オー・マイ・メサイア  ~セイレーン~

ほだか

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Side 木田

4 ※

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 “来週の土日は仕事が入ってないんですが、佐伯さんのご予定は?”

 レコーディングやジャケット撮影など、デビューに向けた準備がひと段落し、久しぶりに3連休になった木田は早速佐伯にメッセージを送る。

 二人は出逢って半年以上経っても敬語を使っていた。誰にでも礼儀正しい木田は、よほど年下でない限り敬語で話しかける。そしてそのままタメ口に移行するタイミングをつかめず、親しくなっても敬語のままであることが多かった。

 だから“佐伯は年下だろうな”と思いながらも、そして“もっと近づきたいな”と思いながらも敬語が続いていた。

 基本的に土日が休みな佐伯は、木田の連絡にすぐOKの返事をくれた。そして木田は教えられた住所を自分で探し当てて、佐伯のマンションにたどり着いた。

 1LDKでオートロックのエントランスと管理室があるマンション。入り口で部屋番号を押して呼び出し、中から開けてもらわないと入れないようになっている。いつか俺もこういう日本らしい場所に住める日が来るのかな…と思いながらエレベーターに乗った。

「どうぞ」

 佐伯が部屋着で迎えてくれた。外で会うのとは違い、パーカーにウェストゴム綿スウェット姿の佐伯は…それでも美しかった。

「やっぱりキレイにしてるんですね」

 グリーン系のラグマットの上には、木目調のコタツにもなるテーブル。木製で統一されたローテーブルやチェスト。まさに大海原にある陸地。

「かけてください」

 漂着した船人のように、呆然と部屋を見渡しながら立ち尽くす木田の背中を佐伯が叩いた。

「あ、はい」

 佐伯は野菜たっぷりのカレーを作ってくれていた。信州の野菜は腐る前にと佐伯の胃に入った後だったけど、野菜たっぷりカレーは木田の心に染み込む味だった。二人は木田が持ってきたワインを飲みながらカレーを食べた。

「佐伯さん、カレー好きなんですね」
「ええ…まあ…このワインも長野県産ですか?」
「はい。母が送ってくれました」
「そうですか…優しいお母さんですね」

 佐伯が目を伏せる。寂しそうな表情。なぜか木田は自分の心臓をねじられている感覚に陥った。

 胸が痛い…美しい人が、美しい瞳を伏せるから…

 気がつくと木田は佐伯の横に座り、しっかりと彼を抱きしめていた。

 美しい顔が目の前にある。そのまま顔を近づけて唇を重ねた。最初は固く閉じられていた佐伯の唇が薄っすら開き、求めるようにそっと舌を差し出した。

 木田は魔物に取り憑かれていた。息継ぎしようと離れる唇を頭を押えて再び塞ぐ。引っ込めようとする舌を噛み付くように力いっぱい吸い上げた。

 パーカーの中に手を入れ、素肌を撫で回す。そしてその手をパンツの中に入れ、下着の上から固くなっている佐伯のものを握った。

「あっ…」
 荒っぽい木田の手つきに佐伯が攻めるような声をあげた。それでも木田は手の動きを止められなかった。

 すっかり立ち上がった佐伯のものを下着から出して擦りあげる。一方、佐伯も喘ぎながら木田のジッパーを降ろし、中に手を差し入れた。

「あ…」
 気持ちいい…長い指でこすられ木田も喘いでいた。

 二人はそのまま互いのものを扱きながら口づけを続け、相手の手の中に熱を放った。

 欲望を開放した二人はゆっくりと体を離す。木田は佐伯が放ったものをじっと見つめてしまった。そして…舐めたい…と、白い液体を凝視していると、佐伯がティッシュをその手に被せた。

「すみません。拭いてください」
 佐伯は自分の手を拭き、服を整えていた。

 木田は呆然としていた。

 俺は…何してたんだ…何をしてしまったんだろう…俺…

 動かない木田の手を佐伯が拭っている間も、木田の思考は停止したままだった。

「木田さん?」

 佐伯に呼ばれ、ハッとしてその美しい顔を見る。赤く染まった頬。潤んだ瞳。悲しそうな表情。途端に羞恥心と申し訳なさと恐怖と、更なる欲望が込み上げてきた。

「あ…すみません。ごめんなさい」

 木田はジッパーを上げるのも忘れ、走って佐伯の家を出た。
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