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面影橋メモリーズ
面影橋メモリーズ(11)
しおりを挟む「デッサか!? どこだ!?」
モジャコは空を仰いだ——が、そこには何も無い。
「隙がありましてよ!」
すかさず、コルヴェナはモジャコの間合いに入って脚を飛ばしてくる。
ボーデの妨害も苛烈だ。
立ち上がったリグナの右肩は激しくスパークしていた。
「おかしい——」
モジャコは攻撃を躱しながら周囲の気配を探った。
(空中で静止でもしない限り、あの命中精度は無理だ。なのに真上には誰もいなかった。そもそも、ミコの解析が正しければ、ルドゥフレーデにもガルバルデにも空を飛ぶ能力はないはず)
ともかく狭い路地を選んで逃げる。
リグナは火花がはじけるのも構わず、ボーデを切り払い、撃ち落としていく。
周囲は古い商店や民家に少し背の高いマンションの入り交じった住宅地で、すぐに人通りも途切れた。
「だいじょうぶか!?」
モジャコはリグナを気遣う。
「そうでもないけど、あと23発までなら耐えられる」
「22発までどうにか堪えろ!」
「わかった」
リグナは援護に徹してボーデの相手に集中する。
そして、コルヴェナが電撃の左脚を繰り出したときには、あうんの呼吸でモジャコとの間に入って撥ね返す。
空からは深い角度で光弾が落ちてくる。
弾かれたリグナはそのたびに体から火花を散らす。
コルヴェナは笑った。
「いつまで耐えられるかしら!」
ただ、少しずつ、本当に少しずつではあるけれども、リグナが光弾の狙いから外れていっていることに、コルヴェナは気づいていなかった。
別の路地を急ぎながらハルは漆黒の空を見上げた。
(——リグナちゃんは自分のスペックに限界があることも、それがデッサに劣ることもわかっている)
リグナは半世紀前に持ち込まれたモデル、ルドゥフレーデ。
対してデッサは最新のモデル、ガルバルデ。
その間には歴然とした性能差がある。
開発された年代が半世紀も隔たっているのなら、これはどうしようもない事実だ。
だから受け容れ、どうすればよいのかを学んでいるのだ。
ハルはそう信じる。
朝顔の花のカードが素早さを、桜の花のカードが防御力を、銀杏の葉のカードは攻撃力を解放した。
そしてそのたびにリグナはスピードを加速させた。
——そう考えていたが、いまになってハルが思うのは、やはり3枚のカードは基礎となる能力を解放しただけで、あの加速はモジャコの動きを愚直に学んだ結果なのではないか、ということ。
(そうであるのなら、モジャコと共闘するときこそ、リグナちゃんのスペックは最大限に生きる)
無かったものである以上そもそも「解放」ではなく、オーラによって与えられた可能性をだんだんと、本当に少しずつ目覚めさせてきたものなのだ。
(たぶん、いまここでしか役に立たない能力だと思う。モジャコといるときに生きる力であるのなら、モジャコといないときにはまったく意味がない。でもきっと、次のことはそのときに考えればいい——)
そう信じたい。
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