千年の恋 1

あまえ うる

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2.話し合い

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「リーヴァさん、話ってなんですか?」
ステラを置いて僕とリーヴァさんは、奥の部屋へ入った。
扉を閉めるとリーヴァさんは暗い表情で言う。
「人間達がここに感づき始めた。」
「!?」
僕は驚いたふりをした。
ここは深い深い森の奥。
人間達が入れば二度と抜け出すことのできない迷いの森とまで言われている。
その森が僕達ミラ族にとって、格好の隠れ場だった。
だが、
「あの争いから1000年以上たった。
 人間達の当主も何度も変わった。
文明も発達した。
なのに何故だろう、我々はまだ狙われ続けている。
人間達は飽きもせず、我々を追い続けている。」
リーヴァさんは、寂しげにつぶやく。

人間達は、どれだけ文明が発達しようと、自分たちのリーダーが変わろうと、
僕らの存在を信じ続け、僕らを追い続けた。
愚か。
そう一言で表せてしまう、そんな生き物。
もう既に僕らの存在は伝説となってきているのにどうしてなのだろう。

「文明が発達したおかげで、人間たち自身が森に入らずとも“ろぼっと”というものが我々を探しに来ることが出来るそうだ。
だが、今までここにその“ろぼっと”が来たことはない。
何故だろう。」
リーヴァさんのその言葉に僕はドキッとする。
さっき驚いたふりをしたと言ったが、僕は随分前からその事を知っている。

半年前くらいから、そのロボットとやらがこの森をうろついているのには気づいていた。
そのロボットが来る度に、僕は誰にも気づかれないようにそのロボットを壊していった。
カメラとかいうものも付いてるらしいから、それに映らないよう細心の注意をはらって。
だが、ロボットが次々に壊されているのを不可解に思ったのか、ここ一週間ほど人間たち自身がこの森まで足を運んでいた。
僕が一週間家に帰らなかったのは、これに気づいたからだ。
見晴らしの良い丘の上で1週間ずっと見張っていたのだ。

「リーヴァさん、
 村を変えましょう。」
僕は言った。
「は?どういうことだ。」
リーヴァさんは、驚いたように言う。
「リーヴァさんだって、そろそろ危ないことは気づいているでしょう。
 1000年、十分じゃないですか。
新しい場所を探しましょう。」
「だめだ。」
僕の言葉に、リーヴァさんは否定する。
「!?   どうしてですか。
 このままじゃ、僕らはまた仲間を沢山殺される。」
「だめだ。」
間髪入れず、リーヴァさんは言い切る。
「だめだ。
ここは思い出の場所。
1000年間我々の帰る場所だったのだ。
それに、逃げればまた我々は人間を恐れ 憎む。」
「まだそれを言うんですか!?
 もう分かったでしょ、人間は我々を手懐けるか、殺そうとしている。
 あなたは人間と、仲良くなりたいのかもしれないが、彼らは違う。
 住む世界が違うんです。
 生きてきた年数も。
 恨みの数も。
彼らは僕らの大切な人たちをたくさん殺してきたんですよ!?」
僕は叫ぶようにして言った。
「それは、彼らにとっても同じだろ。」
リーヴァさんの冷たい声が聞こえ、僕はハッとする。
人間達は僕達ミラ族を数え切れないほど殺してきた。
だが、僕達ミラ族も人間をたくさん殺してきた。
お互いに殺しあってきた。

「村は変えない。
 もし人間が攻めてきたら、話し合う。
 今の我々ならできるはずだ。
 話は以上、出ていいぞ。」
 リーヴァさんのその言葉に、僕は扉へ近づく。
「今にわかりますよ。
 彼らとは分かり合えない」
僕はそう言い残し部屋を出た。

「!!
 ステラ…」
扉を閉めると、そばにステラが立っていた。
いつもの明るい顔が消えている。

「聞いていたのか?」
僕は自室にステラを入れ、ステラに紅茶を差し出した。
僕の問いに、ステラは小さく頷く。
「アデル…
 お父さんのこと嫌いになった?」
ステラが不安げにつぶやいた。
「いや、嫌いにはならないよ。」
僕のその言葉にステラはほっと息を吐く。
「あの人がすごいのは知ってる。
 人間達に恨みを持っている僕らを口説いて今の穏やかな村を作ったんだから。
 1000年間ずっと1人で人間達を信じてきたんだから。」
僕は窓の外を見つめた。
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