千年の恋 1

あまえ うる

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3.指切り

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「お父さんね、
 目の前でお母さんを殺されてるの。」
僕の知らない出来事を、ステラは語り始める。
「お母さんは、ずっと人間と一緒に暮らしたかったんだ。
 だから、人間の村へ行っては仲良くなろうとしたの。
 けどやっぱりわかってくれる人はいなくて、ボロボロになって帰ってきたわ。
 けれどお母さんは、何度も何度も人間の村へ行ったの。
 少しでも歩み寄ろうとしたの。
 お父さんも人間に恨みを持ってたくせに、お母さんの行動を見て人間を信じようと言ったの。
 けどね、ダメだったの。」

ステラはそこまで言うと、俯いた。

「人間達がお母さんに飲み物を差し出したの。
 それを疑いもせず飲んだお母さんは、「ディアボ」が入ってることに気が付かず、苦しみながら倒れたの。
 お父さんは泣いて、その人間達をみんな殺したの。
 そしたらね、お母さんがね
 『人間達を苦しめないで』
 って言ったの。
お父さんはその日から、人間達を疑わなくなった。
本当は疑いたくて仕方がないんでしょうけど、
お父さんはあの日から、人間を疑ったり、苦しめたり、殺したりしなくなったの。」

ステラは持っていた紅茶を飲み干した。

「そうか、」
僕はそれしか言えなかった。
辛かったのだろう、リーヴァさんも。
何も出来ず見ているしかできなかった、ステラも。
 
「和解、
 出来るならしたいな。
 もう誰も、殺したくないな。」
僕は拳をにぎりしめた。

本心を言うならば、僕は仲間を自分みたいな目に遭わせたくない。
仲間を苦しめたくない。
けれど、恩人のリーヴァさんが人間と仲良くなりたいと言うのだ。
僕はそれに従おう。
彼が人間を信じると言うなら、その彼の考えを信じよう。
僕に出来るのはそれだけだ。
だから、

「もう泣くな、ステラ」
僕は泣いているステラの髪に手を伸ばした。
一瞬触れるのを躊躇したが、僕はステラの髪に触れた。
柔らかい髪をゆっくり撫でる。
「すまない、嫌なことを思い出させたな。
 リーヴァさんは、僕が守るから。
 絶対に、約束するよ。」
「ゆっ、指切りしてっ…。
 お父さんも守るしっ、アデルもっ、死なないって。」
鼻をすすりながら、ステラは自身の小指を差し出す。
「!」
僕はステラの意外な要求に驚いたが、すぐにいつもの笑顔を浮かべた。
「あぁ、指切りな。」
僕はステラの小指に自分の指を絡めた。
「破ったら、針千本だからね。」
「あぁ」
「絶対死んじゃダメだからね。」
「分かってるよ」
僕のその言葉に、ステラは安心したように笑みを浮かべた。
(もちろん、お前も絶対守るから…)
心の中でそう誓った。


「リーヴァさん、」
僕はリーヴァさんを呼び止めた。
「?なんだ、アデル。」
「僕はあなたについて行きます。
 何でも申し付けください。」
僕はそう言ってリーヴァさんの前にひざまずいた。
「ふっ、柄にもないことをするな。」
リーヴァさんはそう笑うと歩き出した。
「頼りにしている。」
リーヴァさんのその言葉に思わず僕は微笑んだ。
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