千年の恋 1

あまえ うる

文字の大きさ
2 / 9

2.話し合い

しおりを挟む
「リーヴァさん、話ってなんですか?」
ステラを置いて僕とリーヴァさんは、奥の部屋へ入った。
扉を閉めるとリーヴァさんは暗い表情で言う。
「人間達がここに感づき始めた。」
「!?」
僕は驚いたふりをした。
ここは深い深い森の奥。
人間達が入れば二度と抜け出すことのできない迷いの森とまで言われている。
その森が僕達ミラ族にとって、格好の隠れ場だった。
だが、
「あの争いから1000年以上たった。
 人間達の当主も何度も変わった。
文明も発達した。
なのに何故だろう、我々はまだ狙われ続けている。
人間達は飽きもせず、我々を追い続けている。」
リーヴァさんは、寂しげにつぶやく。

人間達は、どれだけ文明が発達しようと、自分たちのリーダーが変わろうと、
僕らの存在を信じ続け、僕らを追い続けた。
愚か。
そう一言で表せてしまう、そんな生き物。
もう既に僕らの存在は伝説となってきているのにどうしてなのだろう。

「文明が発達したおかげで、人間たち自身が森に入らずとも“ろぼっと”というものが我々を探しに来ることが出来るそうだ。
だが、今までここにその“ろぼっと”が来たことはない。
何故だろう。」
リーヴァさんのその言葉に僕はドキッとする。
さっき驚いたふりをしたと言ったが、僕は随分前からその事を知っている。

半年前くらいから、そのロボットとやらがこの森をうろついているのには気づいていた。
そのロボットが来る度に、僕は誰にも気づかれないようにそのロボットを壊していった。
カメラとかいうものも付いてるらしいから、それに映らないよう細心の注意をはらって。
だが、ロボットが次々に壊されているのを不可解に思ったのか、ここ一週間ほど人間たち自身がこの森まで足を運んでいた。
僕が一週間家に帰らなかったのは、これに気づいたからだ。
見晴らしの良い丘の上で1週間ずっと見張っていたのだ。

「リーヴァさん、
 村を変えましょう。」
僕は言った。
「は?どういうことだ。」
リーヴァさんは、驚いたように言う。
「リーヴァさんだって、そろそろ危ないことは気づいているでしょう。
 1000年、十分じゃないですか。
新しい場所を探しましょう。」
「だめだ。」
僕の言葉に、リーヴァさんは否定する。
「!?   どうしてですか。
 このままじゃ、僕らはまた仲間を沢山殺される。」
「だめだ。」
間髪入れず、リーヴァさんは言い切る。
「だめだ。
ここは思い出の場所。
1000年間我々の帰る場所だったのだ。
それに、逃げればまた我々は人間を恐れ 憎む。」
「まだそれを言うんですか!?
 もう分かったでしょ、人間は我々を手懐けるか、殺そうとしている。
 あなたは人間と、仲良くなりたいのかもしれないが、彼らは違う。
 住む世界が違うんです。
 生きてきた年数も。
 恨みの数も。
彼らは僕らの大切な人たちをたくさん殺してきたんですよ!?」
僕は叫ぶようにして言った。
「それは、彼らにとっても同じだろ。」
リーヴァさんの冷たい声が聞こえ、僕はハッとする。
人間達は僕達ミラ族を数え切れないほど殺してきた。
だが、僕達ミラ族も人間をたくさん殺してきた。
お互いに殺しあってきた。

「村は変えない。
 もし人間が攻めてきたら、話し合う。
 今の我々ならできるはずだ。
 話は以上、出ていいぞ。」
 リーヴァさんのその言葉に、僕は扉へ近づく。
「今にわかりますよ。
 彼らとは分かり合えない」
僕はそう言い残し部屋を出た。

「!!
 ステラ…」
扉を閉めると、そばにステラが立っていた。
いつもの明るい顔が消えている。

「聞いていたのか?」
僕は自室にステラを入れ、ステラに紅茶を差し出した。
僕の問いに、ステラは小さく頷く。
「アデル…
 お父さんのこと嫌いになった?」
ステラが不安げにつぶやいた。
「いや、嫌いにはならないよ。」
僕のその言葉にステラはほっと息を吐く。
「あの人がすごいのは知ってる。
 人間達に恨みを持っている僕らを口説いて今の穏やかな村を作ったんだから。
 1000年間ずっと1人で人間達を信じてきたんだから。」
僕は窓の外を見つめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

処理中です...