千年の恋 1

あまえ うる

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5.決断

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「リーヴァさん!! リーヴァさん!!」
僕は勢いよく丘を駆け下り、村へ向かった。

「リーヴァさん!!」
大きな音を立て僕は扉を開ける。
「なんだ?」
机に向かってなにか書物を読みふけっていたリーヴァさんが、不思議そうな顔をして僕を見つめる。
「に、人間が軍を率いてここまで来た…。」
「!?」
僕の言葉にリーヴァさんの顔は青ざめていく。
「ついに、か…」
リーヴァさんは立ち上がると、服を着替え始める。
「どこへ?
 戦うなら防具を…」
「いや、話し合いに行くだけさ。」
心配そうにリーヴァさんを見つめる僕を、リーヴァさんはいつもの笑顔で見つめ返した。
「ーっー」
まだそんなことを考えているのですか、
と叫びたいところを我慢し、僕はその場にひざまずいた。
「命令を、」
僕は静かにそう呟く。
羽織をはおるとリーヴァさんは僕を見つめた。
(リーヴァさん、僕は決めたのです。
  どんなことがあろうと、あなたについて行くと。)
部屋が静まりかえる。
「……アデル……」
「!」
リーヴァさんが静かに僕の名前を呼ぶ。
「お前に頼みがある。」
「な、なんなりと」
僕の体がかたくなる。
「ステラを頼む。」
予想外の言葉に僕は顔を上げた。
「私の、娘を頼む。」
「そ、それは―」
「任せたぞ。」
僕が言い返す暇を与えず、有無を言わさない表情で僕を見つめる。
この顔は、族長としての顔ではなかった。
娘を想う1人の父の顔だった。
「はっ、」
僕は頭を下げた。
「お任せ下さい。
 この命にかえても、ステラを―」
「命にはかえるな。」
僕の言葉を遮り、リーヴァさんは真剣な声で言う。
「私は、お前とステラが生きていればいい。
 お前たちならきっと、人間と仲良くなれる。」
「リーヴァさん! やはりっ」
「アデル!!」
リーヴァさんの大きな声に僕の体ははねた。
僕は怒られると思い身構えた。
「…ありがとう。」
「え?」
リーヴァさんが今までにない優しい顔で囁いた。
僕の声に答えることなくリーヴァさんは扉を開いた。
「みなのもの!!
 広場に集まれ!!!
 最後のあがきだ!!」
リーヴァさんの声はこの建物中 いや、村中に響いた。

リーヴァさんの声に起こされた村人は、続々とでてきた。
状況が掴めていないものはいないようだ。
100余名、女子供問わず全員が覚悟を決めて出てきていた。
「全員よく聞け!!」
リーヴァさんの声がビリビリと空気をゆらす。
「我々は最後まであがく!!
 人間との共存の道を模索する!
 今日とてそれは変わりない!
 死ぬ覚悟がないものはここから立ち去れ!
私に最後までつくものは、武器は持たずここで人間を待て!」
リーヴァさんがそこまで言うと、村人が顔を見あわせ始めた。
そして、全員クスクス笑い始める。
「逃げる者がいるとお思いですか?」
一人の男が言った。
「我々は、あなたに何年人間について語られたと思ってるんですか。」
次は女が声を上げる。
「「死ぬまであなたについて行きますよ!」」
全員が声を上げて言った。
「ありがとう、みんな。」
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