絶対服従執事養成所〜君に届けたいCommand〜

ひきこ

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本編

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 彼が本当にルカだったとして……いや、ルカには違いない。
 ただそれだけがわかったところで、自分は一体どうしたいのか。

 こんな形での再会なんて全く考えていなかったけれど、冷静に考えてみればこれ以外に再会できる手段なんてあるわけないなと自嘲する。

 どうすればいいのか、どうするべきかもわからない。
 それでも彼を、このまま施設に任せておくわけにはいかないという確信だけはある。


 僕はもう子どもじゃない。
 今の僕には、何ができる……?


 

 居ても立っても居られなかった。
 尤もらしい言葉を並べて適当な実験計画をでっち上げ、実験の被験体として彼に関する一切の権利を得ることができた。
 
 結局のところ、この施設でも彼の処遇については持て余していたのだろう。
 寝る間も惜しんで資料を準備し理論武装で臨んだものの、驚くほどすんなりと希望通りに事が運ばれた。

 できることなら彼をモノのように扱いたくはなかったが……なりふりなんて構っていられなかった。



 それから僕は、表向きは施設のために研究をしながらルカの治療に心血を注ぎ込んだ。

 埋め込まれた制御チップが忌々しくて、外科的に取り除けるものなら取ってしまいたいけれどリスクが高過ぎて、ならばせめてどうにか無効化できないかと試行錯誤した。
 あくまでもルカ自身を傷付けることがないように慎重に……できることは、やってみた。

 彼が戻ってきてくれるのが一番の望みではあるけれど、同時に、これがうまくいけば少しでも彼のようなSubを減らすことにも繋がればいいと信じて研究を続けていた。


 治療の甲斐あって、ルカの身体はゆっくりと回復していった。  
 しかし感情は閉ざされたまま、相変わらず物言わぬ人形のようだった。

 それでも既に脳波は正常に近く、こちらが話しかけると僅かに反応があるようにも見てとれる。
 そんな希望が捨てきれなくて、返事のない彼に毎日話しかけていた。



 今はまだ彼と言葉は交わせない。
 だけど、もしかすると例えば本能レベルなら……そんな望みにかけてSubとしての本能に訴えかけるようにして、毎日のように前向きな言葉をかけ続けた。


 その事実だけを切り取ってみれば聞こえの良い話だが、実際そんな地道な日々は、正直言ってとても辛かった。
 もしかすると、一生このままかもしれないし、むしろそちらの可能性のほうが高いくらいだ。

 既に医療行為を通して、彼の身体は知り尽くしている。
 それならいっそ無抵抗の彼に触れて、犯してしまおうか……そんな衝動に駆られたことも一度や二度ではなかった。

 それでも、その一線を越えてしまえばきっと自分が許せない。
 何故ならそれは、まさしくこの忌避すべき社会システムの縮図でしかないのだから。




 そして今日も、いつものようにルカに話しかける。

 視点の定まらない虚ろな彼の瞳には、一体何が映っているのだろうか。
 自分のことなど見ているわけもないのに、そうであればいいのにとその目を覗き込む。


 …………きっと疲れていたのだろう。

 彼が一瞬こちらを見て、目が合ったような気がするなんて。


 彼の視線がもっと欲しくて、無意識に彼の頬に触れていた。

 自我のないはずの彼の視線が、一瞬だけ逸らされた。


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