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東京トラム
東京トラム(5)
しおりを挟む光線は透明な壁で跳ね返り、上からも下からも、前からも後ろからも襲いかかる。
それを——自由の利かない空中で、リグナはすべてよけ切った。
キューブが消滅する。
同時に、リグナはクロイツェルを分離し、空間の1点を撃ち抜いた。
十数階建てのマンションの屋上だ。
碧い光弾はデッサを直撃した。
デッサもひるまずリグナに向かって一直線に突っ込んでくる。
リグナは落下しながら、重心を入れ替えただけで軽く受け流した。
デッサは商店に突っ込む。
(すご……!)
モジャコは唸った。
驚異的だ。
もしいまの動きのすべてが、ミチルの動体視力と反射神経を反映したものだとしたら。
デッサはすぐに瓦礫を撥ねのけ、リグナに光弾を放った。
「くそっ!」
2人はそのまま撃ち合いながら、南千住駅のほうへ移動していく。
それを追いかけながら、ミチルは何も無いところで派手にすっ転んだ。
足がもつれたらしい。
驚異的な動体視力と反射神経——そして奇跡的な宝の持ち腐れ。
ハルとモジャコの周囲に大量のボーデが出現する。
目の前にはコルヴェナが現れた。
「お待たせしちゃったわね!」
すばびんっ、とコルヴェナは指を突きつけた。
「この都市の公安のかたは、お話のわかるかたばかりで助かるわ!」
(やっぱり職質されたんだな……)とモジャコ。
(どう説明したんだか……)とハル。
それはともかく、おかしい——と、ハルは思った。
(いままでデッサだけがこんなに先行することはなかった)
ジシェをハルに預け、モジャコもコルヴェナと乱闘を繰り広げながら、北方向へ移動していく。
コルヴェナには、デッサが放った流れ弾が何度か直撃した。
コルヴェナは相変わらずの頑丈さだが、連携できているようには思えなかった。
(デッサを制御できなくなっている……?)
まもなく、横切る貨物線の線路に道路は途絶えた。
正確にいえば車道はアンダーパスへ、歩道は跨線橋へ。
右手には貨物ヤードが扇型に広がる。
モジャコはボーデに足下をすくわれ、バランスを崩した。
「チャンス!」
コルヴェナは嬉々として向かってくる。
そこへ、やにわに閃いた七色の光が彼女を跳ね返した。
「ふんぎゃー」
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