【完結】いつも私をバカにしてくる彼女が恋をしたようです。〜お相手は私の旦那様のようですが間違いはございませんでしょうか?〜

珊瑚

文字の大きさ
16 / 19

しおりを挟む
「サヴィン辺境伯夫人。夫婦仲睦まじいようで何よりだ。これからの活躍を期待している。」
「有り難き幸せに存じます。」

優しい声色で返された言葉に安心して思わず笑みが零れる。ほんの少しだけ伺うようにフレデリックをちらりと見上げると、まるで初めて歩いた我が子を見るかのような穏やかな表情でこちらを見つめていた。目が合うと、彼の瞳は溶けてしまいそうなほど甘く蕩ける。
何となく居た堪れなくなって視線を戻すと、無言で肩を震わせている国王一家が目に入った。
セシリアの視線に気が付いた国王は、咳払い一つして気を取り直すとあからさまに話題を逸らした。


「こほん……。いやなに、先程も面白いものを見せて貰ったよ。あんなに感情を剥き出しにしたサヴィン辺境伯は初めて見た。」
「妻を侮辱されたのです。当然では?」

胡乱な瞳でフレデリックが即答する。……ちょっと被せ気味に。
そんな彼の様子に苦笑しつつ国王が続ける。


「これだけの人数の前でやらかしたんだ。冤罪も何も無いとは思うが。……衛兵、その女をここに連れて来い。」

国王の声に従い、壁際に押さえ付けられていたモニカが連れてこられる。


「何か言いたい事はあるか?……あぁ、その状態では何も言えないな。猿轡を外してやれ。」

暴れたせいであろう。彼女の艶やかな髪は乱れて光沢を失い、ドレスには皺がより、ヒールは片方が折れている。国王から問い掛けられるも、彼女の紅が所々落ちた唇からは「辺境伯……?そんなことって……」とぶつぶつ小さな声が漏れるばかりだ。

モニカの様子に溜息をついた国王は視線を彼女からフレデリックとセシリアに移し、問いかける。


「お前たち二人は何か言いたい事はあるか?」

あまりのモニカの様子と展開の速さについて行くのがやっとのセシリアはただ首を横に振るだけだ。
そんな彼女とは別に、フレデリックは少し考えると口を開いた。

「では陛下。彼女には通常の罰の他に妻への接近禁止を付け足して頂けないでしょうか?」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私の夫は妹の元婚約者

彼方
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。 そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。 けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。 「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」 挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。 最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。 それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。 まるで何もなかったかのように。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた── 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は── ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。 最初は私もムカつきました。 でも、この頃私は、なんでもあげるんです。 だって・・・ね

濡れ衣を着せてきた公爵令嬢は私の婚約者が欲しかったみたいですが、その人は婚約者ではありません……

もるだ
恋愛
パトリシア公爵令嬢はみんなから慕われる人気者。その裏の顔はとんでもないものだった。ブランシュの評価を落とすために周りを巻き込み、ついには流血騒ぎに……。そんなパトリシアの目的はブランシュの婚約者だった。だが、パトリシアが想いを寄せている男はブランシュの婚約者ではなく、同姓同名の別人で──。

存在感と取り柄のない私のことを必要ないと思っている人は、母だけではないはずです。でも、兄たちに大事にされているのに気づきませんでした

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれた5人兄弟の真ん中に生まれたルクレツィア・オルランディ。彼女は、存在感と取り柄がないことが悩みの女の子だった。 そんなルクレツィアを必要ないと思っているのは母だけで、父と他の兄弟姉妹は全くそんなことを思っていないのを勘違いして、すれ違い続けることになるとは、誰も思いもしなかった。

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……

小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。 この作品は『小説家になろう』でも公開中です。

処理中です...