La Nuit Noire 〜漆黒の夜〜 ― 薔薇の間に囚われて ―

翔田美琴

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第2話 観客の裁き

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 舞台の上で、銀の鎖は静かに揺れていた。
 ユウキとマリの手を繋ぐその鎖は、繋がりか、支配か──
 その解釈を、観客席に委ねられているかのようだった。

 沈黙の中、仮面のひとりがゆっくりと手を挙げた。
 金色に縁取られた札が掲げられる。
 それは、この館での合図──観客が“試練”を指定する権利を持つ証だった。

「……!」

 ユウキの胸に、恐怖が走る。
 ただ見られているだけでなく、彼らが試練を操っている。
 逃げ場などないのだ。

 札が揺れ、黒服のスタッフが舞台に現れる。
 恭しくエリオットに耳打ちをし、銀髪の支配者はわずかに口元を歪めた。

「なるほど。観客は、こう望んでいるらしい」

 低く響く声に、会場がざわめきを帯びる。

 エリオットはユウキを見据えた。
 その灰色の瞳は冷酷でありながら、どこか慈悲を孕んでいるようにも見えた。

「愛を語るなら、まずは“耐える”ことを示せ。
 ──痛みを共に受けることこそ、真の繋がりだと」

 黒服のスタッフが運んできたのは、黒革の鞭だった。
 観客から小さな笑いと拍手が洩れる。
 空気はいやが上にも高まり、舞台は完全に見世物と化していた。

 マリの目が妖しく光る。

「いいわね……彼女にぴったりだわ」

 唇を舐めながら、鎖を引き寄せる。

 ユウキは必死に声を震わせた。

「違う……! これは罰じゃない! 愛は痛みじゃない!」

 だが、その叫びは観客のざわめきにかき消されていく。
 仮面の群れは面白がるように囁き合い、欲望と狂気を舞台に注ぎ込む。

「始めろ」

 エリオットの一言が、冷たくも甘美な合図となった。
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