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新宿アイル
新宿アイル(12)
しおりを挟むさらにキーボードの上に指を走らせ準備を進めながら、パルノーはぽつりと言葉を零した。
「祖母は、最後まで恨み言のひとつもいっていなかったのでしょうか? 祖母はただひたすらに、使命をまっとうするために走りつづけていたのでしょうか?」
「これでもか、というくらいの恨み節じゃ!」
高嶺は、かっかっかっ、と笑った。
「なによりも、生まれたばかりの娘を抱きしめてやれんことを、ずっと悔やんでおった!」
「それを聞いて安心しました。母は、祖母の行動をなかば神聖化されることを嫌います。祖母はただの人であったと、そう思いたいのです」
「オーラ殿に遭遇したのは神楽河岸というあたりじゃ!」
ハルがもし聞いていたら信じがたいことに、「クソじじい」にも若者と呼ばれるころがあって、高嶺がオーラと遭遇したのは、夜も遅く、研究を終えて大学の校舎を出たところだったらしい。
神楽坂下、外濠を望むあたり。
「街はすっかり変わってしまったが、外濠の水辺と桜並木だけは変わらん。すべてが終わったら目に焼きつけて帰るがよかろう!」
はい——と答えて、パルノーは作業を続けた。
新宿三丁目駅の空間に入ると、ボーデが大量に押し寄せてきた。
「改六型ボーデでござる!」
ジシェが叫んだ。
さて、どうするか——と、モジャコは横を走るコルヴェナをちら見する。
(急に共闘することになったけど、ついさっきまでは敵どうしだったわけだし、ブライドも高そうだし、だいじょぶかな?)
けれども、視線に気がついたコルヴェナは、走りながら「ふふっ」とほくそ笑んだ。
ずばびよーん、とモジャコに指を突き立てる。
「宿命のライバルが共通の敵を前に協力して立ち向かう……。ずばり、美しくなくて!!」
美しいかどうかはともかく前向きなのは喜ばしいことである。
ところでジシェの話によれば、改六型ボーデは六型ボーデとは違って打撃が通用するらしい。
「ではさっそく!」
コルヴェナは、はりきってガーネットの電撃をまとった半透明のガントレットとブーツ、そしてゴーグルを実体化した。
「あ、おい……」
モジャコは呼び止める。
コルヴェナは聞いていない。
向かってきたボーデを迷わず蹴り返せば、ボーデはその場で大爆発した。
「うぎゃ」
改六型ボーデには確かに打撃は通用するが、衝撃を受けると高確率で爆発し、しかも誘発を呼ぶらしい。
「ぜんぜん平気!」
吹っ飛ばされたコルヴェナは爽やかに立ち上がった。
「うっかりはいけないわね!」
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