22 / 25
婚約者 1
しおりを挟む
中庭でのお茶会の後から、カナデの心に広がってた不安は、少しずつ消えつつあった。
と同時に、レオンハルトの好意を素直に受け止められるようにもなっている。
彼は毎日のようにカナデの部屋を訪れる。これまでもそうだったのだが、カナデは「具合が悪い」とトアに言づて直接会うのは最低限に留めていた。
実際、レオンハルトに項を噛まれてから、軽い微熱は続いていたのだ。しかしそれも、今では落ちついている。
「カナデ、今日は君の話していた小説を持参したぞ」
「ありがとう……」
カナデの部屋には毎日香りの良い紅茶と、屋敷のパティシエが作るお菓子がレオンハルトの指示で用意される。
そしてカナデが少しでも興味を示すものがあれば、レオンハルトは必ずこうして持って来てくれ。
(こんなに至れり尽くせりでいいのか?竜人って番に執着するってトアが言ってたけど、だからなのか?)
自分の知るアルファ達も、ある意味カナデに執着はしていた。しかし見合いの席で聞かれるのは、ヒートの周期や子作りにどれほど興味があるかと言う内容ばかり。
オメガの勤めとして出産に関する事は習ったけれど、あからさまに聞かれるのは嫌だった。
しかしレオンハルトは、最初に強引な触れ合いこそしたが、今では人が変わったかのように触れようとはしない。
キスも中庭での一度きり。
手に触れたり抱きしめられることはあっても、カナデが少しでも身を固くするとすぐに体を離してくれる。
(これが本来のレオンハルト、なのかな)
前世の件も、本当はもう話すつもりはなかった。だけどレオンハルトから「恐ろしい夢は、口にすれば消える。と聞いた事がある。前世の出来事も、私に話すことで心が軽くなるのでは?」と言われて、カナデは気が向いた時だけ話すようになった。
やっぱり記憶は朧で内容も繰り返しになってしまう。なのにレオンハルトは退屈そうな顔もせず、いつも興味深げに聞いてくれる。
それがとても嬉しかった。
「……ところでレオンハルト。ずっと俺の側にいて、大丈夫なんですか? 公爵の仕事って、たぶん、すごく忙しいですよね」
レオンハルトは、そんなカナデを見てふっと微笑んだ。窓から差し込む陽光が彼の金髪に反射して、キラキラと輝く。
(物語の王子様そのままだ)
こんな立派な人が番だと意識すると、余計に直視できない。
「君の側にいることも、私の大事な務めだよ。それに、仕事は問題なく進めている。安心してほしい」
「でも……」
「でもの続きは、言わないで」
レオンハルトはゆっくりとカナデの唇に手を伸ばし、触れるか触れないかの距離でそっと言葉の続き止めた。
「君が側に居てくれて私は幸せなんだよ」
碧の瞳が、自分だけを映している。この人は本当に自分を番と思ってくれていると分かり、胸の奥が跳ねた。
(首筋が熱い)
耳まで真っ赤になったカナデは、無意識に項に手をやる。
「無理は、してない?」
「していないよ」
鼓動が早くなり、カナデは初めて己の心に芽生えた感情を直視した。
(……俺、レオンハルトのこと、好きなんだ)
胸の奥で、ゆっくりと感情が広がっていく。
怖くて、でも温かくて、彼の側にいたいと思える気持ち。
レオンハルトはそんなカナデの変化に気づいたのか微笑みを深めた。
「今日も君と過ごせて嬉しいよ、カナデ」
名前を呼ばれるだけで、心の中まで満たされていく。
返事がうまくできなくて、ただこくりと頷くしかなかった。
そんな穏やかに過ごす時間は、無粋なノックの音で終わりを告げる。
と同時に、レオンハルトの好意を素直に受け止められるようにもなっている。
彼は毎日のようにカナデの部屋を訪れる。これまでもそうだったのだが、カナデは「具合が悪い」とトアに言づて直接会うのは最低限に留めていた。
実際、レオンハルトに項を噛まれてから、軽い微熱は続いていたのだ。しかしそれも、今では落ちついている。
「カナデ、今日は君の話していた小説を持参したぞ」
「ありがとう……」
カナデの部屋には毎日香りの良い紅茶と、屋敷のパティシエが作るお菓子がレオンハルトの指示で用意される。
そしてカナデが少しでも興味を示すものがあれば、レオンハルトは必ずこうして持って来てくれ。
(こんなに至れり尽くせりでいいのか?竜人って番に執着するってトアが言ってたけど、だからなのか?)
自分の知るアルファ達も、ある意味カナデに執着はしていた。しかし見合いの席で聞かれるのは、ヒートの周期や子作りにどれほど興味があるかと言う内容ばかり。
オメガの勤めとして出産に関する事は習ったけれど、あからさまに聞かれるのは嫌だった。
しかしレオンハルトは、最初に強引な触れ合いこそしたが、今では人が変わったかのように触れようとはしない。
キスも中庭での一度きり。
手に触れたり抱きしめられることはあっても、カナデが少しでも身を固くするとすぐに体を離してくれる。
(これが本来のレオンハルト、なのかな)
前世の件も、本当はもう話すつもりはなかった。だけどレオンハルトから「恐ろしい夢は、口にすれば消える。と聞いた事がある。前世の出来事も、私に話すことで心が軽くなるのでは?」と言われて、カナデは気が向いた時だけ話すようになった。
やっぱり記憶は朧で内容も繰り返しになってしまう。なのにレオンハルトは退屈そうな顔もせず、いつも興味深げに聞いてくれる。
それがとても嬉しかった。
「……ところでレオンハルト。ずっと俺の側にいて、大丈夫なんですか? 公爵の仕事って、たぶん、すごく忙しいですよね」
レオンハルトは、そんなカナデを見てふっと微笑んだ。窓から差し込む陽光が彼の金髪に反射して、キラキラと輝く。
(物語の王子様そのままだ)
こんな立派な人が番だと意識すると、余計に直視できない。
「君の側にいることも、私の大事な務めだよ。それに、仕事は問題なく進めている。安心してほしい」
「でも……」
「でもの続きは、言わないで」
レオンハルトはゆっくりとカナデの唇に手を伸ばし、触れるか触れないかの距離でそっと言葉の続き止めた。
「君が側に居てくれて私は幸せなんだよ」
碧の瞳が、自分だけを映している。この人は本当に自分を番と思ってくれていると分かり、胸の奥が跳ねた。
(首筋が熱い)
耳まで真っ赤になったカナデは、無意識に項に手をやる。
「無理は、してない?」
「していないよ」
鼓動が早くなり、カナデは初めて己の心に芽生えた感情を直視した。
(……俺、レオンハルトのこと、好きなんだ)
胸の奥で、ゆっくりと感情が広がっていく。
怖くて、でも温かくて、彼の側にいたいと思える気持ち。
レオンハルトはそんなカナデの変化に気づいたのか微笑みを深めた。
「今日も君と過ごせて嬉しいよ、カナデ」
名前を呼ばれるだけで、心の中まで満たされていく。
返事がうまくできなくて、ただこくりと頷くしかなかった。
そんな穏やかに過ごす時間は、無粋なノックの音で終わりを告げる。
14
あなたにおすすめの小説
ひとりぼっちの嫌われ獣人のもとに現れたのは運命の番でした
angel
BL
目に留めていただき有難うございます!
姿を見るだけで失禁するほどに恐ろしい真っ黒な獣人。
人々に嫌われ恐れられ山奥にただ一人住んでいた獣人のもとに突然現れた真っ白な小さな獣人の子供。
最初は警戒しながらも、次第に寄り添いあい幸せに暮らはじめた。
後悔しかなかった人生に次々と幸せをもたらしてくれる小さな獣人との平和な暮らしが、様々な事件に巻き込まれていき……。
最後はハッピーエンドです!
【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中
虎ノ威きよひ
BL
ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。
カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。
家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。
そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。
この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。
※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳)
※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。
※同性婚が認められている世界観です。
【完結】僕の匂いだけがわかるイケメン美食家αにおいしく頂かれてしまいそうです
grotta
BL
【嗅覚を失った美食家α×親に勝手に婚約者を決められたΩのすれ違いグルメオメガバース】
会社員の夕希はブログを書きながら美食コラムニストを目指すスイーツ男子。αが嫌いで、Ωなのを隠しβのフリをして生きてきた。
最近グルメ仲間に恋人ができてしまい一人寂しくホテルでケーキを食べていると、憧れの美食評論家鷲尾隼一と出会う。彼は超美形な上にα嫌いの夕希でもつい心が揺れてしまうほどいい香りのフェロモンを漂わせていた。
夕希は彼が現在嗅覚を失っていること、それなのになぜか夕希の匂いだけがわかることを聞かされる。そして隼一は自分の代わりに夕希に食レポのゴーストライターをしてほしいと依頼してきた。
協力すれば美味しいものを食べさせてくれると言う隼一。しかも出版関係者に紹介しても良いと言われて舞い上がった夕希は彼の依頼を受ける。
そんな中、母からアルファ男性の見合い写真が送られてきて気分は急降下。
見合い=28歳の誕生日までというタイムリミットがある状況で夕希は隼一のゴーストライターを務める。
一緒に過ごしているうちにαにしては優しく誠実な隼一に心を開いていく夕希。そして隼一の家でヒートを起こしてしまい、体の関係を結んでしまう。見合いを控えているため隼一と決別しようと思う夕希に対し、逆に猛烈に甘くなる隼一。
しかしあるきっかけから隼一には最初からΩと寝る目的があったと知ってしまい――?
【受】早瀬夕希(27歳)…βと偽るΩ、コラムニストを目指すスイーツ男子。α嫌いなのに母親にαとの見合いを決められている。
【攻】鷲尾準一(32歳)…黒髪美形α、クールで辛口な美食評論家兼コラムニスト。現在嗅覚異常に悩まされている。
※東京のデートスポットでスパダリに美味しいもの食べさせてもらっていちゃつく話です♡
※第10回BL小説大賞に参加しています
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ラスボス推しなので! 魔王の破滅フラグ折って溺愛されます!??
モト
BL
ゲーマーである“ホツ”は、大ハマリ中のオンラインゲーム内に召喚されてしまう。推しであるラスボスに出会い、切磋琢磨、彼の破滅フラグを折ろうとする。……が、如何せんホツはただの一般人。魔法も使えなければ、家が大好きなただのゲーマー。体力もあまりない。
推しからはすぐに嫁認定されます。
推しに推されて??モフモフ……ふぁわ、ねこちゃん……モフモフ…………。
不憫なラスボスの境遇、破滅フラグを折る為にホツがしてきたことは。
何故、ホツは楽観的なのにひたすらに彼を守ろうとするのか、違和感はラストに。ムーンライトノベルズでも投稿しております。
一日2回更新です
世界が僕に優しくなったなら、
熾ジット
BL
「僕に番なんていない。僕を愛してくれる人なんて――いないんだよ」
一方的な番解消により、体をおかしくしてしまったオメガである主人公・湖川遥(こがわはる)。
フェロモンが安定しない体なため、一人で引きこもる日々を送っていたが、ある日、見たことのない場所――どこかの森で目を覚ます。
森の中で男に捕まってしまった遥は、男の欲のはけ口になるものの、男に拾われ、衣食住を与えられる。目を覚ました場所が異世界であると知り、行き場がない遥は男と共に生活することになった。
出会いは最悪だったにも関わらず、一緒に暮らしていると、次第に彼への見方が変わっていき……。
クズ男×愛されたがりの異世界BLストーリー。
【この小説は小説家になろうにも投稿しています】
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる