とある騎士に見初められたドラゴンの話

おにぎり1000米

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 その冒険者は都のいい家柄の出身なのだといって、いつも取り巻きを連れ歩いていた。村じゅうの人間を馬鹿にして見下していたから、俺はそいつが嫌いだった。それでも金払いはよかったから、宿屋や酒場ではそれなりに歓迎されていた。

 俺は歓迎なんかしなかった。冒険者ならずっとダンジョンにいればいいのに、こんなところで何をしているのかといつも思っていたものだ。その冒険者は女癖もよくなかったし、取り巻きの連中が俺にもたまに声をかけてきた。村の連中はもう、俺をそんな風に誘わなくなっていたけれど、そいつらはおかまいなしだった。俺はいつも聞こえなかったふりをして無視した。

 でもあの日は間が悪かった。夕方酒場に品物を届けると、亭主が一杯おごるというのだ。俺はまだ人のいない酒場の隅で、ひとりで酒を飲んでいた。すると例のいけ好かない冒険者がめずらしく一人でやってきて、俺の横に座ったのだ。そしてこれも何かの縁だとか、前からみかけて気になっていたとかいって、俺に酒をおごろうとする。いつのまに俺の名前を知ったのか、ミラン、と馴れ馴れしく呼んでくる。

 亭主の手前、はねつけるのも気が引けて、俺はしかたなく、一杯だけといってそいつに酒をもらった。でもそれがよくなかった。気がついたら俺はしこたま酔っぱらって――というか、酒ではない何かを飲ませられて、足が立たなくなっていた。

 いけ好かない冒険者は俺を介抱するといって、腰を抱いて酒場の外へ連れ出した。自分の宿へ俺を連れこもうとしているのはわかったが、頭はもうろうとしているし、体はだるくて動かないしで、俺はだらりとそいつの肩におぶさったまま、どうしようもなかった。そいつはやけに嬉しそうな声でささやくのがきこえた。
「ミラン、おまえをずっと狙ってたんだ。心配ない。天に上る心地にしてやるぜ」

 ところがつぎの瞬間だ。ボキッという音とともに俺はそいつの肩から放り出され、地面に投げ出された。「うわっ」とか「何をするっ」とか、そんな声とともに人が殴りあう物騒な物音が立ち、しまいに遠くの方で厳めしい声が響いた。
「おまえの狼藉は都でも有名だ。捕縛する」

 何人かの足音が俺の頭の周りで響く。俺はやっと薄目をあけた。立派な騎士服を着て剣をつるした男と兵隊がふたり、くだんの冒険者を捕まえている。
 あいつ、都でも札付きだったのか。それにしてもダンジョンの調査に行った騎士がまだこのあたりにいたんだな……俺は回らない頭でそんなことをぼんやり思い、さらにあの騎士はどこかで見た顔だと思ったが、どこで見たのかはさっぱり思い出せなかった。
 だるい体を持ち上げようと苦労していると、ランプの明かりが俺を照らした。

「大丈夫か? 動けるか?」
「……く…すり……を……もられた……みたい……」

 口がからまって言葉がちゃんと出ないし、ランプがまぶしすぎて目をあけていられない。声の主はうなずいてランプをどこかにやると、俺の膝と首のうしろに手をさしこみ、ひょいと抱き上げた。
「家はどこだ?」

 俺はこたえようとしたが、自分を抱えている腕のぬくもりを意識したとたん、体の奥で何かがぱちんとはじけたようになって、声を失った。
「どうした?」
 男がたずねたが、俺は口を半開きにして息をつくだけだ。ぼんやりしていた頭が急にはっきりしたと思ったら、突然の情欲で体じゅうが熱くなり、股間から背筋、足の先まで血が駆けめぐって、どうしたらいいのかわからない。
 口がきけないままの俺を男は真剣な目でみつめ、ふいに俺の口もとに鼻を近づけてきた。

「ダナエの実か。まずいな」
「隊長?」
 後ろから呼ぶ声に男は冷静に返事をした。
「そいつを逃がすな。この男は安全な場所へ連れていく」

 男は走り出し、俺は彼の首に手を回してすがりついた。沸き立つ血にまた頭がくらくらとして、目の前が暗くなった。




 気がつくと俺は柔らかい敷物の上に横たえられていた。覆いをかけたランプの薄暗い光にあたりはぼんやり照らされている。
「気がついた……な」
 男が膝をついて俺のうえにかがみこんだ。俺は口をひらいたが、何時間も叫んだみたいに喉がひりついて、口はからからだ。
「おまえはダナエの実を大量に飲まされたんだ。命の危険は去ったと思うが……」

 男は俺を抱き起こすと、背中を支えたまま木の椀を俺の口にあてがった。水の匂いがするのに、うまく飲みこめない。こぼれた水が胸の上を流れていき、俺は自分の服があちこち裂けているのに気がついた。

「おまえが自分でもがいて……破った。ダナエの実のせいだ」
「ダナエの実……?」
「媚薬だ。もう抜けたと思うが……」

 媚薬だって?
 俺は男の顔をみつめ、その腕や頬にあちこちひっかき傷があるのに気づいた。俺がやらかしたのだろうか。気を失うまえに感じた妙な熱はなくなって、頭の働きも元に戻っている。

 それでも男をみていると、俺の体の底でじくじくと疼くものがあった。情欲の波がまた皮膚の下でたぷんたぷんと揺れる。俺はまばたきし、そして俺を支えている男の眸の中でもおなじ波が揺れるのをみてとった。男自身もはちきれそうな欲情をこらえているのだ。

 俺は唾をのみこんだ。まだ喉が乾いている。
「水をもっと……くれないか」
「ああ」

 男は床に置いてある水差しにちらりと目をやったが、手を伸ばそうとはしなかった。俺も男の顔や、喉や、がっしりした肩から目を離せなかった。俺たちはみつめあい――そしてあっと思ったときには、俺の背中を抱えていた腕に体をおさえつけられ、俺は男の下になって自分から唇を吸っていた。

 舌をからめると喉の渇きは消えて、そのかわり男の体がもっと欲しくなる。ずっと張り型だけを使っていたから、俺は実は人肌に飢えていたのかもしれない。でもあの冒険者や他の人間には、一度もこんな欲をおぼえたことはないのに。

 俺は男の下で身をよじらせて、なかば裂けてしまった服をぬぎすてた。胸のとがりを上にいる男におしつけようとしたら、男は呻き声をあげながら半裸になった。それでも、昔寝た村の連中とちがって、唇で俺の胸や肌をくすぐるようにたどるから、俺はじりじりして自分から男のズボンの前をあけた。下穿きから飛び出したのは薄暗い明かりの中でもびっくりするくらい太くて長いモノで、俺はまた唾を飲みこんだ。

 それでも男は急ごうとせず、こんどは俺をうつぶせにして、ゆっくり尻の奥を弄りはじめる。これも媚薬のせいだろうか、油も何もつかった様子がないのに、男の指が入ってきても異物感も痛みもなくて、俺は誘うように腰をもちあげて、もっと来てくれとせがんだ。
 張り型で馴らされた奥の方がたまらないほど疼いて、男の立派なモノがほしくて、どうしようもない。ついにそれが中に入ってきて、さらにずぶっと奥までつらぬかれたとたん、頭のてっぺんで星がはじけたような真っ白の快感がやってきた。しかも一度で終わらない、男が動くたび、何度も、何度もだ。

「あ、あああ―――」

 男はうつぶせになった俺の胸を支え、腰を浮かせたまま何度もくりかえし突き、俺は背をそらせ、男が動くのにあわせて腰を揺らした。男が俺の首筋でうめくのが聞こえ、腹の奥ふかくに精が吐き出される。それにあわせるように俺も声をあげながら達して、そのまま体を丸めて横たわった。背を向けたままの男のモノがずるりと中から出て行く。

「大丈夫……か?」
 いたわるような声をかけられたが、俺はまだ甘い余韻のなかにいて、うなずくだけで精一杯だった。男の手が俺の髪を撫でている。それもまた心地よくて、なんでもいいからしばらくこのままでいたい、と思ったときだった。俺の腹の中で何かがむくっと動いた。

「ひゃっ? な、なに――」

 おかしな声をあげてしまったのは、腹の中のそれが、さっき男のモノを咥えていたときの快感を呼び覚ますように動きながら、どんどん下へ、尻穴の方へ動いていくのがわかったからだ。
 催しているときともちがう、張り型とも男根ともちがう、痺れるような快感とともにそれが動いて、俺は無意識に息を吐き、体を揺すっていた。

 すぐ隣で男があぜんとした目で見ているのがわかったが、止められない。俺はうつぶせになり、目をぎゅっと閉じて、快感に全身をふるわせながらそれが出て行くのにまかせた。尻から股のあいだを固いものがころがっていく。
 目をあけると鈍く光る雫型のものがついた膝のあいだに落ちていた。いったいなんだ? 
 そう思ったときあたりが明るくなった。男がランプの覆いをとったのだ。

「そこをどけ」
 乱暴に押しのけられ、俺はびくっとした。男は俺がいたところから、ランプの光にてらてらと輝く、雫型の石を拾い上げた。透明感のある深い瑠璃色で、透明な粘液に覆われている。
 その時になって俺はハッと気づいた。あれは俺の中から出てきたのだ。同時に頭に思い浮かんだのは、金に変わった湿布のこと。

 まさか、中に出されて気持ちよくなると、俺は金じゃなくて宝石を出してしまうのか?

「そ、その石は……」
 男は手のひらの上で青い石を転がしている。あんなところから出てきたというのに、なぜか敷布も石もぜんぜん汚れていない。どう説明すればいい? だいたい、この男は俺がこの石をひりだすところを最初から最後までみていたのだ。

「これはいま、おまえが産んだものだ」
 男はこわばった声でいった。俺は何かいいわけしようと思ったが、言葉が続かなかった。でも男は気にしていないみたいだった。それどころかみょうに納得したような表情で、俺の顔をしげしげとみつめて、いった。
「つまり、おまえはドラゴンだ」


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