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19. ドレスの色
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セドリックと話をしてからしばらく経った。
セドリックはイレーナを褒めることにしたらしくイレーナは少しずつ貴族令嬢として自信を持ち堂々とした態度を取れるようになってきた。
先日参加した園遊会からラッシースカヤの王太子妃がお忍びで訪問しているらしいという話が広まったらしくカテリーナ宛に社交の招待状がたくさん届くようになった。
ほとんどは無視して問題ないものだったが、秋の終わりに王が主催する舞踏会は断ることができない。
着の身着のままでやってきたカテリーナはドレスがないため新しくドレスを作ることになった。
空は憂鬱な鉛色でまるでカテリーナの心を反映したようだった。
沢山の布見本を見ていると深緑のベルベット生地が目に留まった。アレクサンドルが深い緑が好きだと言っていたのを思い出してその布を手に取った。
ふわふわのベルベットがとても手触り良かった。
「まぁ、お目が高い!こちらの生地は地味に見えますけれど、ドレスにすると光沢が出てとても素敵になりますわ」
ドレス商のそんな言葉を聞き、ついその生地でドレスを作ることにしてしまった。
別にアレクサンドルのためにこの生地を選ぶわけじゃないんだから。
といちいち自分に言い訳をする。
するとバルバラが「まぁ、素敵な生地ね。カテリーナの目の色とお揃いね」と言った。
その瞬間、カテリーナの顔が真っ赤になった。
きっと偶然よ。彼の好きな色が私の目の色とたまたま同じなのよ。私の目の色だから好きだというわけではないわ。
とまた自分に言い訳をした。
ドレス商が帰る時に門が騒がしいことに気付いた。
何やら揉めているらしい。バルバラがどうしたのかしら、と言いながら守衛のところまで行く。
バルバラはしばらく話し込んだ後、カテリーナを呼んだ。
カテリーナが門まで行くと懐かしい顔がそこに居た。
「エラ?」
ずっと侍女をしてくれていたエラだった。
長旅をしてきたからかいつも、きちんと髪を固めているエラの髪が少し乱れている。
頬も心なしか痩けているように見えた。
「カテリーナ様、も、申し訳ございませんでした。」
そう言いながらエラは頭を下げる。
「私、知っていたのに・・・アレクサンドル殿下に口止めされていて・・・」
カテリーナはラッシースカヤを出る時エラに「知っていたのにどうして教えてくれなかったの?」と手紙に書いて出てきた。
その言い訳を懸命にしているのだろう。
カテリーナにとってみたら驚くほどどうでもいいことになっていた。
「まぁ、あなた今ポランスキに着いたの?ひどい格好だわ。中に入って落ち着きましょう」
「カテリーナ様!お許しいただけるのですか?」
そう言ってエラは大袈裟に涙を流した。
いつも冷静沈着なエラがこのように取り乱すなど珍しい。
エラを応接間に通し落ち着かせるために酒を一杯出した。
「本当に申し訳なく思っております」
エラはそう言ったがカテリーナはもう気にしていなかった。
「もう気にしていないから大丈夫よ。あの時は少し頭に血がのぼっちゃっただけ。冷静に考えるとあなた達にも言えない理由があったのだろうと気がついたの。悪いのはアレクサンドル殿下だわ。それに、私もあんなに頻繁に逢えているのに何も言われない時点で怪しいと疑わなくちゃいけなかったわ。」
「いえ、それでも私の主はカテリーナ様です。きちんとお伝えするべきだったと反省しております。」
「では次このようなことがあったら私の味方になってね」
「それは!もちろん。侍女を続けさせていただけるのですか?」
「えぇ、私の筆頭侍女はずっとあなただわ。」
「ありがとうございます。早速・・・」
エラはそう言って立ちあがろうとしたのであわてて諌めゆっくり座っておいてもらうことにした。
「ところで、どうして私がこちらにいるとわかったのかしら?」
カテリーナが聞くとやはり先日の園遊会での一件から伝わったらしい。
「たまたまあの場にラッシースカヤの外交官の奥様が居らっしゃったのです。」
カテリーナはジトと隣に座るバルバラを睨んだ。
全てはバルバラに仕組まれていたようだ。
「だってあなた、王太子妃なのよ。いつまでもこのままで過ごすわけにはいかないでしょうよ」
バルバラはすました顔でそんなことを話す。
園遊会への参加はイレーナを見守るためだと思っていたがそれだけではなかったようだ。
カテリーナは不安になった。つまり、ラッシースカヤの外交官が居たということは彼にもカテリーナがここにいることが伝わっていると言うことなのでは・・・
「エラ、ねぇ。」
カテリーナがそう言うとエラはそれだけでカテリーナが何を言いたいか察したらしい。
流石はできる侍女である。
エラは一度頷くと「ええ、当然ご存知です。」と言った。
「私がお会いできたら手紙を書くことになっておりましたがいかがいたしましょうか?ただ、手紙を書かないと間違いなく一ヶ月以内には乗り込んでくるでしょうね」
エラにそう言われ、カテリーナの心に広がったのは不覚にも喜びだった。
顔にも喜びが出てしまった気がする。
それを止めるため少し顔をキリッとさせた。
バルバラが「何をもめていたのか知りませんけれど、あなたは王太子妃なのよ。醜聞になる前になんとかなさいな。」とあきれた声で言った。
セドリックはイレーナを褒めることにしたらしくイレーナは少しずつ貴族令嬢として自信を持ち堂々とした態度を取れるようになってきた。
先日参加した園遊会からラッシースカヤの王太子妃がお忍びで訪問しているらしいという話が広まったらしくカテリーナ宛に社交の招待状がたくさん届くようになった。
ほとんどは無視して問題ないものだったが、秋の終わりに王が主催する舞踏会は断ることができない。
着の身着のままでやってきたカテリーナはドレスがないため新しくドレスを作ることになった。
空は憂鬱な鉛色でまるでカテリーナの心を反映したようだった。
沢山の布見本を見ていると深緑のベルベット生地が目に留まった。アレクサンドルが深い緑が好きだと言っていたのを思い出してその布を手に取った。
ふわふわのベルベットがとても手触り良かった。
「まぁ、お目が高い!こちらの生地は地味に見えますけれど、ドレスにすると光沢が出てとても素敵になりますわ」
ドレス商のそんな言葉を聞き、ついその生地でドレスを作ることにしてしまった。
別にアレクサンドルのためにこの生地を選ぶわけじゃないんだから。
といちいち自分に言い訳をする。
するとバルバラが「まぁ、素敵な生地ね。カテリーナの目の色とお揃いね」と言った。
その瞬間、カテリーナの顔が真っ赤になった。
きっと偶然よ。彼の好きな色が私の目の色とたまたま同じなのよ。私の目の色だから好きだというわけではないわ。
とまた自分に言い訳をした。
ドレス商が帰る時に門が騒がしいことに気付いた。
何やら揉めているらしい。バルバラがどうしたのかしら、と言いながら守衛のところまで行く。
バルバラはしばらく話し込んだ後、カテリーナを呼んだ。
カテリーナが門まで行くと懐かしい顔がそこに居た。
「エラ?」
ずっと侍女をしてくれていたエラだった。
長旅をしてきたからかいつも、きちんと髪を固めているエラの髪が少し乱れている。
頬も心なしか痩けているように見えた。
「カテリーナ様、も、申し訳ございませんでした。」
そう言いながらエラは頭を下げる。
「私、知っていたのに・・・アレクサンドル殿下に口止めされていて・・・」
カテリーナはラッシースカヤを出る時エラに「知っていたのにどうして教えてくれなかったの?」と手紙に書いて出てきた。
その言い訳を懸命にしているのだろう。
カテリーナにとってみたら驚くほどどうでもいいことになっていた。
「まぁ、あなた今ポランスキに着いたの?ひどい格好だわ。中に入って落ち着きましょう」
「カテリーナ様!お許しいただけるのですか?」
そう言ってエラは大袈裟に涙を流した。
いつも冷静沈着なエラがこのように取り乱すなど珍しい。
エラを応接間に通し落ち着かせるために酒を一杯出した。
「本当に申し訳なく思っております」
エラはそう言ったがカテリーナはもう気にしていなかった。
「もう気にしていないから大丈夫よ。あの時は少し頭に血がのぼっちゃっただけ。冷静に考えるとあなた達にも言えない理由があったのだろうと気がついたの。悪いのはアレクサンドル殿下だわ。それに、私もあんなに頻繁に逢えているのに何も言われない時点で怪しいと疑わなくちゃいけなかったわ。」
「いえ、それでも私の主はカテリーナ様です。きちんとお伝えするべきだったと反省しております。」
「では次このようなことがあったら私の味方になってね」
「それは!もちろん。侍女を続けさせていただけるのですか?」
「えぇ、私の筆頭侍女はずっとあなただわ。」
「ありがとうございます。早速・・・」
エラはそう言って立ちあがろうとしたのであわてて諌めゆっくり座っておいてもらうことにした。
「ところで、どうして私がこちらにいるとわかったのかしら?」
カテリーナが聞くとやはり先日の園遊会での一件から伝わったらしい。
「たまたまあの場にラッシースカヤの外交官の奥様が居らっしゃったのです。」
カテリーナはジトと隣に座るバルバラを睨んだ。
全てはバルバラに仕組まれていたようだ。
「だってあなた、王太子妃なのよ。いつまでもこのままで過ごすわけにはいかないでしょうよ」
バルバラはすました顔でそんなことを話す。
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カテリーナは不安になった。つまり、ラッシースカヤの外交官が居たということは彼にもカテリーナがここにいることが伝わっていると言うことなのでは・・・
「エラ、ねぇ。」
カテリーナがそう言うとエラはそれだけでカテリーナが何を言いたいか察したらしい。
流石はできる侍女である。
エラは一度頷くと「ええ、当然ご存知です。」と言った。
「私がお会いできたら手紙を書くことになっておりましたがいかがいたしましょうか?ただ、手紙を書かないと間違いなく一ヶ月以内には乗り込んでくるでしょうね」
エラにそう言われ、カテリーナの心に広がったのは不覚にも喜びだった。
顔にも喜びが出てしまった気がする。
それを止めるため少し顔をキリッとさせた。
バルバラが「何をもめていたのか知りませんけれど、あなたは王太子妃なのよ。醜聞になる前になんとかなさいな。」とあきれた声で言った。
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