63 / 63
第三章
おまけ
しおりを挟む
「本当に良かったわ。何だか分からなかった事件も解決して……」
「お姉ちゃんも今度は失恋せずに済みそうで」
妹の頭にゲンコツを落として姉が怒る。
「人の未来を勝手に決めるな」
「痛いってば! もしかして、別れる気あるの?」
母を見ながら早貴は答えた。
「うーん。タクとは別れないと思う」
「それ、付き合い始めにいつも聞いていた気がする」
「あんたねえ。そういうこと言わないでよ。……今度は本当に、そう思えるの」
姉の周りをゆっくり周回しながら香菜がニヤニヤしている。
「へえ。どうも今度は大丈夫そうだね。何と言っても相手は十年の付き合いがある人だもんね。さすがに大丈夫かな」
「……そっか。十年会いに行っていたのね。タクとも話したけど、二人共何をやっていたんだろうね」
そこへ時子が割り込んだ。
「本当に鈍い二人でこっちはもどかしくて仕様が無かったわよ! 毎日のように通っていたのにそれだけなんだから。やっと……やっと落ち着けるわ」
「お母さん……そんな風に見ていたの? なんだか許嫁みたいね。初めて会った日にお母さんから通いなさいって言われたのが始まりだから」
「もしかして、お母さんが許嫁として話をしていたら良かったとか?」
時子の表情が固まる。
核心を突く香菜のスキルが発動したようだ。
「私が足りなかったの……そ、そうかも知れないわね」
「ちょっと。何年も会っていたからこそなんだけど」
「勿論それも大事なんだけどー、お姉ちゃんは初めに決めてあげた方が上手く行くと思うの」
時子は香菜に感心したようで、目を丸くしている。
「まあ何はともあれ、平和が戻ってきたので、お父さんからのプレゼント開けてみよう!」
「届いたの?」
「久しぶりだよね。大変なのかなあ」
父親の勝男が毎月プレゼントを贈ってくることが恒例になっている綿志賀家。
文明の利器が使えないような奥地へ入り込むと数か月何の連絡も無いことは多々ある。
「また箱に入っているよ?」
「あんまり期待したら駄目よ。糠喜びさせる天才なんだから」
「無事な証拠なんだから許してあげて」
時子もプレゼントが届いたことで一安心していたようだ。
そこに早貴の言葉は少々厳しかったらしい。
「そうだよお姉ちゃん。とにかく開けてみよ?」
早貴の隙を突いて香菜が箱を開けた。
「あ! 開けるのはアタシ!」
「いつもお姉ちゃんなんだから、たまにはいいでしょー」
開かれた箱の中には新聞紙に包まれたものと手紙が入っている。
新聞紙には何語か分からない文字が並んでいた。
「なんか前の時より大きいね」
「香菜が開けていいわよ」
「急にどうしたの? 開ける気だけど」
「何が出てくるか分からないじゃない」
覗き込む二人を後ろから眺めている時子は少し吹き笑いをしていた。
「それじゃあ開けまーす!」
新聞紙が剥がされてゆく。
「これ、重い……」
中から透明で山の字型の結晶が登場した。
「何これ?」
「水晶?」
姉妹が揃って振り返り、母親に聞く。
「見せて。……水晶、ね。でも偽物じゃないかしら」
「手紙読んでみるね」
『どうだ、母さんの様に綺麗だろ』
「……続きを読んでよ」
「……これだけ」
「はあ!?」
さすがに三人とも固まった。
「久しぶりのプレゼントがこれですか。いよいよ騙されていない? あの人」
「お姉ちゃん、お父さんに厳しいね」
「だって、こう、なんかさ、もうちょっとないの?」
綿志賀家に、不安の無い明るい日常が戻ってきた。
水晶を前に占い師の真似事をする香菜に付き合う早貴。
その姿を見てから時子は便せんを取りに夫の書斎へと向かった。
おまけ 完
「お姉ちゃんも今度は失恋せずに済みそうで」
妹の頭にゲンコツを落として姉が怒る。
「人の未来を勝手に決めるな」
「痛いってば! もしかして、別れる気あるの?」
母を見ながら早貴は答えた。
「うーん。タクとは別れないと思う」
「それ、付き合い始めにいつも聞いていた気がする」
「あんたねえ。そういうこと言わないでよ。……今度は本当に、そう思えるの」
姉の周りをゆっくり周回しながら香菜がニヤニヤしている。
「へえ。どうも今度は大丈夫そうだね。何と言っても相手は十年の付き合いがある人だもんね。さすがに大丈夫かな」
「……そっか。十年会いに行っていたのね。タクとも話したけど、二人共何をやっていたんだろうね」
そこへ時子が割り込んだ。
「本当に鈍い二人でこっちはもどかしくて仕様が無かったわよ! 毎日のように通っていたのにそれだけなんだから。やっと……やっと落ち着けるわ」
「お母さん……そんな風に見ていたの? なんだか許嫁みたいね。初めて会った日にお母さんから通いなさいって言われたのが始まりだから」
「もしかして、お母さんが許嫁として話をしていたら良かったとか?」
時子の表情が固まる。
核心を突く香菜のスキルが発動したようだ。
「私が足りなかったの……そ、そうかも知れないわね」
「ちょっと。何年も会っていたからこそなんだけど」
「勿論それも大事なんだけどー、お姉ちゃんは初めに決めてあげた方が上手く行くと思うの」
時子は香菜に感心したようで、目を丸くしている。
「まあ何はともあれ、平和が戻ってきたので、お父さんからのプレゼント開けてみよう!」
「届いたの?」
「久しぶりだよね。大変なのかなあ」
父親の勝男が毎月プレゼントを贈ってくることが恒例になっている綿志賀家。
文明の利器が使えないような奥地へ入り込むと数か月何の連絡も無いことは多々ある。
「また箱に入っているよ?」
「あんまり期待したら駄目よ。糠喜びさせる天才なんだから」
「無事な証拠なんだから許してあげて」
時子もプレゼントが届いたことで一安心していたようだ。
そこに早貴の言葉は少々厳しかったらしい。
「そうだよお姉ちゃん。とにかく開けてみよ?」
早貴の隙を突いて香菜が箱を開けた。
「あ! 開けるのはアタシ!」
「いつもお姉ちゃんなんだから、たまにはいいでしょー」
開かれた箱の中には新聞紙に包まれたものと手紙が入っている。
新聞紙には何語か分からない文字が並んでいた。
「なんか前の時より大きいね」
「香菜が開けていいわよ」
「急にどうしたの? 開ける気だけど」
「何が出てくるか分からないじゃない」
覗き込む二人を後ろから眺めている時子は少し吹き笑いをしていた。
「それじゃあ開けまーす!」
新聞紙が剥がされてゆく。
「これ、重い……」
中から透明で山の字型の結晶が登場した。
「何これ?」
「水晶?」
姉妹が揃って振り返り、母親に聞く。
「見せて。……水晶、ね。でも偽物じゃないかしら」
「手紙読んでみるね」
『どうだ、母さんの様に綺麗だろ』
「……続きを読んでよ」
「……これだけ」
「はあ!?」
さすがに三人とも固まった。
「久しぶりのプレゼントがこれですか。いよいよ騙されていない? あの人」
「お姉ちゃん、お父さんに厳しいね」
「だって、こう、なんかさ、もうちょっとないの?」
綿志賀家に、不安の無い明るい日常が戻ってきた。
水晶を前に占い師の真似事をする香菜に付き合う早貴。
その姿を見てから時子は便せんを取りに夫の書斎へと向かった。
おまけ 完
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる