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第二章 剣士となりて
第三十三話 告白、それは悩ましい
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Szene-01 一番地区、武具屋
エールタイン達がルイーサへの謝罪に向かっている頃、ダンとヘルマは武具屋を訪れようとしていた。
武具屋は客の出入りが激しく、狭い路地は混雑していた。
「こりゃ凄いな」
ダンは前の者が進むのに合わせて、階段を一段ずつ上がりながら呟いた。
そんなダンの一段下にはヘルマがいる。
「武具屋の列……ですよね?」
「ああ。出入りするのが見える。閉店でもするのか?」
「まさか」
ヘルマはクスクスと笑いながら言う。
「あそこが閉店したらこの町の伝説になりますよ……そう考えるとあの武具屋って凄いですね」
「いやいや、あの店しか無いってだけだろ」
出入口が目の前だというのに進まないため、時間を持て余した二人の会話が弾む。
「ヘルマさん、今日もお綺麗ですね」
「ご主人様、失礼ですよ」
「だって綺麗な人だろ? お前もヘルマさんのようにならないか?」
「どういう意味ですか!?」
ダンと、剣聖に仕えるヘルマは有名人だ。
すれ違うデュオが声を掛けるのも珍しくない。
「おい、あいつら俺に挨拶は無いのか!?」
「あはは。ありませんでしたね」
「いや、ありませんでしたね、じゃないぞ。たとえ俺に挨拶があったとしてもだ、ヘルマが先に挨拶されるのはおかしいだろ。ヘルマはそう思わんのか?」
ヘルマは笑いを必死に堪えているようだが、笑い声が漏れている。
「く、はは、は。あ、ダン様入れますよ」
「お? ああ」
ダンが愚痴をこぼしているうちに武具屋に入る番となる。
ヘルマはこれ幸いとダンの背中を押して店の中へと入った。
Szene-02 ダン家
エールタイン達はルイーサからの告白をダン家に持ち帰っていた。
いや、ルイーサの代理であるヒルデガルドから伝えられたと言うべきか。
告白された当人のエールタインはいつも通りに振舞い、ティベルダはお冠だ。
ダン達を待つために暖炉前でくつろぐ二人にヨハナが話しかけた。
「あら、ティベルダはご機嫌斜めのようね。何かあったの?」
ヨハナに声を掛けられたティベルダは、脚をㇵの字にピンと伸ばし、その間に両手を入れて床についていた。
エールタインはティベルダを構いたそうにしているのだが、ティベルダのご機嫌が悪くて困っている。
「ルイーサの家からずっとこんな感じでさ。手は繋いでくれるんだけど、頭を撫でたり肩を抱いたりはさせてくれないんだ」
「エール様、いつもそんな風にして外を歩いているのですか?」
「いつもじゃないけど……時々。今はティベルダが落ち込んでいると思ってさ」
「そんな風にくっついて歩くデュオは見たことがないですね。目立つのでは?」
エールタインは、頬を膨らませているティベルダの顔をチラリと見てからヨハナに答えた。
「特に何も言われたこと無いよ。ボクが名前を呼ばれるのは相変わらずだけどね」
剣聖、それも英雄の子であるエールタインは、ダン達と同じく町で有名だ。
そのため、声を掛けられたり目線を向けられる事に慣れていて、何とも思わなくなっている。
「慣れというのは感覚を鈍らせる怖さがありますね。でも、それが人を率いる強さに繋がるのでしょうけれど」
ヨハナは妙に納得をした様子。
そんなヨハナの目の前では、エールタインがティベルダのご機嫌直しに苦労していた。
Szene-03 ルイーサ家
ヒルデガルドが主人の代わりにエールタインへの思いを伝えた後のルイーサ家。
その家の家主であるルイーサは椅子に座ったまま固まっていた。
「どうするのよ」
「どうと言われますと?」
ヒルデガルドは主人の助けが出来たと思っているのか、清々しい表情をしていた。
「これからどうすればいいのよ」
「あちらのお返事次第かと。ただ、エールタイン様はこの手のお話に疎いようでしたので、恐らくこちらがスッキリするようなお返事がもらえないと思われます」
ルイーサは首のみをヒルデガルドへ向けた。
「それでは恥ずかしい思いをしたままじゃないの!」
「恥ずかしくなんてありません。好きな人に思いを伝えたことはとても素敵です」
「伝えたのはヒルデだけど。これから会いにくくなったらどうするのよ」
「エールタイン様は恋に疎い。という事は押せば叶うと思うのです」
ヒルデガルドは自信ありげに拳を握ってみせる。
「なぜヒルデは自信満々なの? ティベルダもいるし、簡単とは思えないわ」
「ティベルダちゃんにも私が話します。何かしなければ先には進みません! ルイーサ様、これからはエールタイン様と一緒にブーズの件でご一緒するのです。いくらでもお近づきになれますよ!」
目を爛々と輝かせるヒルデガルドを見て、不安しか感じられないでいるルイーサであった。
エールタイン達がルイーサへの謝罪に向かっている頃、ダンとヘルマは武具屋を訪れようとしていた。
武具屋は客の出入りが激しく、狭い路地は混雑していた。
「こりゃ凄いな」
ダンは前の者が進むのに合わせて、階段を一段ずつ上がりながら呟いた。
そんなダンの一段下にはヘルマがいる。
「武具屋の列……ですよね?」
「ああ。出入りするのが見える。閉店でもするのか?」
「まさか」
ヘルマはクスクスと笑いながら言う。
「あそこが閉店したらこの町の伝説になりますよ……そう考えるとあの武具屋って凄いですね」
「いやいや、あの店しか無いってだけだろ」
出入口が目の前だというのに進まないため、時間を持て余した二人の会話が弾む。
「ヘルマさん、今日もお綺麗ですね」
「ご主人様、失礼ですよ」
「だって綺麗な人だろ? お前もヘルマさんのようにならないか?」
「どういう意味ですか!?」
ダンと、剣聖に仕えるヘルマは有名人だ。
すれ違うデュオが声を掛けるのも珍しくない。
「おい、あいつら俺に挨拶は無いのか!?」
「あはは。ありませんでしたね」
「いや、ありませんでしたね、じゃないぞ。たとえ俺に挨拶があったとしてもだ、ヘルマが先に挨拶されるのはおかしいだろ。ヘルマはそう思わんのか?」
ヘルマは笑いを必死に堪えているようだが、笑い声が漏れている。
「く、はは、は。あ、ダン様入れますよ」
「お? ああ」
ダンが愚痴をこぼしているうちに武具屋に入る番となる。
ヘルマはこれ幸いとダンの背中を押して店の中へと入った。
Szene-02 ダン家
エールタイン達はルイーサからの告白をダン家に持ち帰っていた。
いや、ルイーサの代理であるヒルデガルドから伝えられたと言うべきか。
告白された当人のエールタインはいつも通りに振舞い、ティベルダはお冠だ。
ダン達を待つために暖炉前でくつろぐ二人にヨハナが話しかけた。
「あら、ティベルダはご機嫌斜めのようね。何かあったの?」
ヨハナに声を掛けられたティベルダは、脚をㇵの字にピンと伸ばし、その間に両手を入れて床についていた。
エールタインはティベルダを構いたそうにしているのだが、ティベルダのご機嫌が悪くて困っている。
「ルイーサの家からずっとこんな感じでさ。手は繋いでくれるんだけど、頭を撫でたり肩を抱いたりはさせてくれないんだ」
「エール様、いつもそんな風にして外を歩いているのですか?」
「いつもじゃないけど……時々。今はティベルダが落ち込んでいると思ってさ」
「そんな風にくっついて歩くデュオは見たことがないですね。目立つのでは?」
エールタインは、頬を膨らませているティベルダの顔をチラリと見てからヨハナに答えた。
「特に何も言われたこと無いよ。ボクが名前を呼ばれるのは相変わらずだけどね」
剣聖、それも英雄の子であるエールタインは、ダン達と同じく町で有名だ。
そのため、声を掛けられたり目線を向けられる事に慣れていて、何とも思わなくなっている。
「慣れというのは感覚を鈍らせる怖さがありますね。でも、それが人を率いる強さに繋がるのでしょうけれど」
ヨハナは妙に納得をした様子。
そんなヨハナの目の前では、エールタインがティベルダのご機嫌直しに苦労していた。
Szene-03 ルイーサ家
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その家の家主であるルイーサは椅子に座ったまま固まっていた。
「どうするのよ」
「どうと言われますと?」
ヒルデガルドは主人の助けが出来たと思っているのか、清々しい表情をしていた。
「これからどうすればいいのよ」
「あちらのお返事次第かと。ただ、エールタイン様はこの手のお話に疎いようでしたので、恐らくこちらがスッキリするようなお返事がもらえないと思われます」
ルイーサは首のみをヒルデガルドへ向けた。
「それでは恥ずかしい思いをしたままじゃないの!」
「恥ずかしくなんてありません。好きな人に思いを伝えたことはとても素敵です」
「伝えたのはヒルデだけど。これから会いにくくなったらどうするのよ」
「エールタイン様は恋に疎い。という事は押せば叶うと思うのです」
ヒルデガルドは自信ありげに拳を握ってみせる。
「なぜヒルデは自信満々なの? ティベルダもいるし、簡単とは思えないわ」
「ティベルダちゃんにも私が話します。何かしなければ先には進みません! ルイーサ様、これからはエールタイン様と一緒にブーズの件でご一緒するのです。いくらでもお近づきになれますよ!」
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