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第21話【強者の特権】(1)

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【応接室内部】

協会人並びに一般人は、避難所にて待機しあとはニッシャ含む6人だけが残された。

広い応接室には静寂さと煙草の匂いが織り混ざりガラス張りの机には山ほどの吸い殻と一杯の珈琲が置かれている。
人の声がしない部屋では、時を刻む針だけが正確なリズムで動く音がした。

珈琲を一口含み、その苦味を噛みしめ、男は物思いにふける。
ニッシャに抱かれたミフィレンが映るホログラムを見つめ深いため息をする。

「奴も、あれ以来変わってしまったな......ここを出て会うのは、実に5年ぶりといったところか。あのニッシャが今や「子」を連れ歩くとは、人というのはわからんな」

「ごそごそ」とポケットから、小さなロケットを取り出す。

「パチンッ」と金属音がし、中には若かりし、「前部隊長」と「老年の男」が笑みを浮かべて肩を組み、ニッシャはその前で頬杖を付きながら寝そべっていた。
懐かしそうに、写真を指でなぞる。

「なぁ「前部隊長」お前が、手塩にかけて育てた弟子は元気だぞ」

そう、小さく言い残し、ポケットへ戻し入れる。

両脇の護衛達には、過去を追想し肩を震わせる男の背中が映っていた。
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