24 / 62
24
しおりを挟む
24
「は…………?」
絶句。
ファルコの様子は、その一言に尽きるだろう。
「診断書………………?だ、だが、セライナ子爵令糖は、妊娠などしていないのでは?」
混乱ここに極まれり。可哀想な程に困惑している。
「まあ待て。ここで私が先程遭遇した状況を考えてみてほしい。例えば、妊娠した、という診断書、それから経過の診断書を偽造させていたとしたら?」
「それで闇医者ということか…………!」
「勿論、これも証拠は無い故、問い詰める方法を考えねばならないがな。それから、長くは騙せないという件についてだが……。それについてはそれこそ折を見て流産したとでも言っておけば解決するだろう。傷心中だとでも言って子爵家に引きこもってしまえば疑われるリスクも減らせる。本来ならば心身共にダメージを負っているだろう令嬢の元に無理に押しかけるような人間もそうそう居ない筈なのでな。そうしてその後に嘘を本当にしてしまえば何も問題はない。そう考えているのだろう。」
「そっ、それではブレイズ伯爵子息もだまされていた被害者ということになるのか…………?」
フェリアの預り知らぬところであったが、カミーユ公爵家の面々は、ブレイズ伯爵家このまま見逃すつもりは無かった。違約金の支払い期日を延長したのは、ブレイズ伯爵家へのせめてもの情けなどでは毛頭なく、ただ単に逃げ出さないようにほんの少しだけ支払えるかもしれない可能性を見せてやっただけである。
さらに、ブレイズ伯爵家が金の工面に集中している間に、確実に伯爵家を叩きつぶせる材料を探すことにしたのだ。単純に契約書に記されていた文言で違約金を増加させて支払いをとどこおらせるのが一番手っ取り早いという結論に至ったのだ。だが、ブレイズ伯爵家側もだまされていたとなれば話は変わってくる。確かに契約違反はしているが、『嘘の理由で』一方的に婚約破棄をしたという事実が、見方によっては変わってしまうのである。これでは従来通り、規定の違約金を払えば済んでしまう。それで許されるなどあまりに生温い。これはもはや、ファルコの私怨も少し入っていた。
「は…………?」
絶句。
ファルコの様子は、その一言に尽きるだろう。
「診断書………………?だ、だが、セライナ子爵令糖は、妊娠などしていないのでは?」
混乱ここに極まれり。可哀想な程に困惑している。
「まあ待て。ここで私が先程遭遇した状況を考えてみてほしい。例えば、妊娠した、という診断書、それから経過の診断書を偽造させていたとしたら?」
「それで闇医者ということか…………!」
「勿論、これも証拠は無い故、問い詰める方法を考えねばならないがな。それから、長くは騙せないという件についてだが……。それについてはそれこそ折を見て流産したとでも言っておけば解決するだろう。傷心中だとでも言って子爵家に引きこもってしまえば疑われるリスクも減らせる。本来ならば心身共にダメージを負っているだろう令嬢の元に無理に押しかけるような人間もそうそう居ない筈なのでな。そうしてその後に嘘を本当にしてしまえば何も問題はない。そう考えているのだろう。」
「そっ、それではブレイズ伯爵子息もだまされていた被害者ということになるのか…………?」
フェリアの預り知らぬところであったが、カミーユ公爵家の面々は、ブレイズ伯爵家このまま見逃すつもりは無かった。違約金の支払い期日を延長したのは、ブレイズ伯爵家へのせめてもの情けなどでは毛頭なく、ただ単に逃げ出さないようにほんの少しだけ支払えるかもしれない可能性を見せてやっただけである。
さらに、ブレイズ伯爵家が金の工面に集中している間に、確実に伯爵家を叩きつぶせる材料を探すことにしたのだ。単純に契約書に記されていた文言で違約金を増加させて支払いをとどこおらせるのが一番手っ取り早いという結論に至ったのだ。だが、ブレイズ伯爵家側もだまされていたとなれば話は変わってくる。確かに契約違反はしているが、『嘘の理由で』一方的に婚約破棄をしたという事実が、見方によっては変わってしまうのである。これでは従来通り、規定の違約金を払えば済んでしまう。それで許されるなどあまりに生温い。これはもはや、ファルコの私怨も少し入っていた。
1,131
あなたにおすすめの小説
本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~
なか
恋愛
私は本日、貴方と離婚します。
愛するのは、終わりだ。
◇◇◇
アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。
初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。
しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。
それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。
この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。
レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。
全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。
彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……
この物語は、彼女の決意から三年が経ち。
離婚する日から始まっていく
戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。
◇◇◇
設定は甘めです。
読んでくださると嬉しいです。
【完結】幼馴染と恋人は別だと言われました
迦陵 れん
恋愛
「幼馴染みは良いぞ。あんなに便利で使いやすいものはない」
大好きだった幼馴染の彼が、友人にそう言っているのを聞いてしまった。
毎日一緒に通学して、お弁当も欠かさず作ってあげていたのに。
幼馴染と恋人は別なのだとも言っていた。
そして、ある日突然、私は全てを奪われた。
幼馴染としての役割まで奪われたら、私はどうしたらいいの?
サクッと終わる短編を目指しました。
内容的に薄い部分があるかもしれませんが、短く纏めることを重視したので、物足りなかったらすみませんm(_ _)m
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
【完結】愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
第18回恋愛小説大賞で、『奨励賞』をいただきましたっ!
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
追放した私が求婚されたことを知り、急に焦り始めた元旦那様のお話
睡蓮
恋愛
クアン侯爵とレイナは婚約関係にあったが、公爵は自身の妹であるソフィアの事ばかりを気にかけ、レイナの事を放置していた。ある日の事、しきりにソフィアとレイナの事を比べる侯爵はレイナに対し「婚約破棄」を告げてしまう。これから先、誰もお前の事など愛する者はいないと断言する侯爵だったものの、その後レイナがある人物と再婚を果たしたという知らせを耳にする。その相手の名を聞いて、侯爵はその心の中を大いに焦られるのであった…。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる