3 / 30
第一章
焦る心 ベンジャミンside
しおりを挟む
「やめてくれ!もういい加減にしてくれ!」
「嫌よ、後一回!」
自分に全裸のまま絡みつくこの女を殺してしまいたい。相手が王弟の娘である公爵令嬢じゃなかったら今すぐに突き放してやるのにと何度思ったことか。
毎回毎回呼び出されて、情事に誘われる。もう何度目かもわからない。
最初は結婚前だった。媚薬を盛られいつの間にか事は済んでしまっていた。しかも、あろうことかこの女は乙女を自分に捧げてしまったのだ。こんな事がバレてしまえば、男爵家などひと捻りで取り潰し。そして、最愛のキャサリンと離婚することになってしまう。
伯爵家との婚姻の約束が、キャサリンに操を立てることだったのだ。歳が少し離れてることに危惧した前伯爵からの要望だった。それくらいの欲望も抑えられぬ男にキャサリンはやらぬという親心だ。
それは別に苦じゃなかった。キャサリンは可愛い。緩くウェーブが掛かった金色の髪も、夜空のような濃い藍色の瞳も。コロコロと変わる表情も。小さい頃は可愛いだけだったのに大人になるにつれて、艶めかしく育つ体に何度我慢をしたことか。
こんな細いだけが取り柄の女なんかに欲情するはずなかったんだ。それなのに…全部この女のせいで。
初夜の日に少しだけ仕事の話があると友人に呼び出されたらこの女が居た。あろう事か、自分を抱かなければ妻にバラすと脅され、仕方なく抱いた。何回も。
慌てて屋敷に戻って、キャサリンと初夜を迎えようとしたが…何度も吐き出してしまった自分の物は役に立つことはなかった。こんな屈辱はない。何年も待った日だったのに、やっと愛する女を抱ける待望の日だったのに…台無しにされたのだ。
それから何度もチャンスはあった。けれど、昼間にどこかしこに現れて抱けと要求されて、いつもキャシーとの夜は上手くいかなかった。きっと、キャサリンには不能だと思われている。
それだけは嫌だったから、この女が脅してこなかった万全の日にキャサリンを誘ったら、悲しそうな瞳で無理しないでと言われてしまった。
違う、そうじゃないんだと叫びたかった。けれど、すべてを話せば彼女は自分の元から離れていってしまう。そうなるともう閨の誘いは出来なくなって、キャサリンと距離が出来てしまった。
この泥沼のような状態が嫌で嫌で…誰か助けてくれと毎日心で叫び続ける。
「ベン、貴方ここが好きでしょ?」
もう把握され尽くしている体は、嫌でもこの女に反応を見せる。
また今日も彼女を抱けない。
こんなに恋焦がれているのに。
「嫌よ、後一回!」
自分に全裸のまま絡みつくこの女を殺してしまいたい。相手が王弟の娘である公爵令嬢じゃなかったら今すぐに突き放してやるのにと何度思ったことか。
毎回毎回呼び出されて、情事に誘われる。もう何度目かもわからない。
最初は結婚前だった。媚薬を盛られいつの間にか事は済んでしまっていた。しかも、あろうことかこの女は乙女を自分に捧げてしまったのだ。こんな事がバレてしまえば、男爵家などひと捻りで取り潰し。そして、最愛のキャサリンと離婚することになってしまう。
伯爵家との婚姻の約束が、キャサリンに操を立てることだったのだ。歳が少し離れてることに危惧した前伯爵からの要望だった。それくらいの欲望も抑えられぬ男にキャサリンはやらぬという親心だ。
それは別に苦じゃなかった。キャサリンは可愛い。緩くウェーブが掛かった金色の髪も、夜空のような濃い藍色の瞳も。コロコロと変わる表情も。小さい頃は可愛いだけだったのに大人になるにつれて、艶めかしく育つ体に何度我慢をしたことか。
こんな細いだけが取り柄の女なんかに欲情するはずなかったんだ。それなのに…全部この女のせいで。
初夜の日に少しだけ仕事の話があると友人に呼び出されたらこの女が居た。あろう事か、自分を抱かなければ妻にバラすと脅され、仕方なく抱いた。何回も。
慌てて屋敷に戻って、キャサリンと初夜を迎えようとしたが…何度も吐き出してしまった自分の物は役に立つことはなかった。こんな屈辱はない。何年も待った日だったのに、やっと愛する女を抱ける待望の日だったのに…台無しにされたのだ。
それから何度もチャンスはあった。けれど、昼間にどこかしこに現れて抱けと要求されて、いつもキャシーとの夜は上手くいかなかった。きっと、キャサリンには不能だと思われている。
それだけは嫌だったから、この女が脅してこなかった万全の日にキャサリンを誘ったら、悲しそうな瞳で無理しないでと言われてしまった。
違う、そうじゃないんだと叫びたかった。けれど、すべてを話せば彼女は自分の元から離れていってしまう。そうなるともう閨の誘いは出来なくなって、キャサリンと距離が出来てしまった。
この泥沼のような状態が嫌で嫌で…誰か助けてくれと毎日心で叫び続ける。
「ベン、貴方ここが好きでしょ?」
もう把握され尽くしている体は、嫌でもこの女に反応を見せる。
また今日も彼女を抱けない。
こんなに恋焦がれているのに。
110
あなたにおすすめの小説
白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話
鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。
彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。
干渉しない。触れない。期待しない。
それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに――
静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。
越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。
壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。
これは、激情ではなく、
確かな意思で育つ夫婦の物語。
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
【完結】貴方が好きなのはあくまでも私のお姉様
すだもみぢ
恋愛
伯爵令嬢であるカリンは、隣の辺境伯の息子であるデュークが苦手だった。
彼の悪戯にひどく泣かされたことがあったから。
そんな彼が成長し、年の離れたカリンの姉、ヨーランダと付き合い始めてから彼は変わっていく。
ヨーランダは世紀の淑女と呼ばれた女性。
彼女の元でどんどんと洗練され、魅力に満ちていくデュークをカリンは傍らから見ていることしかできなかった。
しかしヨーランダはデュークではなく他の人を選び、結婚してしまう。
それからしばらくして、カリンの元にデュークから結婚の申し込みが届く。
私はお姉さまの代わりでしょうか。
貴方が私に優しくすればするほど悲しくなるし、みじめな気持ちになるのに……。
そう思いつつも、彼を思う気持ちは抑えられなくなっていく。
8/21 MAGI様より表紙イラストを、9/24にはMAGI様の作曲された
この小説のイメージソング「意味のない空」をいただきました。
https://www.youtube.com/watch?v=L6C92gMQ_gE
MAGI様、ありがとうございます!
イメージが広がりますので聞きながらお話を読んでくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる