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体の価値 1
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柔らかな寝具に包まれて、カナデはぼんやりと目を開けた。
寝かされているのは天蓋付きの大きなベッド。
(あのホテルじゃない?)
上体を起こして周囲を見回すと、ベッドサイドに置かれた椅子に座り自分を見つめるレオンハルトと視線が合わさった。
「っ!」
「おはよう、カナデ」
腰の近くまで伸ばされた金色の髪は優雅なウエーブを描き、碧の瞳は宝石のように輝いている。全てのパーツが完璧で、本当にこんな人間が存在しているのが不思議なほどだ。
にこりと微笑むレオンハルトは、やはり常人離れした美しさだ。
(俺、本当にこの人に噛まれたのか?)
体は軽い熱に包まれていて、特に首筋の辺りがじんじんと疼いているから現実なのだろう。
正直今でも信じられない。カナデは自他共に認める平凡な容姿の持ち主だ。
平民出のオメガにありがちな、黒髪と黒目。男爵家で最低限の身なりは整えられていたが、それでも貴族のオメガと比べれば髪も肌もくすんでいる。
玩具として買ったのなら、噛まずに性行為をすればいいのだし、公爵である彼にはその特権があることも理解していた。
自分はあの部屋でなぶり殺されてもなんらおかしくなかったのに。何故ここで肌触りの良いパジャマに包まれて眠っていたのか、さっぱり訳がわからない。
「あの、ここは……?」
「私の屋敷だよ。君が番契約の途中で気絶したので、こちらへ運んだ」
彼は椅子に腰掛けたまま、優雅に紅茶を飲んでいる。
「…すみません……」
「なぜ謝る?」
レオンハルトはカップを置き、カナデに視線を向けた。と同時に碧の瞳が竜人特有の縦長の瞳孔へと変化する。
(竜人……っ)
公爵なのだから獣人であるのは予想していたが、まさか獣人の中でも更に特別な地位にある竜人だとは思いもしなかった。
「え……」
驚きに声が漏れた。
「この通り、私は竜人だよ」
カナデが竜人と認識したと理解したのか、瞳が人間のそれに戻る。基本的に獣人は、その強い魔力で無意識に本性である獣の部分を消している。
獣人同士であれば本性は分かるらしいが、人間は魔力が弱いので見抜くことはまずできない。
我に返ったカナデはベッドから転げ出ると、床に座って頭を下げる。
「俺、行くところがないんです。ご存じとは思いますが、男爵家は俺を籍から抜きました。社会的にも、俺はもう生きていけません。……何でもしますから、どうか働かせてください」
必死の願いだった。
どういう気紛れか、自分は生かされている。彼の考えが変わらないうちに、最低限の生きる道をつかみ取らなくてはならない。
そんなカナデの気持ちを知ってか知らずか、レオンハルトがゆっくりと笑って、言った。
「困ったね」
(やっぱり駄目か)
目の前が真っ暗になるような感覚。……と、次の瞬間両脇を抱えられ、カナデはレオンハルトの膝に乗せられた。
横抱きにされたカナデに、レオンハルトが顔を寄せる。
「私の「番」に、そんなことはさせられないよ」
「……番?」
「そう。君は私の番だ。だから君が何をするか、私が決める。働く必要なんてない」
「でも俺……出来損ないですよ? フェロモンも匂わないし、妊娠だって……」
「関係ない」
きっぱりと断言され、カナデは言葉を失う。
寝かされているのは天蓋付きの大きなベッド。
(あのホテルじゃない?)
上体を起こして周囲を見回すと、ベッドサイドに置かれた椅子に座り自分を見つめるレオンハルトと視線が合わさった。
「っ!」
「おはよう、カナデ」
腰の近くまで伸ばされた金色の髪は優雅なウエーブを描き、碧の瞳は宝石のように輝いている。全てのパーツが完璧で、本当にこんな人間が存在しているのが不思議なほどだ。
にこりと微笑むレオンハルトは、やはり常人離れした美しさだ。
(俺、本当にこの人に噛まれたのか?)
体は軽い熱に包まれていて、特に首筋の辺りがじんじんと疼いているから現実なのだろう。
正直今でも信じられない。カナデは自他共に認める平凡な容姿の持ち主だ。
平民出のオメガにありがちな、黒髪と黒目。男爵家で最低限の身なりは整えられていたが、それでも貴族のオメガと比べれば髪も肌もくすんでいる。
玩具として買ったのなら、噛まずに性行為をすればいいのだし、公爵である彼にはその特権があることも理解していた。
自分はあの部屋でなぶり殺されてもなんらおかしくなかったのに。何故ここで肌触りの良いパジャマに包まれて眠っていたのか、さっぱり訳がわからない。
「あの、ここは……?」
「私の屋敷だよ。君が番契約の途中で気絶したので、こちらへ運んだ」
彼は椅子に腰掛けたまま、優雅に紅茶を飲んでいる。
「…すみません……」
「なぜ謝る?」
レオンハルトはカップを置き、カナデに視線を向けた。と同時に碧の瞳が竜人特有の縦長の瞳孔へと変化する。
(竜人……っ)
公爵なのだから獣人であるのは予想していたが、まさか獣人の中でも更に特別な地位にある竜人だとは思いもしなかった。
「え……」
驚きに声が漏れた。
「この通り、私は竜人だよ」
カナデが竜人と認識したと理解したのか、瞳が人間のそれに戻る。基本的に獣人は、その強い魔力で無意識に本性である獣の部分を消している。
獣人同士であれば本性は分かるらしいが、人間は魔力が弱いので見抜くことはまずできない。
我に返ったカナデはベッドから転げ出ると、床に座って頭を下げる。
「俺、行くところがないんです。ご存じとは思いますが、男爵家は俺を籍から抜きました。社会的にも、俺はもう生きていけません。……何でもしますから、どうか働かせてください」
必死の願いだった。
どういう気紛れか、自分は生かされている。彼の考えが変わらないうちに、最低限の生きる道をつかみ取らなくてはならない。
そんなカナデの気持ちを知ってか知らずか、レオンハルトがゆっくりと笑って、言った。
「困ったね」
(やっぱり駄目か)
目の前が真っ暗になるような感覚。……と、次の瞬間両脇を抱えられ、カナデはレオンハルトの膝に乗せられた。
横抱きにされたカナデに、レオンハルトが顔を寄せる。
「私の「番」に、そんなことはさせられないよ」
「……番?」
「そう。君は私の番だ。だから君が何をするか、私が決める。働く必要なんてない」
「でも俺……出来損ないですよ? フェロモンも匂わないし、妊娠だって……」
「関係ない」
きっぱりと断言され、カナデは言葉を失う。
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