おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

可愛い後輩だから

「醤油、取って下さい」
「ほいよ」
「さすが先輩、無駄のないナイスパス」
「はは、棒読みじゃんか。無理に褒めなくてもよ……ま、おもしれえからこれはこれで元気出るな」

　あれ以来、冴島とはなんだかんだ利害の一致ってことで引き続き世話になっている。
　平日夜にはこうして店の開拓がてら飯なんか食いながらコマンド交じりの掛け合いだけでもだいぶ気分がすっきりする。多少おおげさにやるぐらいのほうが効果は高いっつう話もあるが、いかにもプレイ・・・って感じで笑えるけど振り切ってみればおもしれえし、実際馬鹿にできねえんだよな。

「先輩こそ、無理に打ち返さなくても。ま、そういうところ、いいと思いますよ」
「ひえ、お前さすがだわ」

　それはそれとしてちょいちょい真顔でそういう褒め方してくんの、ちょっと恥ずいけどな。


　終業時間が近づけば「今日は何食いてえ？」なんてこれ見よがしに声を掛け合って、残業なんてしてらんねえっつう強い意思で職場を後にして。こんな健全な時間にしょうもねえ話で笑いながら夕飯まで食い終わってるって時点で、それだけで既に体調もメンタルも相当よくなってる説、絶対あるだろ。
　
　とは言ってもこれ、考えてみりゃあこいつがコマンド出してくれなきゃ成り立たねえわけで、最終的におれだけ褒められてるわけで。そういう意味でもおれだけ受け身で得してるんじゃねえかって思うんだが。だから今度こそ奢らせろっつっても冴島曰く「お互い様ですから」だそうだ。ほんとかよ。

「先輩だって、俺が仕事で成功したら褒めてくれるでしょう」
「そりゃな」

　んなもんおれは先輩だし。
　いや、それ以前に実際すげえんだから、当たり前だろ。

「褒めるの、面倒だって思ってますか？」
「んなわけねえけど。それに、大体お前が可愛い後輩だから……ってなに言わせんだよ」
「まあ、そういうとこですし、そういうことです」
「あー……お、おう？」

　いやよくわかんねえまま返事しちまったけど。
　どう考えたってやっぱ全然違えだろ。