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Side 木田
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ここは…どこ?
人々が行き交う駅の構内で、背の高い木田は呆然と立ち尽くしていた。
特急の終着駅を降り、地下鉄に乗り換えようと、とりあえず下へ続く階段を降りてきた。でも…なんだ?ここは…アリの巣?
名古屋にも地下鉄はあったし、長い地下商店街もあった。人通りもそれなり。だけど…ここは人がウジャウジャいる。幸い長身の木田には先の方まで見渡せるが、見えたところでどこへ行っていいのかわからない。
新宿駅は初めてじゃなかった。以前一度だけ友人と一緒に来たことがある。ただ、新宿区民だった彼の背中を追っていただけなので、経験値は上がっていなかった。
仕方なく地上に出てみようと、列車を降りたホームに戻り、そこから上へ向う階段を上がった。
???…線路は地上にあるはずで、そこから階段を上ってきたのに…改札の向こうは車が走っている。そして道の向こうにも改札が…どういうこと?
帰ろうかな…と、木田は思った。予定通り地元で就職先を探した方が無難だ。こんなところじゃ生きていけない…
でも、生真面目な木田の辞書にドタキャンという文字はなかった。沈没しそうになりながらも、一応指示された場所に向おうと、もう一度地下へ降りた。
木田だって迷うであろうことは予想していた。だから家を出る前にネットで目的地までの行き方をきちんと調べてきた。特急を降りたら大江戸線に乗り換える。わかってる。そんなことはわかってる。問題はその大江戸線とやらにどこで乗るかだ。
もちろんスマホも持っている。地図アプリも入ってる。入ってるし見てる。見てるんだ。だけど指示どおりの場所を右に曲がったはずが、少しタイミングがずれていたらしい。
スマホさんは文句も言わずに何度も経路を修正してくれた。それに従って、いや従えてないからか、同じエリアをグルグル回るみたいになって現在に至る。
地下鉄とJRは別会社だろうからと、とりあえず改札を出た。そして一応案内表示のようなものがあるので、それに従いつつ、スマホも確認しつつ歩いていく。
でもしかし。
案内表示だけを見て歩いていると、どんどん人にぶつかってしまう。スマホを見ていても以下同文。仕方なく人を避けていると、そっちに気を取られて自分が今どこを歩いているのかわからなくなった。
スマホの画面には現在地が表示されているけれど、自分が立っているこの場所は果たして画面上の現在地と同じ場所なのか?
大西洋の真ん中に置き去りにされた気分で突っ立っていると、何度も人がぶつかっていった。
「デカいくせに突っ立ってんじゃねぇよ」
「何これ」
「邪魔」
人々が木田に容赦なくダメージを加えていく。
もうダメだ…水谷さんに電話して辞退させてもらおう。大海原に沈み行く木田が芸能事務所のマネージャーだという男に電話しようとしたところ、誰かがポンと肩を叩いた。
「大丈夫ですか?」
振り向くとそこには救世主が立っていた。
美しい…その顔を見た木田は言葉を失った。
筋の通った美しい鼻に、二重で大きめの美しい目。瞳は美しいダークブラウンで、ピンクの唇は少し厚くてちょうどいい美しい形をしている。栗色の美しいマッシュヘア。白く滑らかな美しい肌。
明らかに男性なのに、木田のボキャブラリーでは美しいとしか表現のしようがなかった。
「あの…道に迷われてるんじゃ?」
美しさに目を奪われ、何も答えない木田に男性はいぶかしげに訊いた。
「え、あ、はい。大江戸線というのに乗りたいんですが…」
「ああ。ではご案内します」
美しい男性は木田の先に立って歩き始めた。
身長は木田よりも10センチぐらい低い。ほっそりしているけど、肩にはきちんと筋肉がついている。高い腰の位置。優雅な歩き方。木田は男性の後ろを、取り憑かれたようにフラフラと追った。
待てよ。大西洋の真ん中に現われた美しいモンスター。その歌声に惑わされ死に向う船人。まさにあの美しさは人間ではない。俺、難破船になるのかな?なんて言ったけ、そういう怪物の名前…
幸か不幸か、男性は救世主でもなくモンスターでもなかった。
「ここで切符を買って、改札はそこです」
普通に人間である男性は、木田を難破させることなく大江戸線の改札まで案内してくれた。
「ありがとうございました」
「目的地まで無事に行けるといいですね」
人間の彼は木田を狂わせる魔物のように美しく微笑んで去って行った。
人々が行き交う駅の構内で、背の高い木田は呆然と立ち尽くしていた。
特急の終着駅を降り、地下鉄に乗り換えようと、とりあえず下へ続く階段を降りてきた。でも…なんだ?ここは…アリの巣?
名古屋にも地下鉄はあったし、長い地下商店街もあった。人通りもそれなり。だけど…ここは人がウジャウジャいる。幸い長身の木田には先の方まで見渡せるが、見えたところでどこへ行っていいのかわからない。
新宿駅は初めてじゃなかった。以前一度だけ友人と一緒に来たことがある。ただ、新宿区民だった彼の背中を追っていただけなので、経験値は上がっていなかった。
仕方なく地上に出てみようと、列車を降りたホームに戻り、そこから上へ向う階段を上がった。
???…線路は地上にあるはずで、そこから階段を上ってきたのに…改札の向こうは車が走っている。そして道の向こうにも改札が…どういうこと?
帰ろうかな…と、木田は思った。予定通り地元で就職先を探した方が無難だ。こんなところじゃ生きていけない…
でも、生真面目な木田の辞書にドタキャンという文字はなかった。沈没しそうになりながらも、一応指示された場所に向おうと、もう一度地下へ降りた。
木田だって迷うであろうことは予想していた。だから家を出る前にネットで目的地までの行き方をきちんと調べてきた。特急を降りたら大江戸線に乗り換える。わかってる。そんなことはわかってる。問題はその大江戸線とやらにどこで乗るかだ。
もちろんスマホも持っている。地図アプリも入ってる。入ってるし見てる。見てるんだ。だけど指示どおりの場所を右に曲がったはずが、少しタイミングがずれていたらしい。
スマホさんは文句も言わずに何度も経路を修正してくれた。それに従って、いや従えてないからか、同じエリアをグルグル回るみたいになって現在に至る。
地下鉄とJRは別会社だろうからと、とりあえず改札を出た。そして一応案内表示のようなものがあるので、それに従いつつ、スマホも確認しつつ歩いていく。
でもしかし。
案内表示だけを見て歩いていると、どんどん人にぶつかってしまう。スマホを見ていても以下同文。仕方なく人を避けていると、そっちに気を取られて自分が今どこを歩いているのかわからなくなった。
スマホの画面には現在地が表示されているけれど、自分が立っているこの場所は果たして画面上の現在地と同じ場所なのか?
大西洋の真ん中に置き去りにされた気分で突っ立っていると、何度も人がぶつかっていった。
「デカいくせに突っ立ってんじゃねぇよ」
「何これ」
「邪魔」
人々が木田に容赦なくダメージを加えていく。
もうダメだ…水谷さんに電話して辞退させてもらおう。大海原に沈み行く木田が芸能事務所のマネージャーだという男に電話しようとしたところ、誰かがポンと肩を叩いた。
「大丈夫ですか?」
振り向くとそこには救世主が立っていた。
美しい…その顔を見た木田は言葉を失った。
筋の通った美しい鼻に、二重で大きめの美しい目。瞳は美しいダークブラウンで、ピンクの唇は少し厚くてちょうどいい美しい形をしている。栗色の美しいマッシュヘア。白く滑らかな美しい肌。
明らかに男性なのに、木田のボキャブラリーでは美しいとしか表現のしようがなかった。
「あの…道に迷われてるんじゃ?」
美しさに目を奪われ、何も答えない木田に男性はいぶかしげに訊いた。
「え、あ、はい。大江戸線というのに乗りたいんですが…」
「ああ。ではご案内します」
美しい男性は木田の先に立って歩き始めた。
身長は木田よりも10センチぐらい低い。ほっそりしているけど、肩にはきちんと筋肉がついている。高い腰の位置。優雅な歩き方。木田は男性の後ろを、取り憑かれたようにフラフラと追った。
待てよ。大西洋の真ん中に現われた美しいモンスター。その歌声に惑わされ死に向う船人。まさにあの美しさは人間ではない。俺、難破船になるのかな?なんて言ったけ、そういう怪物の名前…
幸か不幸か、男性は救世主でもなくモンスターでもなかった。
「ここで切符を買って、改札はそこです」
普通に人間である男性は、木田を難破させることなく大江戸線の改札まで案内してくれた。
「ありがとうございました」
「目的地まで無事に行けるといいですね」
人間の彼は木田を狂わせる魔物のように美しく微笑んで去って行った。
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