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Side 佐伯
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いつもより早く目が覚めた佐伯は、いつもより早い電車に乗って職場に向かっていた。
早く着たんだからと、お気に入りのカフェでコーヒーを買って少し遠回りして職場に向う。すると人ごみの中にスカイツリーが立っていた。
スカイツリーは言いすぎだな。東京タワーかな。そう思いながら通り過ぎ、さりげなく振り向いて顔を見た。
面長の顔に筋の通った鼻。真っ直ぐな男らしい眉毛に1重で切れ長の目。薄い唇。そしてすらっと背が高く、服の下は適度に筋肉がついていそう。佐伯のタイプだった。
佐伯が自分のセクシャリティに気づいたのは高校の時。そして決まって好きになるのはノンケだった。そして決まって好意を寄せられるのもノンケだった。
自分はその気のなかった男をその気にしてしまう悪魔だと佐伯は自覚していた。ただ美人は三日で飽きるという言葉どおりなのか、三日とまでは言わないが、佐伯に夢中だった男たちは皆、正気に戻って佐伯を捨てた。
もうノンケは好きにならない。何度もそう心に誓ったのに、佐伯に言い寄ってくる男たち。“男は洋人が初めてだ”“男とか女とか関係なく洋人が好きだ”
その言葉を信じて佐伯が彼らに夢中になると、彼らは決まってこう言った。“やっぱり女がいい”“やっぱり俺はホモじゃない”
おまえが先に始めたんだろ!と責めてももう遅かった。彼らの心は佐伯から離れ、佐伯の心には傷だけが残る。だからもう、絶対ノンケには惑わされない。
そう思いながらも、呆然と立ち尽くす東京タワーに声をかけてしまった。東京タワーは救世主でも見つけたかのように、すがるような目で“大江戸線に乗りたい”と言った。
遠いなあ…そう思いながらも、佐伯は東京タワーの先に立って歩き始めた。そして取り憑かれたようにフラフラと後についてくる男。この人…もう僕に落ちてるのか…と思いつつ、都営大江戸線まで案内した。
遅刻しそうな時間になってしまった佐伯は、東京タワーの名前も連絡先も訊かずに急ぎ足で職場に向った。
早く着たんだからと、お気に入りのカフェでコーヒーを買って少し遠回りして職場に向う。すると人ごみの中にスカイツリーが立っていた。
スカイツリーは言いすぎだな。東京タワーかな。そう思いながら通り過ぎ、さりげなく振り向いて顔を見た。
面長の顔に筋の通った鼻。真っ直ぐな男らしい眉毛に1重で切れ長の目。薄い唇。そしてすらっと背が高く、服の下は適度に筋肉がついていそう。佐伯のタイプだった。
佐伯が自分のセクシャリティに気づいたのは高校の時。そして決まって好きになるのはノンケだった。そして決まって好意を寄せられるのもノンケだった。
自分はその気のなかった男をその気にしてしまう悪魔だと佐伯は自覚していた。ただ美人は三日で飽きるという言葉どおりなのか、三日とまでは言わないが、佐伯に夢中だった男たちは皆、正気に戻って佐伯を捨てた。
もうノンケは好きにならない。何度もそう心に誓ったのに、佐伯に言い寄ってくる男たち。“男は洋人が初めてだ”“男とか女とか関係なく洋人が好きだ”
その言葉を信じて佐伯が彼らに夢中になると、彼らは決まってこう言った。“やっぱり女がいい”“やっぱり俺はホモじゃない”
おまえが先に始めたんだろ!と責めてももう遅かった。彼らの心は佐伯から離れ、佐伯の心には傷だけが残る。だからもう、絶対ノンケには惑わされない。
そう思いながらも、呆然と立ち尽くす東京タワーに声をかけてしまった。東京タワーは救世主でも見つけたかのように、すがるような目で“大江戸線に乗りたい”と言った。
遠いなあ…そう思いながらも、佐伯は東京タワーの先に立って歩き始めた。そして取り憑かれたようにフラフラと後についてくる男。この人…もう僕に落ちてるのか…と思いつつ、都営大江戸線まで案内した。
遅刻しそうな時間になってしまった佐伯は、東京タワーの名前も連絡先も訊かずに急ぎ足で職場に向った。
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