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第3話【ある小さな絵描きさん】(1)

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~そして今~

例の豪雨でびしょびしょになった。
私達は住み処へ帰り、濡れた体を乾かしていた。

雨は全てを洗い流してくれる気がした。
嫌なことも、目を背けるんじゃなくて
なんかこう......心が洗われるというか。

小さな椅子に座らせ、私はあぐらをかきながら、
濡れたミフィレンの髪の毛を乾かしてる最中だ。
髪の毛がもしゃもしゃだったのが雨でサラサラになっていた。
背中の傷は、消毒し応急措置で魔法で炙った。
凄まじい痛みだったが、心配している顔を見て少しでも励まそうと笑って乗り切ってやった。
私以外誰も傷つかなくてよかったよ。

ミフィレンが取ってきてくれた小さな花はあとでネックレスにするとして、さてどうしたものか......

そんな考えの私を他所に、地面に落書きをしていた。
鼻歌混じりで地面を指でなぞっていた。

小さな肩に顔をのせ絵を見つめる。
夢中で絵を見つめるその顔は幼いせいも相まってか私には勿体ない位キラキラ光っていた。

「ニッシャ!これニッシャ!」

指を指したその先には芸術とかそこらへんの感性が皆無なもんで、人らしきなにかが描かれていた。

うちの子は発育がいいし、感性も優れているとかなんとか
親みたいな気持ちになった。

(私にも、子どもがいたらこんな感じなのかな......)

「おー良くできたね。ミフィレン!......私こんな感じに見えるか?」

顔を伺いながらその横のを指す

どうみても、私の等身がおかしかったり
自分で言うのもなんだが、長さが自慢の足が3本あったり、毎日の手入れで光沢があり痛みには無縁な朱髪の毛はしまいには1本だったりしてた。
それと、決して実物は裸ではない断じてない。
そんなことはいいとして少し不思議なのは、私の後ろにモヤモヤみたいのが有ったこと位だがその場は黙っていた。

その横に指を向ける、小さな人らしきものが描かれていた
2つの絵は同じように笑っていた。
口が裂けるほどの笑顔だった

「じゃあこれはミフィレンだね!」

私は目を合わせ描いた絵の様にニッコリと笑う

「そうだよ、可愛いでしょ?」

それに釣られ満面の笑みで返す。

いつもと変わらず笑い声が響き渡る。

(あー......幸せだなぁ)
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