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6話 精力をつけろ
エリック皇帝から寵愛を貰うようになったエミールは、皇帝から『精力をつけろ』と言われたのだが、具体的に何をすれば良いのかわからない彼は、身近な人物である宰相エリオットに相談したいと思い、宮殿の中を歩いている。
この時間、宰相エリオットは一体、何処にいるのだろうか?
そう思った矢先にエミールの捜し人は、現れた。彼は今、手には沢山の書類を持ち、宰相の部屋に戻ろうとしているのだろう。
エミールはエリオットに声を掛けた。
「あ、あの!? エリオット宰相!」
「ん? 誰かと思ったらエミールか。こんな所でどうした?」
「あの? ちょっと相談に乗って欲しい事があって…」
「相談事か。まあ、話を聴くだけならしてもいいだろう。とりあえず、私の部屋に行こうか?」
「は、はぁ…」
「妙な想像を働かせるな。別にちょっかいは出さないよ。兄上の寵愛を受ける君にはさ」
そう軽くからかいながら、宰相エリオットは自分が仕事で使っている部屋にエミールを入れた。この部屋は彼の仕事場なので公の場だからかなりの数の人々も往来する。
エミールは初めて宰相エリオットの仕事場に入った。中々の品のある部屋だろう。カーテンは真っ白の普通のもの。家具は何処かアンティークを思わせるシックな造り。落ち着いた茶色の木製の壁。壁掛け時計もある。2階の西側の部屋だった。
宰相エリオットは書類のチェックをしている様子だ。傍らにはティーカップセットが置いてある。
「で、相談って何かな?」
「あの、毎晩、エリック皇帝陛下との夜伽をしていたら、陛下からもっと精力をつけろと言われて…」
「精力? それと私に何の関係が?」
「エリック皇帝陛下はエリオット宰相が物識りだから色々な事を教えてくれると教えてくれまして」
「エリックめ。面倒な事を頼んだな」
「エリオット宰相。精力ってどうやって付ければいいのですか?」
なかなかストレートな質問にエリオットは傍らに置いたティーカップセットのお茶を飲んだ。
「精力をつけるとなると、体力がないと話にもならないぞ。まずは体力作りから始めるべきかな」
「とっておきのコースもあるが」
「どんなコースですか?」
「一週間で付けるスペシャルハードコースがあるぞ? 私の直のトレーニング付き。受ける気があるなら考えてやってもいい」
「スペシャルハードコース。本当に一週間後につけられるのですか? 精力って?」
「別に絶倫な精力を付けろと言われた訳ではないのだろう? スペシャルハードコースなら簡単につくさ」
「その代わり、スペシャルハードコースだからかなり大変だぞ? 途中で潰れても私は知らないからな」
ゴクッ。エミールは息を呑んだ。
一体、エリオット宰相のスペシャルハードコースとはどういうものだろうか? 潰れても知らないという事は結構キツイコースなのかな? でも、夜伽をしている者からすれば陛下をもっと喜ばしてあげたい。
この際、直々の双子の弟のスペシャルハードコースを受けて見ようと思ったエミールだった。
「やる気はありそうだな。なら早速今日から一週間のスペシャルハードコースをやろうか?」
「今日からですか?!」
「そう。今日から一週間だ」
宰相エリオットはニヤリとして笑った。
まるでこれから面白くなるぞ、と言わんばかりの表情だ。
「よし。書類のチェックは終わりだな」
彼は書類を一つにまとめると早速、とある場所へと連れて行く事にした。
どちらにせよ日に一回は顔を見せに行くから、ものはついでである。
「エミール。私に着いて来なさい。早速、スペシャルハードコースを始めるぞ」
宰相エリオットが向かったのは近衛騎士団が訓練している大きな訓練所である。そこには近衛騎士団でも有名な双子騎士がいた。
ジョニーとユーマのライトニング兄弟である。彼らも丁度訓練中であった。
大臣のオグスまでいた。
「おーい」
「エリオット宰相だ」
「珍しい。同伴者もいるな」
「これから訓練か? ジョニー、ユーマ?」
「はい。まずは素振りをしようかなと」
「よし。エミール。彼らとまずは素振りをしようか」
「剣なんて握った事無いです。俺は」
「それなら、私が教えてやるよ」
「いいのか? オグス大臣?」
「たまには教えないと腕が鈍るからな」
「ホレ。これなら初心者でも扱いやすいだろう」
「どうも…」
エミールが渡されたのは一般的な簡素な作りの剣だった。初心者にも扱いやすい剣だ。握る所には滑り止めが巻かれてある剣だった。意外に軽い。
オグス大臣は同じ剣を握り、素振りの動作をする。そしてエミールにもそれをやらせる。ちょっとぎこちない。そこでオグス大臣は修整をする。
今度はかなり良い素振りだ。
ある程度、出来るようになったエミールにエリオットはこう課題を出した。
「まずは初日だし、五十回を目指してみようか?」
「五十回の素振りですか? はい、やってみます」
ジョニーとユーマもまずは軽く素振りを始める。これで筋肉を解す。それから剣術の稽古に入るのだ。
凄い速さで素振りをする二人。エミールも何だかやる気が出てきた。
彼らが素振りをしている間、オグス大臣とエリオット宰相は一言二言、会話を交わす。
一体、何の話をしているのかな?
エミールはそちらに神経が行きそうになる。それをユーマが注意した。
「よそ見をしていると怪我するぞ。剣を持っている時は集中するんだ! いいな?」
「は、はい。えーと──」
「ユーマだ。よろしく」
「は、はい。ユーマさん!」
「俺達は素振りを一日二百回やっているんだ」
「二百回もですか!?」
「それが終わると剣術の稽古。近衛騎士団を務める者なら普通の修行だよ」
そうして五十回の素振りを終わらせたエミール。初日で五十回をこなすとは。大したものだ。オグス大臣とエリオット宰相は素直に感心した。
「ご苦労さん。初日で五十回をこなすとはなかなか良い根性を持っているな。それならスペシャルハードコースもいけるかもな」
「それではオグス大臣、宜しく頼んだ」
「任せておけ」
「何の話ですか?」
「君には関係ない事。次の場所へ向かうぞ」
そうやってほぼ一日付き添って、エミールにスペシャルハードコースを受けさせたエリオット。
エミールはだいぶ疲れた様子だった。
「ほう…。一日耐え抜いたか。見どころあるじゃないか」
「もう──、一日中、身体を鍛える事ばかりだったじゃないですか…!」
「何だ? あっちの修行もしたいのか?」
「誰が…! …でも」
「ん…?」
「正直、したいかも知れない…」
本音が少し出たエミールに、宰相エリオットは優しく言った。
「最高に美味なものは最後にとっておくものだよ」
「今夜はよく休め? 明日もスペシャルハードコースだから、な」
その宰相エリオットが少しだけ本音を見せてエミールは不思議な想いが湧いてくるのであった。
この時間、宰相エリオットは一体、何処にいるのだろうか?
そう思った矢先にエミールの捜し人は、現れた。彼は今、手には沢山の書類を持ち、宰相の部屋に戻ろうとしているのだろう。
エミールはエリオットに声を掛けた。
「あ、あの!? エリオット宰相!」
「ん? 誰かと思ったらエミールか。こんな所でどうした?」
「あの? ちょっと相談に乗って欲しい事があって…」
「相談事か。まあ、話を聴くだけならしてもいいだろう。とりあえず、私の部屋に行こうか?」
「は、はぁ…」
「妙な想像を働かせるな。別にちょっかいは出さないよ。兄上の寵愛を受ける君にはさ」
そう軽くからかいながら、宰相エリオットは自分が仕事で使っている部屋にエミールを入れた。この部屋は彼の仕事場なので公の場だからかなりの数の人々も往来する。
エミールは初めて宰相エリオットの仕事場に入った。中々の品のある部屋だろう。カーテンは真っ白の普通のもの。家具は何処かアンティークを思わせるシックな造り。落ち着いた茶色の木製の壁。壁掛け時計もある。2階の西側の部屋だった。
宰相エリオットは書類のチェックをしている様子だ。傍らにはティーカップセットが置いてある。
「で、相談って何かな?」
「あの、毎晩、エリック皇帝陛下との夜伽をしていたら、陛下からもっと精力をつけろと言われて…」
「精力? それと私に何の関係が?」
「エリック皇帝陛下はエリオット宰相が物識りだから色々な事を教えてくれると教えてくれまして」
「エリックめ。面倒な事を頼んだな」
「エリオット宰相。精力ってどうやって付ければいいのですか?」
なかなかストレートな質問にエリオットは傍らに置いたティーカップセットのお茶を飲んだ。
「精力をつけるとなると、体力がないと話にもならないぞ。まずは体力作りから始めるべきかな」
「とっておきのコースもあるが」
「どんなコースですか?」
「一週間で付けるスペシャルハードコースがあるぞ? 私の直のトレーニング付き。受ける気があるなら考えてやってもいい」
「スペシャルハードコース。本当に一週間後につけられるのですか? 精力って?」
「別に絶倫な精力を付けろと言われた訳ではないのだろう? スペシャルハードコースなら簡単につくさ」
「その代わり、スペシャルハードコースだからかなり大変だぞ? 途中で潰れても私は知らないからな」
ゴクッ。エミールは息を呑んだ。
一体、エリオット宰相のスペシャルハードコースとはどういうものだろうか? 潰れても知らないという事は結構キツイコースなのかな? でも、夜伽をしている者からすれば陛下をもっと喜ばしてあげたい。
この際、直々の双子の弟のスペシャルハードコースを受けて見ようと思ったエミールだった。
「やる気はありそうだな。なら早速今日から一週間のスペシャルハードコースをやろうか?」
「今日からですか?!」
「そう。今日から一週間だ」
宰相エリオットはニヤリとして笑った。
まるでこれから面白くなるぞ、と言わんばかりの表情だ。
「よし。書類のチェックは終わりだな」
彼は書類を一つにまとめると早速、とある場所へと連れて行く事にした。
どちらにせよ日に一回は顔を見せに行くから、ものはついでである。
「エミール。私に着いて来なさい。早速、スペシャルハードコースを始めるぞ」
宰相エリオットが向かったのは近衛騎士団が訓練している大きな訓練所である。そこには近衛騎士団でも有名な双子騎士がいた。
ジョニーとユーマのライトニング兄弟である。彼らも丁度訓練中であった。
大臣のオグスまでいた。
「おーい」
「エリオット宰相だ」
「珍しい。同伴者もいるな」
「これから訓練か? ジョニー、ユーマ?」
「はい。まずは素振りをしようかなと」
「よし。エミール。彼らとまずは素振りをしようか」
「剣なんて握った事無いです。俺は」
「それなら、私が教えてやるよ」
「いいのか? オグス大臣?」
「たまには教えないと腕が鈍るからな」
「ホレ。これなら初心者でも扱いやすいだろう」
「どうも…」
エミールが渡されたのは一般的な簡素な作りの剣だった。初心者にも扱いやすい剣だ。握る所には滑り止めが巻かれてある剣だった。意外に軽い。
オグス大臣は同じ剣を握り、素振りの動作をする。そしてエミールにもそれをやらせる。ちょっとぎこちない。そこでオグス大臣は修整をする。
今度はかなり良い素振りだ。
ある程度、出来るようになったエミールにエリオットはこう課題を出した。
「まずは初日だし、五十回を目指してみようか?」
「五十回の素振りですか? はい、やってみます」
ジョニーとユーマもまずは軽く素振りを始める。これで筋肉を解す。それから剣術の稽古に入るのだ。
凄い速さで素振りをする二人。エミールも何だかやる気が出てきた。
彼らが素振りをしている間、オグス大臣とエリオット宰相は一言二言、会話を交わす。
一体、何の話をしているのかな?
エミールはそちらに神経が行きそうになる。それをユーマが注意した。
「よそ見をしていると怪我するぞ。剣を持っている時は集中するんだ! いいな?」
「は、はい。えーと──」
「ユーマだ。よろしく」
「は、はい。ユーマさん!」
「俺達は素振りを一日二百回やっているんだ」
「二百回もですか!?」
「それが終わると剣術の稽古。近衛騎士団を務める者なら普通の修行だよ」
そうして五十回の素振りを終わらせたエミール。初日で五十回をこなすとは。大したものだ。オグス大臣とエリオット宰相は素直に感心した。
「ご苦労さん。初日で五十回をこなすとはなかなか良い根性を持っているな。それならスペシャルハードコースもいけるかもな」
「それではオグス大臣、宜しく頼んだ」
「任せておけ」
「何の話ですか?」
「君には関係ない事。次の場所へ向かうぞ」
そうやってほぼ一日付き添って、エミールにスペシャルハードコースを受けさせたエリオット。
エミールはだいぶ疲れた様子だった。
「ほう…。一日耐え抜いたか。見どころあるじゃないか」
「もう──、一日中、身体を鍛える事ばかりだったじゃないですか…!」
「何だ? あっちの修行もしたいのか?」
「誰が…! …でも」
「ん…?」
「正直、したいかも知れない…」
本音が少し出たエミールに、宰相エリオットは優しく言った。
「最高に美味なものは最後にとっておくものだよ」
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