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婚約者 1
中庭でのお茶会の後から、カナデの心に広がってた不安は、少しずつ消えつつあった。
と同時に、レオンハルトの好意を素直に受け止められるようにもなっている。
彼は毎日のようにカナデの部屋を訪れる。これまでもそうだったのだが、カナデは「具合が悪い」とトアに言づて直接会うのは最低限に留めていた。
実際、レオンハルトに項を噛まれてから、軽い微熱は続いていたのだ。しかしそれも、今では落ちついている。
「カナデ、今日は君の話していた小説を持参したぞ」
「ありがとう……」
カナデの部屋には毎日香りの良い紅茶と、屋敷のパティシエが作るお菓子がレオンハルトの指示で用意される。
そしてカナデが少しでも興味を示すものがあれば、レオンハルトは必ずこうして持って来てくれ。
(こんなに至れり尽くせりでいいのか?竜人って番に執着するってトアが言ってたけど、だからなのか?)
自分の知るアルファ達も、ある意味カナデに執着はしていた。しかし見合いの席で聞かれるのは、ヒートの周期や子作りにどれほど興味があるかと言う内容ばかり。
オメガの勤めとして出産に関する事は習ったけれど、あからさまに聞かれるのは嫌だった。
しかしレオンハルトは、最初に強引な触れ合いこそしたが、今では人が変わったかのように触れようとはしない。
キスも中庭での一度きり。
手に触れたり抱きしめられることはあっても、カナデが少しでも身を固くするとすぐに体を離してくれる。
(これが本来のレオンハルト、なのかな)
前世の件も、本当はもう話すつもりはなかった。だけどレオンハルトから「恐ろしい夢は、口にすれば消える。と聞いた事がある。前世の出来事も、私に話すことで心が軽くなるのでは?」と言われて、カナデは気が向いた時だけ話すようになった。
やっぱり記憶は朧で内容も繰り返しになってしまう。なのにレオンハルトは退屈そうな顔もせず、いつも興味深げに聞いてくれる。
それがとても嬉しかった。
「……ところでレオンハルト。ずっと俺の側にいて、大丈夫なんですか? 公爵の仕事って、たぶん、すごく忙しいですよね」
レオンハルトは、そんなカナデを見てふっと微笑んだ。窓から差し込む陽光が彼の金髪に反射して、キラキラと輝く。
(物語の王子様そのままだ)
こんな立派な人が番だと意識すると、余計に直視できない。
「君の側にいることも、私の大事な務めだよ。それに、仕事は問題なく進めている。安心してほしい」
「でも……」
「でもの続きは、言わないで」
レオンハルトはゆっくりとカナデの唇に手を伸ばし、触れるか触れないかの距離でそっと言葉の続き止めた。
「君が側に居てくれて私は幸せなんだよ」
碧の瞳が、自分だけを映している。この人は本当に自分を番と思ってくれていると分かり、胸の奥が跳ねた。
(首筋が熱い)
耳まで真っ赤になったカナデは、無意識に項に手をやる。
「無理は、してない?」
「していないよ」
鼓動が早くなり、カナデは初めて己の心に芽生えた感情を直視した。
(……俺、レオンハルトのこと、好きなんだ)
胸の奥で、ゆっくりと感情が広がっていく。
怖くて、でも温かくて、彼の側にいたいと思える気持ち。
レオンハルトはそんなカナデの変化に気づいたのか微笑みを深めた。
「今日も君と過ごせて嬉しいよ、カナデ」
名前を呼ばれるだけで、心の中まで満たされていく。
返事がうまくできなくて、ただこくりと頷くしかなかった。
そんな穏やかに過ごす時間は、無粋なノックの音で終わりを告げる。
と同時に、レオンハルトの好意を素直に受け止められるようにもなっている。
彼は毎日のようにカナデの部屋を訪れる。これまでもそうだったのだが、カナデは「具合が悪い」とトアに言づて直接会うのは最低限に留めていた。
実際、レオンハルトに項を噛まれてから、軽い微熱は続いていたのだ。しかしそれも、今では落ちついている。
「カナデ、今日は君の話していた小説を持参したぞ」
「ありがとう……」
カナデの部屋には毎日香りの良い紅茶と、屋敷のパティシエが作るお菓子がレオンハルトの指示で用意される。
そしてカナデが少しでも興味を示すものがあれば、レオンハルトは必ずこうして持って来てくれ。
(こんなに至れり尽くせりでいいのか?竜人って番に執着するってトアが言ってたけど、だからなのか?)
自分の知るアルファ達も、ある意味カナデに執着はしていた。しかし見合いの席で聞かれるのは、ヒートの周期や子作りにどれほど興味があるかと言う内容ばかり。
オメガの勤めとして出産に関する事は習ったけれど、あからさまに聞かれるのは嫌だった。
しかしレオンハルトは、最初に強引な触れ合いこそしたが、今では人が変わったかのように触れようとはしない。
キスも中庭での一度きり。
手に触れたり抱きしめられることはあっても、カナデが少しでも身を固くするとすぐに体を離してくれる。
(これが本来のレオンハルト、なのかな)
前世の件も、本当はもう話すつもりはなかった。だけどレオンハルトから「恐ろしい夢は、口にすれば消える。と聞いた事がある。前世の出来事も、私に話すことで心が軽くなるのでは?」と言われて、カナデは気が向いた時だけ話すようになった。
やっぱり記憶は朧で内容も繰り返しになってしまう。なのにレオンハルトは退屈そうな顔もせず、いつも興味深げに聞いてくれる。
それがとても嬉しかった。
「……ところでレオンハルト。ずっと俺の側にいて、大丈夫なんですか? 公爵の仕事って、たぶん、すごく忙しいですよね」
レオンハルトは、そんなカナデを見てふっと微笑んだ。窓から差し込む陽光が彼の金髪に反射して、キラキラと輝く。
(物語の王子様そのままだ)
こんな立派な人が番だと意識すると、余計に直視できない。
「君の側にいることも、私の大事な務めだよ。それに、仕事は問題なく進めている。安心してほしい」
「でも……」
「でもの続きは、言わないで」
レオンハルトはゆっくりとカナデの唇に手を伸ばし、触れるか触れないかの距離でそっと言葉の続き止めた。
「君が側に居てくれて私は幸せなんだよ」
碧の瞳が、自分だけを映している。この人は本当に自分を番と思ってくれていると分かり、胸の奥が跳ねた。
(首筋が熱い)
耳まで真っ赤になったカナデは、無意識に項に手をやる。
「無理は、してない?」
「していないよ」
鼓動が早くなり、カナデは初めて己の心に芽生えた感情を直視した。
(……俺、レオンハルトのこと、好きなんだ)
胸の奥で、ゆっくりと感情が広がっていく。
怖くて、でも温かくて、彼の側にいたいと思える気持ち。
レオンハルトはそんなカナデの変化に気づいたのか微笑みを深めた。
「今日も君と過ごせて嬉しいよ、カナデ」
名前を呼ばれるだけで、心の中まで満たされていく。
返事がうまくできなくて、ただこくりと頷くしかなかった。
そんな穏やかに過ごす時間は、無粋なノックの音で終わりを告げる。
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