【完結】旦那様は女性でした?

ゴールデンフィッシュメダル

文字の大きさ
4 / 15

憧憬

しおりを挟む
「それで、どうなさるのですか?」

カレンがぷりぷりと怒りながらお茶を入れてくれる。ジェニファーから話を聞いてカレンは怒り心頭だった。

一方ジェニファーは話を聞いてすぐは少しショックを受けたが、そこまで怒る気にはならなかった。

「実家にお戻りになってもいいと思いますけどね。」

カレンはそう言いながら、砂糖とミルクをテーブルに置いた。

「戻ってどうするの?旦那様に相手にされませんでしたって泣きつくの?そんなの嫌よ。」

今、実家に戻って離縁をしてどうなる?ジェニファーには瑕疵が付き、アーロンはエマニュエル王女とまた対峙しなくてはならなくなる。
ミッドラッツェル家にもショウ家にも少なからずダメージがあるだろう。
四方に悪影響が残るだけである。ジェニファーはこの中から少しでも利を得なければ気が済まなかった。

アーロンが何でもすると言っているのだからその言葉を盾にジェニファーの思うようにすればいいのだ。

「旦那様と話をするわ。」

ジェニファーは考えた。

一番は旦那様が女性の魅力に気付きジェニファーと正式な夫婦となってくれることだ。まずはそのための努力をしようと。

そうしてその日の晩、ジェニファーはアーロンの寝室に突撃した。

「なっ、こっ、こんな遅くにっ、どうしたの?」

アーロンはわかりやすく狼狽えた。
ジェニファーは少しばかり扇情的な服を着ていたが、アーロンは青ざめるばかりで全く興奮している様子はなかった。

「あの、一度、試してみてはどうかと。」

「たたたたたためすってなななななにを?」

「男性は好む好まないに関わらず、体が反応してしまうことがあると聞きいたことがございますわ。私もあまり知識はございませんが、何か方法があるのではないかと思いまして。アーロン様の殿方を好きと言う気持ちはもちろん尊重いたしますが、貴族として子を生さねばならぬのも真実。」

そう言いながらジェニファーはアーロンに近付き、抱きついた。

いつもきっちり着込んでいるアーロンも流石にこの時間帯だとゆるりとした服を着ていて・・・

(思ったより細いのですわね)

ジェニファーはそんな感想を持った。

「何か反応なさいまして?」

「いや、たぶん何も・・・」

「そう。まぁ、そんなに簡単にはいきませんわよね。ところで、アーロン様は反応するとどうなるかご存知でいらっしゃいます?」

ジェニファーがそう言うとアーロンは少し震え出した。もしかしてこれが反応とやらでは?と思っているとアーロンがぷっと吹き出した。

「あはは。ジェニファーは男が反応するってどう言う事か知らずに何かを試そうとしていたの?くくくっ。君って面白いね」

アーロンがひとしきり笑った後、ジェニファーに向き合った。

「君に秘密を教えてあげる。誰にも言ってはいけないよ。私が男性を好きで女性と子をなせないのは、私が女性だからなんだ。」

そう言ってアーロンはジェニファーの手を取りアーロンの胸を触らせた。そこには確かに女性特有のまるみをおびた胸があった。しかも、ジェニファーより柔らかくて大きい気がする。

「普段はサラシを巻いて抑えてるんだ。だから、男性の胸のように硬いんだけど、今は何もつけてないから、ほら、女性だろう?」

「えっ?えっ?」

ジェニファーは理解が追いつかず何も言葉が出てこなかった。

「本当はジェニファーが信頼に値する人物か見極めてから告げるつもりだったんだけど、さっきの態度を見て多分大丈夫だと思ったから。」

「ちょっと待ってください。まだ、心が追いついていないです。」

混乱するジェニファーにアーロンは何度も同じ話をしてくれた。双子の入れ替わりのこと、アーロンがバネッサとして亡くなったこと、バネッサがアーロンとして過ごしてきたこと、この事実を知っているのは屋敷でもほんの一部の人だけだと言うこと。
話を聞くうちに徐々にジェニファーもアーロンが女性だという事実を受け入れ始めた。

そうして改めてアーロンを見ると女性にしか見えないから不思議なものである。

「アーロンが生きていてジェニファーがアーロンと結婚していれば私たち姉妹になれたのにね。そうしたら仲のいい姉妹になれたかな。」

そう言ってアーロン、いやバネッサが笑った。

アーロンが生きていたらアーロンはエマニュエル王女と結婚していただろうからそんなもしもの世界はないような気がするが、バネッサは少し夢みがちなところがあるらしい。

「私たちは夫婦だけど夜は姉妹のように過ごしましょう。

ジェニファーがそう言うとバネッサは顔をキラキラとさせて何度も頷いた。
そしてくしゃりと笑うと涙を流した。

「別にアーロンとして過ごすのが嫌って訳じゃないんだ。しかたないことだし。元々、私はアーロンよりもお転婆だったからアーロンとしてこの歳まで剣を握れたり、好きな事が出来てるところはあるんだ。でも、どうしても無性に自分は女の子なのにどうしてって、苦しくなる時があって。」

バネッサは涙を何度も拭ったが後から後から涙は流れてくる。

「お姉様って言われるだけでこんなに嬉しいなんて思わなかった。」

そう言ったバネッサの背中はとても小さく見えた。

6年間男性として生きてこなくてはならなかった彼女の苦労を思うと結婚をして二週間ぽっち放置されたことなんて瑣末なことだとジェニファーは思った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

グランディア様、読まないでくださいっ!〜仮死状態となった令嬢、婚約者の王子にすぐ隣で声に出して日記を読まれる〜

恋愛
第三王子、グランディアの婚約者であるティナ。 婚約式が終わってから、殿下との溝は深まるばかり。 そんな時、突然聖女が宮殿に住み始める。 不安になったティナは王妃様に相談するも、「私に任せなさい」とだけ言われなぜかお茶をすすめられる。 お茶を飲んだその日の夜、意識が戻ると仮死状態!? 死んだと思われたティナの日記を、横で読み始めたグランディア。 しかもわざわざ声に出して。 恥ずかしさのあまり、本当に死にそうなティナ。 けれど、グランディアの気持ちが少しずつ分かり……? ※この小説は他サイトでも公開しております。

戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました

Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。 「彼から恋文をもらっていますの」。 二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに? 真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。 そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

信じてくれてありがとうと感謝されたが、ただ信じていたわけではない

しがついつか
恋愛
「これからしばらくの間、私はあなたに不誠実な行いをせねばなりません」 茶会で婚約者にそう言われた翌月、とある女性が見目麗しい男性を数名を侍らしているという噂話を耳にした 。 男性達の中には、婚約者もいるのだとか…。

【完結】嘘も恋も、甘くて苦い毒だった

綾取
恋愛
伯爵令嬢エリシアは、幼いころに出会った優しい王子様との再会を夢見て、名門学園へと入学する。 しかし待ち受けていたのは、冷たくなった彼──レオンハルトと、策略を巡らせる令嬢メリッサ。 周囲に広がる噂、揺れる友情、すれ違う想い。 エリシアは、信じていた人たちから少しずつ距離を置かれていく。 ただ一人、彼女を信じて寄り添ったのは、親友リリィ。 貴族の学園は、恋と野心が交錯する舞台。 甘い言葉の裏に、罠と裏切りが潜んでいた。 奪われたのは心か、未来か、それとも──名前のない毒。

ひまわりを君に。

水瀬瑠奈
恋愛
ずっと好きだった君が見ていたのは、私じゃなくて親友だった。

処理中です...