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第2章
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激レアなアキラくんを堪能するのに、九十分は短い。
講義の終了とともに颯爽と出ていく教授と学生につられながら、急いでノートをリュックに詰める。
次が空きコマのときは、家に帰らず学食でだらだらしながら真希ちゃんと昼食を食べるのが日課だった。その学食は早く行かないと、お昼を待たずに席が埋まってしまう。
マイペースに筆記用具の片付けをしているアキラくんの後ろ姿に「またね」と心の中で声をかけて、来週も来てくれるように願う。その瞬間、くるりとアキラくんが振り向いた。
「あ、コハルちゃん!」
「え、は、はい!」
結構な声量で名前を呼ばれて背筋が伸びる。
「今、時間大丈夫?」
「今……」と呟いて真希ちゃんのほうを見る。真希ちゃんは瞬時に察したのか、「先に学食行ってる」とスタスタ講義室を出て行ってしまった。
五分もしないうちに、講義室にはアキラくんと私の二人だけになる。
ここは次の講義で使わないのか、私たちも移動した方がいいのではないか考えていると、アキラくんは「ここ、次の授業で使ったりしないから」と私の隣まで来た。
物理的な距離が一気に縮まって、視界がアキラくんで埋め尽くされて、心臓が爆発しそうになる。
やがて二限目が始まると、廊下にも窓の外にも人の気配がしなくなった。
私たちはお互い、最初の一言を発せずに立ったまま向かい合っていた。
「……アキラくん?」「……写真」二人の声がかぶる。
「写真のことなんだけど」
「え? あぁ! 大丈夫! 誰にも見せてないし、何も言ってないから!」
「消してもらえるかな……」
「えぇっ、なん、いやだよ!」
「え、えぇ!? なんで……? あんなの気持ち悪いでしょ」
「そんなことないよ! すごく可愛くて、似合っててびっくりした!」
またもや「えぇ……」と絶句しているアキラくんに、外見の可愛さ、女装クオリティの高さ、存在の尊さを熱弁する。
あの写真がいかに私にとって価値のあるものなのか、アキラくんはわかってない。ただでさえ後ろ姿しか見られないアキラくんの正面、かつ女装姿。そんな姿はしらふで拝めるわけがない。たとえば高校の学祭とかならありそうだけど。というか学祭で売られてたら絶対買う。買い占めてしまう自信がある。
それに、あの写真を消しちゃったらアキラくんとの接点が無くなっちゃう。
あれはアキラくんの秘密だから。
女装して、不特定多数の人達に自慰行為を見せる変態なアキラくんの秘密。それを知ってるのはきっと私だけで。……脅すわけじゃない。
決してそんなつもりはないのだけど、これを好機と呼ばずになんというのか。たとえアキラくんの頼みでも、消してたまるか。
私が繰り広げる演説の熱量に引き気味のアキラくんは、私がどんなに説いても、彼の頭の中はあの写真をどうやって消してもらうかしか考えてないのだろう。
ならば、やはり、こうするしかない。
「……写真、消してもいいけど」
「っ、うん」
「また、一人でしてるところ見せて。今、ここで。アキラくん、変態だからできるよね? この前自分で変態だって言ってたもんね。私も言ったよね。アキラくんが気持ち良くなってるとこ見てあげるって。ひとつ私も要求を飲むから、アキラくんも飲んで」
「…………」
目を見開いて無言のまま、アキラくんが私を見つめる。これがもう少し身長が高くていかつくて、スマホを無理やりぶんどって来そうなゴリラみたいな人種だったら、私もペコペコしながら写真を消していたかもしれない。
でも目の前のアキラくんは、要求を聞いてもらえない可哀想な小動物にしか見えなかった。こちらがもっと強く言えば、泣いてしまうかもしれない。
「……わかった」
少し困ったような薄ら笑いを浮かべて、アキラくんが横にあるイスを引いて座った。
一か八かの賭けに勝利したけど、絶対、嫌われた。だってこんなのフェアじゃない。アキラくんをただ困らせただけだ。
「コハルちゃん」
「うん!?」
「俺も相当変態だけど、コハルちゃんも大概だね」
「……そ、うかな、そうかも」
「気持ち悪いとか思わないの?」
「あ、それは全然思ったことない」
即答する私に、アキラくんは安心したようにへにゃっと頬を緩ませた。うぅ、可愛い。
あんな状態で果たしてちゃんと勃つのかと思ったけど、余計なお世話だったようで。
黒いスキニーから取り出されたそれはすでに十分に大きかった。元が大きいのかもしれない。
ホテルで見たときのアキラくんは、部屋のせいで手元が暗かったし、まじまじと集中して見れるほど私の心の余裕もなかった。
立ったままだとアキラくんのつむじしか見えないから、私もイスを取り出してアキラくんの前に座った。アキラくんの邪魔にならない程度に近づいて、腕を伸ばせば太ももに触れるくらいまで距離をつめる。
バニラのような甘い柔軟剤の香りが鼻腔をくすぐった。前のめりになりながら無防備なアキラくんを見つめる。
ふと顔を上げるとアキラくんも私を見ていた。いたずらっぽく微笑まれて、私の方がいけないことをしているみたいな気分になる。
大きくはあるけどまだ十分に勃起してはなかったのだろう。アキラくんが動かすたびに、手の中のチンポが少しずつ頭をもたげ始めた。
目の前で一人でされると心細くなって、やっぱりどうしても触りたくなる。滑り落ちるようにアキラくんの両足の間にペタリと座り、イスの縁を握っていたアキラくんの左手を取った。
身長は私とそんなに変わらないのに、手は私のよりずっと大きくて、関節がわかりやすくごつごつしていて紛れもなく男の人のそれだった。
すりすりと頬擦りして、人差し指を指を口に含む。口の中で、アキラくんの爪が私の舌を引っかいた。ピリッとした痛みをごまかしながら舌を絡める。
別に美味しくもなんともないのに、何か高級なものを味わうように、一心不乱に舌を動かして頬張る。
「……っ、コハルちゃん……」
アキラくんの声が高くなった。苦しげで可愛い。その声で名前を呼ばれると頭の中の血が沸々と沸騰する。
もっとしたくなって、口の中の指を2本に増やす。指の間から涎の滴が滴るほど夢中でしゃぶると、アキラくんの体温でバニラの匂いが濃くなった。
講義の終了とともに颯爽と出ていく教授と学生につられながら、急いでノートをリュックに詰める。
次が空きコマのときは、家に帰らず学食でだらだらしながら真希ちゃんと昼食を食べるのが日課だった。その学食は早く行かないと、お昼を待たずに席が埋まってしまう。
マイペースに筆記用具の片付けをしているアキラくんの後ろ姿に「またね」と心の中で声をかけて、来週も来てくれるように願う。その瞬間、くるりとアキラくんが振り向いた。
「あ、コハルちゃん!」
「え、は、はい!」
結構な声量で名前を呼ばれて背筋が伸びる。
「今、時間大丈夫?」
「今……」と呟いて真希ちゃんのほうを見る。真希ちゃんは瞬時に察したのか、「先に学食行ってる」とスタスタ講義室を出て行ってしまった。
五分もしないうちに、講義室にはアキラくんと私の二人だけになる。
ここは次の講義で使わないのか、私たちも移動した方がいいのではないか考えていると、アキラくんは「ここ、次の授業で使ったりしないから」と私の隣まで来た。
物理的な距離が一気に縮まって、視界がアキラくんで埋め尽くされて、心臓が爆発しそうになる。
やがて二限目が始まると、廊下にも窓の外にも人の気配がしなくなった。
私たちはお互い、最初の一言を発せずに立ったまま向かい合っていた。
「……アキラくん?」「……写真」二人の声がかぶる。
「写真のことなんだけど」
「え? あぁ! 大丈夫! 誰にも見せてないし、何も言ってないから!」
「消してもらえるかな……」
「えぇっ、なん、いやだよ!」
「え、えぇ!? なんで……? あんなの気持ち悪いでしょ」
「そんなことないよ! すごく可愛くて、似合っててびっくりした!」
またもや「えぇ……」と絶句しているアキラくんに、外見の可愛さ、女装クオリティの高さ、存在の尊さを熱弁する。
あの写真がいかに私にとって価値のあるものなのか、アキラくんはわかってない。ただでさえ後ろ姿しか見られないアキラくんの正面、かつ女装姿。そんな姿はしらふで拝めるわけがない。たとえば高校の学祭とかならありそうだけど。というか学祭で売られてたら絶対買う。買い占めてしまう自信がある。
それに、あの写真を消しちゃったらアキラくんとの接点が無くなっちゃう。
あれはアキラくんの秘密だから。
女装して、不特定多数の人達に自慰行為を見せる変態なアキラくんの秘密。それを知ってるのはきっと私だけで。……脅すわけじゃない。
決してそんなつもりはないのだけど、これを好機と呼ばずになんというのか。たとえアキラくんの頼みでも、消してたまるか。
私が繰り広げる演説の熱量に引き気味のアキラくんは、私がどんなに説いても、彼の頭の中はあの写真をどうやって消してもらうかしか考えてないのだろう。
ならば、やはり、こうするしかない。
「……写真、消してもいいけど」
「っ、うん」
「また、一人でしてるところ見せて。今、ここで。アキラくん、変態だからできるよね? この前自分で変態だって言ってたもんね。私も言ったよね。アキラくんが気持ち良くなってるとこ見てあげるって。ひとつ私も要求を飲むから、アキラくんも飲んで」
「…………」
目を見開いて無言のまま、アキラくんが私を見つめる。これがもう少し身長が高くていかつくて、スマホを無理やりぶんどって来そうなゴリラみたいな人種だったら、私もペコペコしながら写真を消していたかもしれない。
でも目の前のアキラくんは、要求を聞いてもらえない可哀想な小動物にしか見えなかった。こちらがもっと強く言えば、泣いてしまうかもしれない。
「……わかった」
少し困ったような薄ら笑いを浮かべて、アキラくんが横にあるイスを引いて座った。
一か八かの賭けに勝利したけど、絶対、嫌われた。だってこんなのフェアじゃない。アキラくんをただ困らせただけだ。
「コハルちゃん」
「うん!?」
「俺も相当変態だけど、コハルちゃんも大概だね」
「……そ、うかな、そうかも」
「気持ち悪いとか思わないの?」
「あ、それは全然思ったことない」
即答する私に、アキラくんは安心したようにへにゃっと頬を緩ませた。うぅ、可愛い。
あんな状態で果たしてちゃんと勃つのかと思ったけど、余計なお世話だったようで。
黒いスキニーから取り出されたそれはすでに十分に大きかった。元が大きいのかもしれない。
ホテルで見たときのアキラくんは、部屋のせいで手元が暗かったし、まじまじと集中して見れるほど私の心の余裕もなかった。
立ったままだとアキラくんのつむじしか見えないから、私もイスを取り出してアキラくんの前に座った。アキラくんの邪魔にならない程度に近づいて、腕を伸ばせば太ももに触れるくらいまで距離をつめる。
バニラのような甘い柔軟剤の香りが鼻腔をくすぐった。前のめりになりながら無防備なアキラくんを見つめる。
ふと顔を上げるとアキラくんも私を見ていた。いたずらっぽく微笑まれて、私の方がいけないことをしているみたいな気分になる。
大きくはあるけどまだ十分に勃起してはなかったのだろう。アキラくんが動かすたびに、手の中のチンポが少しずつ頭をもたげ始めた。
目の前で一人でされると心細くなって、やっぱりどうしても触りたくなる。滑り落ちるようにアキラくんの両足の間にペタリと座り、イスの縁を握っていたアキラくんの左手を取った。
身長は私とそんなに変わらないのに、手は私のよりずっと大きくて、関節がわかりやすくごつごつしていて紛れもなく男の人のそれだった。
すりすりと頬擦りして、人差し指を指を口に含む。口の中で、アキラくんの爪が私の舌を引っかいた。ピリッとした痛みをごまかしながら舌を絡める。
別に美味しくもなんともないのに、何か高級なものを味わうように、一心不乱に舌を動かして頬張る。
「……っ、コハルちゃん……」
アキラくんの声が高くなった。苦しげで可愛い。その声で名前を呼ばれると頭の中の血が沸々と沸騰する。
もっとしたくなって、口の中の指を2本に増やす。指の間から涎の滴が滴るほど夢中でしゃぶると、アキラくんの体温でバニラの匂いが濃くなった。
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