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6 アルバイトの方がまだマシだ
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個人情報はアパートの場所しか知られていないから、大丈夫だとは思うけど、また何か仕事が無いか聞きたかったんだ。
んー、仕事と言うよりは、〈やま〉が合っている気もする。
「けっ、いないのか、たりぃなぁ」
だけど、公園には〈はると〉はいなかった、しょうがないな、連絡を残しておくか。
普通は秘匿性の高いアプリを使うのだが、俺達の方法はかなり原始なんだ。
ベンチに尖った石で、会いたい日付と時間を、ガリガリするのが合図になっている。
スパイごっこ遊びのようで、君もしたいよな、とてもスマートだろう。
「あぁ、金が欲しいよ。 何とかならねぇかな」
わずかにあった金を稼ぐ当てを、失くしてしまったな、しょうがないハローワークにでも行くか。
だが、行ったところで、ほとんど期待出来ない。
履歴書が汚れまくっている俺には、どうせろくな仕事しか無いに決まっている。
拘束時間が長くて、かつ不安定かつ、賃金が安くてキツイ肉体労働だ。
山奥で、延々と土を運ばされた事がある、その土で谷を埋めていたが、大雨で全て流されてしまったらしい。
下流にあった住宅も今はもう無い、ネットの映像で流れていた。
求人端末で探していると、引っかかる情報が一つ出てきた。
「助手 期間の定めなし 〈いかい生活研究所〉 月15万円 住み込み可」
〈助手〉って何だろう、それに勤務時間が〈要相談〉って変だ、求人票ではあり得ない表現だ。
まともな所が出していないな、よくハローワークがこんなのを通したよ。
ただ、〈いかい〉が気にかかる、普通は〈猪飼〉とかの苗字だと思う。
でも〈異界〉だと、今の俺は考えてしまうんだ、衝撃的な経験をしたからな。
あの神殿に、何か関わりがある気もしてくる。
額面で月15万円か、ひどい安月給だ、社会保険とかを控除されたら10万円ちょっとだぞ。
これじゃ誰も選ばないよ、アルバイトの方がまだマシだ。
ずっと求人が残っているはずだ、こんな求人をした人はバカだと思う。
だが〈住み込み可〉は魅力的だ、今のアパートよりは、たぶん、ひどくはないだろう。
それに、半グレの〈はると〉に住居を知られているので、少し不安なんだ。
今は〈さっちん〉も住んでいるからな。
俺はバカだから良いんだと、自分に言い訳をして、この求人に応募してみよう。
言い訳する必要は無いと、どこからともなく聞こえたが、死んだ、ばあちゃんの声だったような。
ハローワークの職員に連絡をしてもらったら、〈いかい生活研究所〉は、いつでも面接をするとの事だった。
ハローワークの職員さんが、半笑いだったのは、何を笑っていたのだろう。
まさか違うとは思うけど、俺なんだろうか。
一生涯聞かないでおこう、人生には知らなくても良い真実に溢れているのだよ。
ここハローワークに集結した敗残者の、諦めきれない希望を、聞きたい人がいないのと同じだ。
俺は電車の駅を二つ移動して、研究所にやってきた。
履歴書を提出して、研究者の〈渡さん〉に、早くも面接をしてもらっている。
〈いかい生活研究所〉には、〈渡さん〉一人しかいないらしい、すごく零細な企業だ。
〈渡さん〉一人しかいないから、とても困っていたそうだ。
フィールドワークに行きたくても、留守番がいないから行けなかった、と嬉しそうに話されている。
えっ、もう採用が決まった感じで、言うんですね、はて、そんなんで良いんすか。
「君の名前は、〈よしお〉君と言うのだね。 よろしくお願いしますよ」
「えぇっと、ちょっと待ってください。 まだ僕は就職を決めていませんよ」
「えっ、そのために来られたんですよね。 いつまで経っても応募者が来ないから、私は困っているのです」
「困ると言われても、えぇっと、段階を飛ばし過ぎです。 それに、給料が安すぎます」
「やはり安すぎますか。 うーん、所長の頭の中が、十年前からアップデイトされないのです。 あっ、でもですよ。 うちは社宅が完備しています。 ここは駅から徒歩圏にギリギリありますから、少し便利ですよ」
正直ではあるな、すごく便利と言わないところに、好感が持てる。
「そう求人票にありましたね。 中を一度見せてもらえますか」
「良いですとも、ご案内します」
〈渡さん〉が言うところの社宅は、研究所から少し離れた場所に、ポツンと建っている。
かなり小さな家だ。
これは社宅じゃないだろう、それじゃ何だと聞かれたら、分からん、としか答えようがない。
単なる思いつきで建てた気がしてくる。
長く放置されていたから、家の中には埃が溜まっているが、それほど汚れてはいない。
あまり使っていなかったんだ、思いつきだからな。
トイレと風呂を合体したユニットだけど、ちゃんと付いている。
水道水は赤茶けているが、流し続ければ何とかなりそうだ。
「ガスと電気は、業者に言えば、直ぐに使う事が可能です。 私も一時期ここに住んでいたんですよ。 通勤が滅茶苦茶楽ですからね。 今は女房の実家なんですよ、肩身が狭くてね。 早くフィールドワークに行きたくて、仕方がありません。 学会の委員会にも行かなければなりません」
〈渡さん〉は、ぶっちゃけっているな、そんな理由で行っていいんかい。
「はぁ、でも一戸建てだから、家賃はかなりしますよね」
「いいえ、不要です。 光熱水費も不要です」
「へっ、そうなんですか。 それを求人票に記入しておけば、もっと早く何とかなったんじゃないですか」
「おぉっと、それは盲点だったですね。 私とした事が、一知半解でした」
かぁー、研究者だけあって、難しい言葉を使うな、知が半分壊れてバカって意味なの。
「それと、僕には内縁のこ…… 、じゃなくて、妻がいるのですが、 同居は可能ですか」
あぶねぇ、高校生って言うところだったよ。
〈さっちん〉は、妻じゃないけど怒らないよな、説明は妻って言った方が楽なんだ。
助けた代わりに、強引に抱いた女子高校とは言えないよ。
「えぇ、給与は出ませんが、可能です。 私もここで同棲をしていた時があります。あっ、妻には内緒にしてくださいね」
あんたの妻をしらんがな、それに初対面のくせに、どうしてベラベラと話すんだよ。
研究者の多くが、ちょっとおかしいのは、本当なんだ。
「鍵を渡しておきますか」
「ち、ちょっと待ってください。 内縁の妻にも相談する必要があります」
「あぁ、そうなんですか。こういう場合は、妻に相談するものなんですね」
言わないのか、あんたは。そんなことだから、肩身が狭くなるんだよ。
んー、仕事と言うよりは、〈やま〉が合っている気もする。
「けっ、いないのか、たりぃなぁ」
だけど、公園には〈はると〉はいなかった、しょうがないな、連絡を残しておくか。
普通は秘匿性の高いアプリを使うのだが、俺達の方法はかなり原始なんだ。
ベンチに尖った石で、会いたい日付と時間を、ガリガリするのが合図になっている。
スパイごっこ遊びのようで、君もしたいよな、とてもスマートだろう。
「あぁ、金が欲しいよ。 何とかならねぇかな」
わずかにあった金を稼ぐ当てを、失くしてしまったな、しょうがないハローワークにでも行くか。
だが、行ったところで、ほとんど期待出来ない。
履歴書が汚れまくっている俺には、どうせろくな仕事しか無いに決まっている。
拘束時間が長くて、かつ不安定かつ、賃金が安くてキツイ肉体労働だ。
山奥で、延々と土を運ばされた事がある、その土で谷を埋めていたが、大雨で全て流されてしまったらしい。
下流にあった住宅も今はもう無い、ネットの映像で流れていた。
求人端末で探していると、引っかかる情報が一つ出てきた。
「助手 期間の定めなし 〈いかい生活研究所〉 月15万円 住み込み可」
〈助手〉って何だろう、それに勤務時間が〈要相談〉って変だ、求人票ではあり得ない表現だ。
まともな所が出していないな、よくハローワークがこんなのを通したよ。
ただ、〈いかい〉が気にかかる、普通は〈猪飼〉とかの苗字だと思う。
でも〈異界〉だと、今の俺は考えてしまうんだ、衝撃的な経験をしたからな。
あの神殿に、何か関わりがある気もしてくる。
額面で月15万円か、ひどい安月給だ、社会保険とかを控除されたら10万円ちょっとだぞ。
これじゃ誰も選ばないよ、アルバイトの方がまだマシだ。
ずっと求人が残っているはずだ、こんな求人をした人はバカだと思う。
だが〈住み込み可〉は魅力的だ、今のアパートよりは、たぶん、ひどくはないだろう。
それに、半グレの〈はると〉に住居を知られているので、少し不安なんだ。
今は〈さっちん〉も住んでいるからな。
俺はバカだから良いんだと、自分に言い訳をして、この求人に応募してみよう。
言い訳する必要は無いと、どこからともなく聞こえたが、死んだ、ばあちゃんの声だったような。
ハローワークの職員に連絡をしてもらったら、〈いかい生活研究所〉は、いつでも面接をするとの事だった。
ハローワークの職員さんが、半笑いだったのは、何を笑っていたのだろう。
まさか違うとは思うけど、俺なんだろうか。
一生涯聞かないでおこう、人生には知らなくても良い真実に溢れているのだよ。
ここハローワークに集結した敗残者の、諦めきれない希望を、聞きたい人がいないのと同じだ。
俺は電車の駅を二つ移動して、研究所にやってきた。
履歴書を提出して、研究者の〈渡さん〉に、早くも面接をしてもらっている。
〈いかい生活研究所〉には、〈渡さん〉一人しかいないらしい、すごく零細な企業だ。
〈渡さん〉一人しかいないから、とても困っていたそうだ。
フィールドワークに行きたくても、留守番がいないから行けなかった、と嬉しそうに話されている。
えっ、もう採用が決まった感じで、言うんですね、はて、そんなんで良いんすか。
「君の名前は、〈よしお〉君と言うのだね。 よろしくお願いしますよ」
「えぇっと、ちょっと待ってください。 まだ僕は就職を決めていませんよ」
「えっ、そのために来られたんですよね。 いつまで経っても応募者が来ないから、私は困っているのです」
「困ると言われても、えぇっと、段階を飛ばし過ぎです。 それに、給料が安すぎます」
「やはり安すぎますか。 うーん、所長の頭の中が、十年前からアップデイトされないのです。 あっ、でもですよ。 うちは社宅が完備しています。 ここは駅から徒歩圏にギリギリありますから、少し便利ですよ」
正直ではあるな、すごく便利と言わないところに、好感が持てる。
「そう求人票にありましたね。 中を一度見せてもらえますか」
「良いですとも、ご案内します」
〈渡さん〉が言うところの社宅は、研究所から少し離れた場所に、ポツンと建っている。
かなり小さな家だ。
これは社宅じゃないだろう、それじゃ何だと聞かれたら、分からん、としか答えようがない。
単なる思いつきで建てた気がしてくる。
長く放置されていたから、家の中には埃が溜まっているが、それほど汚れてはいない。
あまり使っていなかったんだ、思いつきだからな。
トイレと風呂を合体したユニットだけど、ちゃんと付いている。
水道水は赤茶けているが、流し続ければ何とかなりそうだ。
「ガスと電気は、業者に言えば、直ぐに使う事が可能です。 私も一時期ここに住んでいたんですよ。 通勤が滅茶苦茶楽ですからね。 今は女房の実家なんですよ、肩身が狭くてね。 早くフィールドワークに行きたくて、仕方がありません。 学会の委員会にも行かなければなりません」
〈渡さん〉は、ぶっちゃけっているな、そんな理由で行っていいんかい。
「はぁ、でも一戸建てだから、家賃はかなりしますよね」
「いいえ、不要です。 光熱水費も不要です」
「へっ、そうなんですか。 それを求人票に記入しておけば、もっと早く何とかなったんじゃないですか」
「おぉっと、それは盲点だったですね。 私とした事が、一知半解でした」
かぁー、研究者だけあって、難しい言葉を使うな、知が半分壊れてバカって意味なの。
「それと、僕には内縁のこ…… 、じゃなくて、妻がいるのですが、 同居は可能ですか」
あぶねぇ、高校生って言うところだったよ。
〈さっちん〉は、妻じゃないけど怒らないよな、説明は妻って言った方が楽なんだ。
助けた代わりに、強引に抱いた女子高校とは言えないよ。
「えぇ、給与は出ませんが、可能です。 私もここで同棲をしていた時があります。あっ、妻には内緒にしてくださいね」
あんたの妻をしらんがな、それに初対面のくせに、どうしてベラベラと話すんだよ。
研究者の多くが、ちょっとおかしいのは、本当なんだ。
「鍵を渡しておきますか」
「ち、ちょっと待ってください。 内縁の妻にも相談する必要があります」
「あぁ、そうなんですか。こういう場合は、妻に相談するものなんですね」
言わないのか、あんたは。そんなことだから、肩身が狭くなるんだよ。
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