お望み通り、別れて差し上げます!

珊瑚

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「あぁ。勿論、妊娠中に胎の子も省ずに遊び歩いているとんでもない女である可能性は捨てきれない。だが、その子供は彼女にとって、自分がブレイズ伯爵家の一員となるための大切な子だろう。そのようにリスクを高めるような行動を軽はずみに行うだろうか?」

ヘリオスの口調は、ある種の確信めいた何かを持っているように変化していた。

「もし、ブレイズ伯爵会令息を手に入れるための狂言だとしたら?彼生の生家・セライナ子爵家は確かに由緒正しき古い家柄だ。しかし、とても裕福という訳ではない。勿論、家計が火の車というような状況でもないが………………。」
「つまり…………ヘリオス殿は、あの子爵令嬢が伯爵家の資産目当てで妊娠した、などと嘘をついて妹の婚約をぶち壊した、と思っていると……?……だが、それにしたって不確定要素が多過ぎる。ブレイズ伯爵子息とでそこまでの馬鹿ではない。彼に妊娠をどうやって信じさせた?流石の彼とて『あなたの子供を妊娠したの♡』などと言われた程度で信じるとはとても思えない。何か物的証拠を見せないと、惚れた弱みに付け込んだとで無理がある…………。それに、この嘘はどれ程長くもったとて数ヶ月だ。産まれて来る気配が無ければ、やがてその嘘は露見してしまう。」

よほどの混乱振りなのだろう。次から次から疑問があふれ出して止まらない。
しかしこれは、裏を返せばファルコからヘリオスへの信頼の証だった。荒唐無稽に聞こえるヘリオスの仮説も、彼が言うのならそれに値するだけの確証を得ているのだろう。ヘリオスは無責任な発信は絶対にしないのだ、という信頼の元の言動だったのだ。

「ふむ……。では順番に答えていこう。留意していて欲しいのは、これらは全て私の憶測であるということだ。状況から考えただけであり、証拠はこれから集めていく予定であることを念頭に置いておいてほしい。」

ヘリオスはそう前置きするとさらりと告げた。

「診断書でも見せたんだろう。」
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