ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活

沢鴨ゆうま

文字の大きさ
100 / 218
第三章 平和のための戦い

第三話 支度と休息

しおりを挟む
Szene-01 レアルプドルフ一番地区、武具屋

「そろそろじゃから、村の周囲監視を強化してくれ。人は配置しておるからいいたあ思うが。独断で村外へ出る者は、情報が漏れないよう捕獲して事情を聞く。内情を聞き出したら後は――任せる。それ以外は問答無用じゃ」
「監視は増員しておきます。忙しくなってきましたね」

 武具屋の店主と手下の束ね役は、店の奥で裏の動きについて打ち合わせをしていた。

「あの村なら簡単に落とせるが、あえて全力戦のつもりで動く。これは剣士だけでなく、民にも士気を感じてもらいたいからじゃ。この町にとって何が要なのか――町民全員で感じるいい機会だからの」

 束ね役は何度か小さくうなずくと、短剣を取り出して刃先を確かめた。

「そろそろ戻ります……次の報告んときに、こいつの手入れをお願いしやす」
「結構傷んでるじゃねえか。武具ってのはな、常に最高の状態で使うものじゃ。少し待ってろ」

 店主は束ね役から短剣を受け取ると、机の上に置く。
 ガラクタしか無いように見える物の山から、一本の短剣を取り出して束ね役に差し出した。

「手入れはしておいてやるから、それまでこいつを使いな。」
「……いい物ですね」

 束ね役は、少々不安げな表情でガラクタの山をチラ見しながら短剣を受け取った。
 店主は束ね役の不安を払拭する言葉をかける。

「安心しな……ちょいと見てみるといい」

 店主は親指を後ろに向けて、ガラクタの山を見るように促す。束ね役は言われるまま物の山へ近づくと、一部を退けてみた。

「こいつぁ――」
「納得したか? 上等品とまでは言わないが、上級剣士に昇格した剣士が置いて行った物。ちゃーんと手入れもしてある。絶えない修理依頼のためなんじゃ」
「剣を置いて行く人もいるんすね。持っておけばいいのに」
「人それぞれじゃよ。うちにしてみりゃありがてえしかないでな」

 束ね役は受け取った短剣を目の前に上げて、相変わらず独特な言い回しの店主に感謝の仕草をした。
 店主は片手を挙げてそれに答える。

「実のところ、お前たちの働きが重要だからのう。他の連中の装備も、くたびれている様なら持ってきな」
「助かります。そのように伝えておきやす」

Szene-02 レアルプドルフ、ダン家玄関外

 ダンからの報告を聞いたエールタインたちは、案の定といった様子であった。
 ルイーサは、次の行動に備えて休息と装備を整えるために帰宅する。

「それじゃあね、エールタイン。お疲れさま。あと――かっこよかったわ」

 すっかりお互いに身近な存在となり、エールタインから隔たり無く接してもらうようになったルイーサ。
 ブーズで感じていたエールタインへの印象を、勢いで伝えてしまった。

「そう? なんだか恥ずかしいよ。ルイーサこそ、ボクに付き合ってくれてありがと。ほんとに助かったよ」
「そんなこと……連携するデュオなのだから、一緒に仕事をするのは当然でしょ? これからも私とこなしていくのよ」

 ルイーサは頬を赤く染めながら、エールタインとの会話を楽しんでいる。
 横ではヒルデガルドがティベルダの様子を見ているが、思いのほか落ち着いていることにホッとしていた。
 ティベルダは、いつものように主人の腕に抱き着いて、従者らしからぬ状況だ。
 主人であるエールタインは、懐く従者と仲良くしてくれる剣士仲間のいることを喜んでいるよう。
 ルイーサは満足気にエールタインの笑顔を見ながら、ヒルデガルドと共に帰路に就いた。

「ボクたちも休もうか。ルイーサが帰ったら気が抜けたみたいだ。ティベルダ、一緒に寝ようよ」

 ティベルダは主人からの要望に即返答する。

「はい! 今日はヒールも少し使いますよ? きちんと回復しないといけませんから」
「うん、そうしてもらうね。それじゃ、ボクたちはとりあえず寝るよ。みんなお疲れさまー」

 あくびをしながらティベルダと共に自室へと向かうエールタイン。
 その背中を見ながらヨハナが言う。

「緊張しなくていい時間ですものね。ゆっくりしてもらいましょう」
「そうだな。次もあいつらにとっては初めての仕事になるわけだしな」

 そう言ってから、自室へ向かうダンに声を掛けるヘルマ。

「ダン様、お疲れさまでした。私は先に装備の方を終わらせてから休みます」
「おう」

 ダンのゆっくりとした足音が小さくなってゆく。
 その姿を見届けてからヨハナはヘルマに言った。

「それなら手伝おっか」

 ヨハナとヘルマは普段通りに二人での家内作業に取り掛かる。
 二人にとって、作業をしながらの大事な会話時間が始まるのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

処理中です...