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新宿アイル
新宿アイル(2)
しおりを挟む「きみ、アイルになにか細工しただろう? 困るんだよね、こういうの。きみのことだ、おおかた不可抗力にかこつけて計画を失敗させるつもりだったのだろう。
まあでも、わたしは慎重な性格だから手は打っておいたわけだ。ここまでの働きには感謝するよ。あとはわたしに任せたまえ。なに、きみときみの妹に危害を加えるつもりはないよ。
もっとも、不可避の事態が起こったときのことまでは、わたしも確約しかねるがね。では二度と会うこともないだろうが、ごきげんよう」
「……」
3次元映像はふっと消えた。
ロカは再びコルヴェナへの通信を試みる。
「コルヴェナ! コルヴェナ——!!」
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
「いた……!!」
つぶやいて、ミチルは東の方向、十数階建ての白いマンションを振り仰いだ。
リグナはすぐに建物の上を跳び移っていく。
別のマンションから飛び下りる人影が見えた。
デッサだ。
同じように屋根の上を向かってくる。
距離は双方とも100メートル弱で、リグナのほうがわずかに近い。
(間に合う)
——が、デッサが腕にライフルを装着しているのを見て、リグナは考えを改めた。
マンションの屋上で、コルヴェナは荒く息をしながら、口の端から流れる血を拭った。
そのわずかな動作でさえやっとで、動くたびに全身に電気が走るような猛烈な痛みと痺れを感じていた。
(ふふ、コルヴェナ・クレンがこれくらいで参るわけないわ!)
いつもどおりに強がってみても、さすがに空元気だということは自分でもわかる。
それでもどうにか息が収まってきて、コルヴェナは左腕にはめたリング状の装置に右手を伸ばした。
そこへ、高く跳び上がったデッサが真横に現れた。
迷いなく光弾を放ってくる。
「え……」
コルヴェナは声を漏らすことしかできない。
割り込んだリグナが脚を伸ばし、ギリギリで光弾の軌道を変える。
光弾はコルヴェナをかすめて空へ。
しかし、その隙に屋上に降り立ったデッサは、ためらうことなく攻撃してきた。
コルヴェナは、紅い電撃のブーツとゴーグルを実体化させ、どうにか躱していく——が、あっという間に屋上の角に追いつめられてしまった。
デッサは真下からコルヴェナを撥ね上げ、さらに強烈なハイキックを繰り出し、それを間一髪リグナが防御する——。
が、翻って、デッサはヴィルテの格納容器を強引に奪い取った。
高く跳躍して南東方向へ投げる。
コルヴェナは柵の外へ振り飛ばされた。
「な……っ!!」
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