【完結】いつも私をバカにしてくる彼女が恋をしたようです。〜お相手は私の旦那様のようですが間違いはございませんでしょうか?〜

珊瑚

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フレデリックはそんなモニカを一瞥すると、興味を無くしたとばかりにセシリアに向き直った。


「さ、行こうか。」

何事も無かったかのようにセシリアの手を取って歩き出した。セシリアはちらりと横目でモニカの様子を確認してみたが、彼女は自分の身に起こっている事が信じられない様子で、押さえ付けられたまま呆然としている。

緩やかに流れていた筈の音楽も止み、静まり返ったホールにはフレデリックの革靴とセシリアの華奢なヒールが鳴らす規則正しい音がやけに大きく響く。
真っ直ぐに国王の待つ主催者席まで向かうと、フレデリックが口を開く。


「陛下。彼女が先日結婚しました私の妻です。」
「初めまして。ご紹介に預かりました、この度サヴィン辺境伯家に嫁ぎました、セシリアと申します。お目通り叶いまして光栄に存じます。」

フレデリックの言葉を受け、完璧なカーテシーを披露した後、セシリアが口上を述べる。
セシリアとフレデリックが結婚したのは去年の社交シーズンが終わった後だった。結婚後は領地にて過ごし、今日のパーティーから始まる社交シーズンに向けて王都に出て来た。
一般的によっぽどの事が無い限り、貴族の中でも子爵以下の身分の者は国王と直接話す事は許されない。例外は、何か勲章を授かる程度の重大な功績を残した場合くらいだ。
その為、国王とセシリアが言葉を交わすのはこれが初めての事であった。
しかし、フレデリックは入場後すぐに彼らと話していた。それも親しげに。
つまり、フレデリックの事を知らなかったとしてもモニカが彼の身分に気が付く事の出来るチャンスはあったのだ。少なくとも、自分より上であろうという程度は。

会場中の視線が集まる中、緊張に負けじと毅然とした様子でいるも、やはり少しは震えてしまうセシリアの手をフレデリックのそれがそっと包み込む。
セシリアは途端に安心したように小さく息をついた。

そんな二人の様子を間近で見ていた国王はその微笑ましい光景に自然と口元が綻ぶのを抑えることが出来なかった。
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