【完結】自分のことを覚えていなかった幼馴染をそれでも一途に愛し続ける

ゴールデンフィッシュメダル

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「・・・どういうことですか?」

「僕が知ってるのはサンダース・オースティンが何者か?ということさ。どこの馬の骨ともわからない男を大切な長男の家庭教師にすると思うかね?」

「まさか!ずっとご存知だったんですか?」

「あぁ、きっと君よりずっとね。そして、君がシープシャーの屋敷から出て行った時のあの手紙は僕が持っている」

「どういうことですか?」

「元々は妻が持っていたんだよ。はじめに見つけたのはメイドだった。妻はね、サミュエルにバレたくなかったんだよ。君にサミュエルと別れるよう忠告したことを。だから手紙を取り上げた。浅はかなことだよ。でもそのおかげで僕はある情報を手に入れた。そう、あの手紙では重大な告白がされている。妻はその重要性には気付いていないがね。君は戸籍上のお兄さんの子供だろう?君との年齢差はたった14歳。これだけでも十分スキャンダラスだ。それにサマンサは彼の愛しい人の名前だろう?きっと君の母親の名前だろうね。僕はこの事実が何を示すかわからないほど馬鹿ではないからね。セバスティアーノ=ストウ家にとったらとんだ醜聞だろうねぇ」

「脅そうっていうんですか?」

「サミュエルは君の重要性に気付いていないんだ。このままでは君を手放すだろう?でもそれではハロー商会の売り上げはどうなる?舞踏会で君が着た服や身につけた宝石がよく売れるという報告は受けているよ。君はそれを利用してある程度の流行操作まで行なっている。君はね、もうただ単にハロー商会の奥方というだけではなく、ハロー商会の顔になっているんだよ。その影響力はサミュエルよりも大きいくらいだ。それにサミュエルの君への仕打ちが世の中にバレると印象が悪くなる。今、君にハロー商会を去られると困るんだ」

最後は脅すというより本当に困っているという風だった。

「私はずっとサミュエル様のことをおしたいしてきました。あのシープシャーで過ごした幼い頃からずっと。はじめの結婚の時にも彼を忘れられなかったくらい。でも前の旦那のジェレミーがそれでも良いからと言ってくれて、それで結婚したんです。それがいろいろとあって幸運にも彼と結婚できて、この2年半とても幸せでした。だからこそ、他の誰かを思っている彼の隣にいるのが辛いんです」

「サミュエルが思っているのは君じゃないか。あの女が君の身代わりだってことは誰の目からも明らかだ」

「いえ、サミュエル様が好きなのはサマンサだった頃の私です。私はもう金髪でもなければそばかすの肌でもなくなってしまいました。それにきっと貴族の娘として過ごしているうちに自分では気付かない中身も変わってしまったことでしょう」

スーザンはじっと大旦那様をみた。

「それに、サミュエル様も変わってしまわれましたわ。わたくし、ここに来てずっと考えていましたの。私はシープシャーで過ごした幼い頃のサミュエル様に囚われ過ぎているのではないかと。16歳のデビュタントで再開してからの彼を本当に好きだろうかと。一方的な思い込みだけで私を避け続けてまともな会話もしたことのない男性を本当に好きなのかしらと」

「君たちの結婚はそんなものだったのかい?」

「ええ、はじめに言われましたわ。これは白い結婚なんだ、サミュエル様に他に好きな方が出来たらそのときはおとなしく離縁しろと」

「なんと・・・」

「それでも愚かだったわたしはサミュエル様のことをまだ好きでしたし、結婚して過ごしているうちにわたしのことを好きになる、とまではいかなくとも、それなりの関係は築けるのではないかと考えていたのです。だからいつかサミュエル様が気付いてくれるのではないかと家のことも社交もミスターゲーブルから持ち込まれる相談事もいつも精一杯やっていましたわ。でも、サミュエル様には一切届いていなかったようです。そして今回の仕打ちでしょう?私はもうサミュエル様から解放されたいのです」

「その事実をもっと早くに僕に知らせてくれていれば違ったものを・・・なぜ自分がサマンサだと告白しなかった?」

「私は16歳でサミュエル様に再開しました。名乗ろうとしたのですが会話の流れでうまく告白できなくて、その場にはジェレミーもいましたし、当時の私は既にジェレミーと婚約していました。それに一言二言交わしただけで嫌われてしまいました。ほんの短い間話しただけで特に理由もわからず嫌われたんです。ですから、過去のことに気付いていてその上で私のことを嫌いなんだとずっと思っていたんです。私がシープシャーから旅立った時に彼と仲違いしていたのはご存知でしょう?」

「そうか・・・」

そう言うと大旦那様はソファの背もたれにもたれ掛かり天を見上げた。

「君の気持ちはよく分かった。でも、今、君に去られると本当に我が商会は立ち行かなくなる。このキースの開発が大赤字なのは君も知っているだろう?それでもなんとかやって行けているのは他の部門の売り上げが順調だからだ。君がいなくなるとどうなるかな?少なくとも婦人服や宝石部門の売り上げはガタ落ちだろうね。君がこれまでにアドバイスしていた部分がなくなると赤字に転落する部門も出てくるだろう。そうすると、我が家だけではなく従業員や仕入れ先の人達も困ったことになる。そうなればセバスティアーノ=ストウ家も困ったことになるんじゃないかな?」

「やはり脅そうというのですね」

「そういう訳じゃないさ。でもちょっと考えて欲しい」

「私は既にサミュエル様に離縁したいと申し入れました。そしてサミュエル様は考えさせて欲しいと仰った。大旦那様が先にこちらにいらしたということは、サミュエル様の決断が大旦那様にとって都合が悪いものになりそうだとお感じになったからでは?もしサミュエル様も私と離れることを望んだ時、考え直してくれ、やっぱりやり直したいなどと言えると思いますか?」

「それでも言ってもらわなくては困るのだよ」

「本当にひどい親子ですこと。サミュエル様が私のこれまでの頑張りを認めてくださり私を望んでくださるなら考えます」

スーザンのこころはもうこれ以上ないくらいズタズタだった。感極まってポロリと涙が流れた。

一度流れた涙は次々に溢れ出しスーザンには止めることが出来なかった。

「スーザン、君は素晴らしい女性だよ。サミュエルが変な色眼鏡をつけずにそのままの眼で君を見たらきっと惚れなおすと断言できる。僕がなんとかしてみよう」

そう言って大旦那様はリビングから出て行った。

残されたスーザンは涙が枯れるまでその場で泣きはらした。

大旦那様はそのまま別荘を後にしたらしい。感謝祭をシープシャーで過ごすためにとんぼ返りしたのだろう。


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