

「まんまとだまされたわ!」

 横断歩道を渡ったところでコルヴェナが現れ、びばののんっ、と真っすぐ腕を伸ばし、指を突きつけた。

 モジャコは本能的に空を振り仰ぎ、すぐに1点を指した。

「あれだ……!」

 すかさず、リグナは右脚からクロイツェルを分離した。
 スナイパーライフルに変形する。
 そして、モジャコの視線の先にある1点に向かってトリガーを引いた。

 放たれた光弾が何かに当たって乾いた音が響く。

 どうやら、ボーデの1つが空から監視していたようだった。

 気づかなかった——と、リグナ。

「ふふっ、あなたのスペック、調べさせてもらったわ!」

 コルヴェナは縦巻きロールの髪を、ふぁさぁっ、と手で揺らした。

「ずばり、あなたの探査・さくてき能力のレベルは次世代型ではない旧ルドゥフレーデどころか、その前のロンバルデより劣る!」

 バリバリと大気が震え、周囲には数十の六型ボーデが散開した。

「広尾のメモリーカード、預かる」

 モジャコは視線をそのままに後ろへ手を差し出した。

「先にあき神社に向かっててくれ。乱戦になりそうだし、デッサがいないのも気になる」
「わかった」

 ハルはうなずき、白いメモリーカードを手渡した。
 代わりにジシェを頭の上から引き取って路地へ。


「そろそろ決着をつけさせてもらうわ!」

 コルヴェナは右腕と左脚に、ガーネット色の電撃をまとった半透明のガントレットとブーツを実体化させた。
 どうやら修理したようだ。

「いざ、勝負っ!」

 指を突きつけ、向かってくる。
 モジャコはその相手をしながら後退していく。

 リグナは左脚からメティス・ブレイドを分離した。
 右手のクロイツェルは自動的にハンドガンへ変形する。

 そこへ、ほぼ真上から飛来した光弾が直撃した。

「——!!」

 リグナは、防御することもできずに弾き飛ばされた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

処理中です...