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東京トラム
東京トラム(4)
しおりを挟むハルたちはパスモをタッチし、三ノ輪交差点方面と表示された改札口を抜けた。
通路を少し歩いてさらに階段を上る。
2番出口から地上に出たところで、ハルは地図アプリを起動した。
周辺1キロメートル四方を表示し、駅を左手に据える。
左上には都電荒川線の三ノ輪橋停留場、右上には南千住駅と広大な貨物ヤード。
日比谷線の三ノ輪駅は昭和通りの地下、大関横丁交差点と三ノ輪交差点の間にある。
北の大関横丁交差点(昭和通りはここで日光街道に名前を変える)にあるのが、松が谷の秋葉神社へ向かうときに利用した明治通り方面改札で、南の三ノ輪交差点が現在地。
そこからほぼ真東に、直線距離で800メートルほど、地図上では右の端に位置するのが泪橋交差点だ。
国際通りが合流する大きな交差点を歩道橋で渡り、脇道を抜け、ヘッドライトが行き交う明治通りを歩いていく。
まもなくたどり着いたその場所は、かつて路面電車の停留場があったという痕跡すらない、4車線の道路どうしが交わる平凡な場所だった。
反応を確認し、ハルは携帯大幣を北東の角で差し上げた。
地面からゆっくりと、きらきらと輝く立体が回転しながら昇ってくる。
「正八面体……」
正八面体とはプラトンの立体の1つで、正三角形8枚からなる正多面体のこと。
粒子状に弾けたそこには白いメモリーカードが浮かんだ。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
9つの〈追憶のカケラ〉。
【7つ目▶正八面体:白いメモリーカードの2枚目】
橋の名前を残したのは泪橋停留場、現在の泪橋交差点。
新橋から銀座を通り抜け、京橋、日本橋、浅草橋、厩橋、浅草を経由して南千住まで結ぶ22系統が南北に通っていた。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
ゆっくりと降りてきた白いメモリカードを、ハルは手のひらに受け取った。
「円環のセキュリティ解除コードの復号キー、2つ目——」
ミチルが上空を警戒しゴーグルを装着した。
リグナはすぐに高く跳び上がる。
そのリグナを、1辺が10メートル超の透明なキューブが包囲した。
キューブの中を無数の光線が駆け巡る。
上空の大気が一気に沸き立つ。
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