お望み通り、別れて差し上げます!

珊瑚

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「は…………?」

絶句。
ファルコの様子は、その一言に尽きるだろう。

「診断書………………?だ、だが、セライナ子爵令糖は、妊娠などしていないのでは?」

混乱ここに極まれり。可哀想な程に困惑している。
「まあ待て。ここで私が先程遭遇した状況を考えてみてほしい。例えば、妊娠した、という診断書、それから経過の診断書を偽造させていたとしたら?」
「それで闇医者ということか…………!」

「勿論、これも証拠は無い故、問い詰める方法を考えねばならないがな。それから、長くは騙せないという件についてだが……。それについてはそれこそ折を見て流産したとでも言っておけば解決するだろう。傷心中だとでも言って子爵家に引きこもってしまえば疑われるリスクも減らせる。本来ならば心身共にダメージを負っているだろう令嬢の元に無理に押しかけるような人間もそうそう居ない筈なのでな。そうしてその後に嘘を本当にしてしまえば何も問題はない。そう考えているのだろう。」
「そっ、それではブレイズ伯爵子息もだまされていた被害者ということになるのか…………?」

フェリアの預り知らぬところであったが、カミーユ公爵家の面々は、ブレイズ伯爵家このまま見逃すつもりは無かった。違約金の支払い期日を延長したのは、ブレイズ伯爵家へのせめてもの情けなどでは毛頭なく、ただ単に逃げ出さないようにほんの少しだけ支払えるかもしれない可能性を見せてやっただけである。
さらに、ブレイズ伯爵家が金の工面に集中している間に、確実に伯爵家を叩きつぶせる材料を探すことにしたのだ。単純に契約書に記されていた文言で違約金を増加させて支払いをとどこおらせるのが一番手っ取り早いという結論に至ったのだ。だが、ブレイズ伯爵家側もだまされていたとなれば話は変わってくる。確かに契約違反はしているが、『嘘の理由で』一方的に婚約破棄をしたという事実が、見方によっては変わってしまうのである。これでは従来通り、規定の違約金を払えば済んでしまう。それで許されるなどあまりに生温い。これはもはや、ファルコの私怨も少し入っていた。
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