絶対服従執事養成所〜君に届けたいCommand〜

ひきこ

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本編

1.絶対服従執事養成所

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 ここは少数のDomが社会を支配する、とある世界のとある時代。

 そんな支配階級を除く一般社会に暮らすのは、人口の9割を占めるnormalと呼ばれる者たちである。

 そして、それ以外にもうひとつ――Subと呼ばれる性を持つ者たちが存在する。
 しかし、その存在は都市伝説に違いないと囁かれているほど、一般社会の中で彼らに出会うことはほとんどない。

 Sub性の者は稀少価値が高く、国家として守るべき存在として扱われて、Subだと診断された者は須らく専用施設に保護される。
 彼らはそこで教育を受けて国家機密の重要任務に就き、衣食住の保証もされて幸せに暮らすという。

 
 ――――と、言われている。



 施設に「保護」されたSubたちは、支配者――Domに仕える優秀な執事としての英才教育が施されることになっている。

 彼らの脳には特殊なチップが埋め込まれ、まず感情が制御されて本人の自我は抑え込まれる。
 そして特殊な契約を経て主人となったDomが発する言葉は、すべてが「コマンド」として自動翻訳されて脳に直接命令が下される。

 これにより執事Subにとって、主人Dom命令コマンドを聞くことは快感であると刷り込まれ、絶対的な主従関係が成立する。


 本来、人間の個人の資質に関しては第2性による性差は存在しない。
 しかし、Domの本能的な支配欲求が満たされることにより――つまり一方的にSubを支配することで、潜在的な彼らの能力は底上げされてきた。

 これこそがこの国の国家機密そのものであり、Domたちが支配者として君臨し続けてきた所以である。
 



 生まれながらの支配階級であるDomは、年頃になるとこの施設で執事を買い取っていくのが通例となっている。

 英才教育を受けた彼らSubたちは、当然ながら執事として非常に優秀である。
 しかしそれ以上に、チップを埋め込まれたSubにとっては主人の命令は絶対であり、どんな命令にも逆らうことはない。
 ただし、あくまでもSub性を持つ人間であることには―建前としては―変わりない。
 そのため、例えば成果に対する労いといったアフターケア等の「メンテナンス」は必須であり、それを怠ればいずれ壊れていくのも必然である。

 しかし、絶対的支配者であるDomの性質として、Subたちをモノのように扱う者が多いのもまた現実であった。
 たとえ彼らのメンテナンス不足によって執事Subを壊してしまっても、そんな彼らDomが瑕疵を認めることなど皆無であり、不良品扱いをされて施設に返品される執事も少なくない。



 なお、これまで支配階級としてDom同士の婚姻を繰り返してきたことにより、上流家庭の多くはDom性の者で構成されている。
 しかし稀ではあるが、そこにSub性の子が生まれるケースも僅かながら存在する。

 現在の国家システムにおいては、Sub性の者がこの国の一般社会で生活できる道はない。
 そのため穀潰しと見做され施設に送る場合もあるが、大半は我が子可愛さに秘密裏に育てられるケースも少なくないことは暗黙の了解となっている。 
 それでも彼らに選択肢などはないに等しく、良くて適当なDomのパートナーとして充てがわれるか、あるいは――――


 そう、ここはDomたちが支配する社会。


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