新宿アイル

一ノ宮ガユウ

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お花茶屋マンデーモーニング

お花茶屋マンデーモーニング(3)

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 おはなぢゃ駅——かつしか区にある京成線の駅で、ハルとモジャコが通う高校は程近い。
 月曜の朝、欠伸をころしながらハルは電車を降りた。


 狭いホームは制服姿の高校生でいっぱいだ。
 いつもと変わらない見慣れた風景——なのだが、多少いつもと違うこともある。
 それは後ろに着いてくる2人。

 ふふっ——と、コルヴェナは笑った。
「さっそくはじまるスクールライフ! ずばり、素敵ね!!」

 テンションの高さに関しては、感覚が麻痺しちゃったのでもうどうでもよく、ハルの率直な感想はただひとつ。

(疲れないなー)

 仮眠する時間もなくそのままだから、ハルはくたくたで、とにかく眠い。

「楽しみでなくて!?」

 コルヴェナは後ろのロカに人さし指を突きつけた。
 混雑のなか、いくらか遠慮がちに見えなくもないが、遠慮するくらいなら黙っていてほしい。

「そうだな」

 ロカは棒読み。

 2人ともハルと同じ制服姿だ。
 コルヴェナはハルと同学年、ロカは1つ上ということで、じじいいわく、だったら高校に通えばよい!——となったわけで。

(じじいが理事長とツーカーなのは知ってるけど)

 こんな急な編入がよくまあ許されたものだとハルは呆れた。
 正確には交換留学生とかの扱いらしい。
 しかしそれはともかく、どうやって制服まで用意したんだか。

 謎。

 デッサも一緒だが、いまごろ駅の屋根の上で待っているはず。
 いわく、ガルバルデはこんな低速な移動手段には頼らない——とのこと。
 へこたれないでネ、京成……。

 反対方向、上野からの下り電車も到着したばかりで改札口はごった返していた。
 モジャコを見つけてハルは声をかけた。

 ハルほか約2名はけいせいふなばしから上り電車。
 モジャコはしまから東京メトロの千代田線、町屋で京成線に乗り換え、下り電車でおはなぢゃ

「おはよー」
「おう、おはようさん」

 ——と、ハルのバックパックにへばりついていた何かしらが、もそもそっと動き出してジャンプした。

「にょーん」

 滑空してモジャコのモフモフ癖毛の上に着地したのはジシェだ。

「あれ! 帰ったんじゃなかったのか!?」
「パルノー殿も3日ほどこの星に残り、オーラ殿の見た風景をたどってみることになったのでござる!」

 そんなわけでジシェも残り、リグナも同様。
 モジャコはジシェを、わーい、わーい、と高い高いをして持ち上げる。

 振り返れば雑踏の向こうで、丸眼鏡が欠伸をしながら手を振っていた。

 コルヴェナがハルを追い越し、すばびよーん、と人さし指をモジャコに突きつける。

「おはようございますですわ、モヨコさん!!」
「お、おう……」

 そしてコルヴェナは改札口の扉に引っかかって、盛大にチャイムを鳴り響かせた。

「ふふっ、あたしを止めようなんて、笑止!」

 改札機にたんを切られましても。


 その横の改札機を、制服を着たリグナがごくスムーズに、いつものことのように、パスモをタッチして通り抜けた。
 そのあおい瞳は相変わらず、なんじゃらほ~い、と澄まし顔だが、ちょっとだけ得意げではあった。

(おしまい)
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