3 / 21
本編
2.執事になった少年
しおりを挟む
とあるDom夫妻の家庭に生まれた少年ルカは、ハニーブロンドの髪と瞳が人目を引く美少女のような少年だった。
しかし彼は―当然本人の知るところではないが―Domである主人がSubの女性執事を孕ませた子であると噂されていた。
そんな腫れ物のような存在であったルカが、あるときSubだと診断されるや否や施設に「保護」されたことは、ある意味自然な流れと言えた。
そして周囲のだれも――ひと目見たら忘れないほどの美少年が突然姿を見せなくなったというのに、その事実について掘り下げようとはしなかった。
***
「次、Come」
「………………」
「よし、Kneel、Stay」
Domの管理者から高圧的かつ事務的にコマンドを放たれて、まだSubとしての自認すら不十分な少年に抵抗の手段などあるはずもない。
何が起こったのかを理解する間も与えられないままカクンと膝を付く。
身体じゅうが命令に縛られて、震えが止まらない。
複数の人の気配が近付いてきて身体を調べられている様子を感じながら、声を出すこともできないまま意識が遠くなっていく。
こうして施設にやってきたルカにも例に漏れず、早々にチップの埋め込みが施されていた。
そして数年間の英才教育を受けたのちに、優秀な執事候補として売り出されることとなる。
***
まだ美少年の面影を残した彼に目をつけたのは、裕福なDomの中年男だった。
「こんな可愛い子に出会えるなんて、やっぱり早めに買い替えに来て正解だ」
「さすがお客様はお目が高い、いつもありがとうございます」
「前のはすぐに大きくなってガッカリしたけど、今度はどうかな」
「ええ……そう仰るかと思いまして……新しいオプションで、成長を遅らせるホルモン剤を仕込むこともできますがいかがでしょう?」
「ああ、いいね。じゃあそのオプション付きで、この子をちょうだい」
まるで消耗品のように扱われているにもかかわらず、自我の制御を受けて感情を持たないSubは何も感じることはない。
ましてや過去の記憶も、自分の名前すらもわからない。
「果実のように美しい、お前はモモだ」
主人にそう名付けられたルカは、モモとして、彼の執事として、何不自由なく生きていく。
「ああ、僕の可愛いモモ…………もっと可愛がってあげるから、こっちへおいで」
執事としてのSubの仕事は、主人に仕えて忠実に命令を遂行すること、それに尽きる。
そこに性的な奉仕も含まれるかどうかは主人との関係性によるところではあるのだが……モモの場合は当然のように求められた。
どんな要求にも忠実に応えるモモに夢中な主人は、自分の支配下でモモが乱れることに興奮し続けた。
それでも彼を組み敷く手付きは優しくて、傷つけるようなことも、ひどく扱われることもなかった。
――――少なくとも彼が「美少年」の姿である限りは。
「今度のは期待してたのに、そうでもなかったな」
無理矢理成長を遅らせているのだから、あくまで彼ら人間の身体には限度というものがある。
モモが既に成人男性であることを認めざるを得ないほどの身体の成長が感じられるようになると、やがて主人は彼に対する興味をなくし、態度は豹変した。
強引に無茶な命令をきかせたり、愛のない欲求のはけ口として使われたりもした。
当然、碌に「メンテナンス」がされるはずもなく、やがてモモは壊れるべくして壊れていった。
そして成金Dom特有の理不尽な言い分で、モモという名をつけられたSubは施設に返品された。
しかし彼は―当然本人の知るところではないが―Domである主人がSubの女性執事を孕ませた子であると噂されていた。
そんな腫れ物のような存在であったルカが、あるときSubだと診断されるや否や施設に「保護」されたことは、ある意味自然な流れと言えた。
そして周囲のだれも――ひと目見たら忘れないほどの美少年が突然姿を見せなくなったというのに、その事実について掘り下げようとはしなかった。
***
「次、Come」
「………………」
「よし、Kneel、Stay」
Domの管理者から高圧的かつ事務的にコマンドを放たれて、まだSubとしての自認すら不十分な少年に抵抗の手段などあるはずもない。
何が起こったのかを理解する間も与えられないままカクンと膝を付く。
身体じゅうが命令に縛られて、震えが止まらない。
複数の人の気配が近付いてきて身体を調べられている様子を感じながら、声を出すこともできないまま意識が遠くなっていく。
こうして施設にやってきたルカにも例に漏れず、早々にチップの埋め込みが施されていた。
そして数年間の英才教育を受けたのちに、優秀な執事候補として売り出されることとなる。
***
まだ美少年の面影を残した彼に目をつけたのは、裕福なDomの中年男だった。
「こんな可愛い子に出会えるなんて、やっぱり早めに買い替えに来て正解だ」
「さすがお客様はお目が高い、いつもありがとうございます」
「前のはすぐに大きくなってガッカリしたけど、今度はどうかな」
「ええ……そう仰るかと思いまして……新しいオプションで、成長を遅らせるホルモン剤を仕込むこともできますがいかがでしょう?」
「ああ、いいね。じゃあそのオプション付きで、この子をちょうだい」
まるで消耗品のように扱われているにもかかわらず、自我の制御を受けて感情を持たないSubは何も感じることはない。
ましてや過去の記憶も、自分の名前すらもわからない。
「果実のように美しい、お前はモモだ」
主人にそう名付けられたルカは、モモとして、彼の執事として、何不自由なく生きていく。
「ああ、僕の可愛いモモ…………もっと可愛がってあげるから、こっちへおいで」
執事としてのSubの仕事は、主人に仕えて忠実に命令を遂行すること、それに尽きる。
そこに性的な奉仕も含まれるかどうかは主人との関係性によるところではあるのだが……モモの場合は当然のように求められた。
どんな要求にも忠実に応えるモモに夢中な主人は、自分の支配下でモモが乱れることに興奮し続けた。
それでも彼を組み敷く手付きは優しくて、傷つけるようなことも、ひどく扱われることもなかった。
――――少なくとも彼が「美少年」の姿である限りは。
「今度のは期待してたのに、そうでもなかったな」
無理矢理成長を遅らせているのだから、あくまで彼ら人間の身体には限度というものがある。
モモが既に成人男性であることを認めざるを得ないほどの身体の成長が感じられるようになると、やがて主人は彼に対する興味をなくし、態度は豹変した。
強引に無茶な命令をきかせたり、愛のない欲求のはけ口として使われたりもした。
当然、碌に「メンテナンス」がされるはずもなく、やがてモモは壊れるべくして壊れていった。
そして成金Dom特有の理不尽な言い分で、モモという名をつけられたSubは施設に返品された。
7
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】俺だけの○○ ~愛されたがりのSubの話~
Senn
BL
俺だけに命令コマンドして欲しい
俺だけに命令して欲しい
俺の全てをあげるから
俺以外を見ないで欲しい
俺だけを愛して………
Subである俺にはすぎる願いだってことなんか分かっている、
でも、、浅ましくも欲張りな俺は何度裏切られても望んでしまうんだ
俺だけを見て、俺だけを愛してくれる存在を
Subにしては独占欲強めの主人公とそんな彼をかわいいなと溺愛するスパダリの話です!
Dom/Subユニバース物ですが、知らなくても読むのに問題ないです! また、本編はピクシブ百科事典の概念を引用の元、作者独自の設定も入っております。
こんな感じなのか〜くらいの緩い雰囲気で楽しんで頂けると嬉しいです…!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる