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第22話【強者の特権】(2)

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【協会内部広場】

俺は、夢を見た。それは遠い記憶のまだ幼き頃の自分を見ている。
平凡な家庭で過ごし、何の変哲もない生活を過ごしていた。
形が様々な「点」が不恰好ぶかっこうながら、
互いに手を取り合い、日々少しずつ重なり混じりあい、その繋がりが大きな1つの「輪」となる。
何て事ない事だが、遠い遠い記憶のようなどこか「ほんのり」と心が温かくなるような。

「ほんのり」にしては......熱い?

「うおぉぉ!!」と勢い良く飛び起きる。

(熱ちちちちっ!!?)

顔を起こすと、小さな子犬タイニードックがノーメンの胸辺りで「スヤスヤ」と寝息をたてながら丸くなっている。

魔力を大量に吸収&放出したことにより、体温が通常の炎と同程度になっているためお気に入りの服が焦げていた。
起こさぬように、両の手ですくいあげ、そのまま手のひら同士を合わせる。
「シュッン」、と消えた小さな命。
手には温もりヤケドだけが残されていた。
(これで、ヨシッ!!と......あれから、しばらく眠ってしまったが外はどうなっているのやら)
体を起こし、砂埃すなぼこりを叩き落とす。
顔ほどにも立ち上るあまりの量に「ゴホゴホッ」と咳き込んでしまった。
その勢いのせいか、ふところから「ヒラヒラ」と小さな封筒ふうとう1枚が眼前を飛んでいる。
不器用なため掴み損じたが、ようやく中身を確認する。
これが、【達筆】かと思えるほど美しく気品さえ感じられる文字でこう書かれている。
依頼書クエスト以外、誰からももらった事ないラブレター意気揚々いきようようとする。
小さな鼻歌がお面越しから聞こえる。

封を切り、中身を取り出す。

ノーメンへ
【眠っているだけでなにもしてないみたいだから、罰として今度1発殴らせろ。あとお前の事気に入っているみたいだからその子犬タイニードックはお前にやるよ。p.s.追伸支払いよろしくな】

ニッシャより


(支払いか......嫌な気がするな)

胸ポケットには、分厚い紙束が入れられていた。
それを広げると、ノーメンの身長並みに長~い紙が地面「スレスレ」な程、伸びていった。


拝啓
〔ノーメン様〕

この度は、ご利用誠にありがとうございました。

【宿泊代】
大人3万G×1+小人2万G×1=5万G

【洋服代】
黒いドレス特注耐熱仕様+蒼&金特注の子ども服ふわふわ仕様=30万G

【清掃代】
ベット動物の毛がクリーニン付着してング代いたため3万G

【食事代】
3ツ星シェフの特製お子さまセット×1=8万G
最高級お任せフルコース×1=12万G

【その他雑費】
アクセサリー加工代金×1=7万G


計65万G

またのご利用お待ちしております。

「ドンッ!!」という音と共に、膝から崩れ落ち、落胆するその姿は天上から照らされる光と上品ささえある砂埃が相まってか、まるで1つの芸術品のようだった。
後に【燃え尽きる魂】として、協会に銅像が建てられる程絶大な人気を得るのだがそれは後の話となる。
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