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第36【その男危険につき】(3)

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期待外れと言わんばかりに目が「ポカーン」となる。
 「こんなのに、負けちゃったか~まぁどうでもいいか」

男の指は、音速を超え寝ながら放たれる魔法の名は、

【level1-風災嵐壊ふうさいらんかい

螺旋状にとどろく一陣の風は、地面や柱材などを巻き込み、その剛腕から投擲とうてきされた刀を失速させ、柄の部分で兜武者を押し返しながらその身に突き刺さる。

「ぬおおおおぉぉ!!」

セリエの人差し指から放たれた、見た目からは想像出来ないほどの狂風きょうふうとなり、その声を相殺させ、堪らず両手で刀を抑え込み、両足は地面を掴めず、羽で無理やり前進するが、当然その体はあらがう事が出来ず上空へ飛ばされ、魔法壁マジックウォールを突き破りどこかへ行ってしまった。

「あー。一個言うけどさ、アイツらは強いよ?特に女の方は手が付けられない程だからさ......ってもういないか」

「クスクス」と笑うその眼前には、亡き天井から射し込める光の温かさと嵐の後の静けさも相まってか「ポカポカ」陽気に包まれた男は眠りについた。
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