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27話 和平への道
宰相エリオットは客室にアトランティカ帝国の和平派の諜報部員を案内すると、しばらくそこで待つようにと言い部屋の外に出て、そして大臣オグスと将軍グリンウッド、宮廷魔導師アネットを呼び出す。
五分後。彼らは驚いた様子で客室にいるのがアトランティカ帝国の人間と聞いて警戒するような言葉を募る。
「アトランティカ帝国の和平派の諜報部員ね。信頼してもいいのか判らん話だな」
「そのために将軍にも同席して貰うんだよ。いいな? 将軍?」
「もう少し警備が厚い方がよろしいのでは?」
「そうだな。ライトニング兄弟を呼べるか?」
「彼らなら既に」
程なく客室の前に集合する彼らを見つけ、双子騎士ライトニング兄弟が剣を携帯して彼らの前に姿を現す。
「アトランティカ帝国の諜報部員が来ていると聞いたのですが」
「一応、和平派の諜報部員と名乗ってはいたが信頼するのはまだ危険だ。お前達にも同席を頼むぞ」
「はい」
「今回の会談は非公式だ。何が起こるか判らんから気を緩めるな」
「了解」
「こちらも敵対意志は無い事を示したいが、言葉を信頼しきるにはまだ早過ぎる。とりあえず何時でも自らの身を守れるだけの気迫は持って臨んでくれ。行くぞ」
その場に集まる者達が沈黙を守りながら頷いた。
そして、アトランティカ帝国の諜報部員を待たせている部屋へと入る。
「お待たせした。今回の会談は非公式ながらだが、こちらの者達も参加させたい。よろしいかな?」
「構いません」
「我々も敵対意志は無いが万が一の事も考えないとならない。物騒だとは思うが観念してくれ」
グリンウッド将軍は席には着かないで立ったままで話を聞くつもりだ。
オグス大臣と宮廷魔導師アネット、そして宰相エリオットが円卓に着いて、そしてアトランティカ帝国の和平派の諜報部員の話を聞く事にした。
「では。アトランティカ帝国の和平派と聞いたが、どういう状況なのか聞かせてくれるかな?」
「我々はパトリス帝国との戦争を望んではおりません。むしろパトリス帝国との和平交渉をしたい。しかし。女帝キリーはパトリス帝国との戦争を望んでおり、皆さんの地のものを欲しいと常日頃から口にしております」
「その中には例の泉も入っているのでしょうか?」
アネットが質問した。
浄化の泉はキリーにとっては欲しいものの一つに必ず入る筈だとアネットは考える。
和平派の諜報部員は包み隠さず話した。
「はい。『浄化の泉』も標的として入っております。その他にも、パトリス帝国の土地のもの。パトリス帝国を治める双子の兄弟の血筋。女帝は何もかも欲しいという話です」
「和平派の議員達はどうしているのかな?」
大臣オグスが確認を取るように質問する。
向こうの帝国にも議会はある筈だ。当然、徹底交戦派の議員と和平交渉派の議員はいる筈。諜報部員は答える。
「和平派の議員は水面下では女帝キリーの暗殺計画を立てております。しかし。キリーを奉る狂信的な兵士に裏で暗殺されているのが事実です。ですので、表立った活動は控えている状況です」
「エミールという青年には会ったかな? 我々が送った夜伽だが」
「エミール青年ならアトランティカ帝国でも評判になってまして、女帝キリーのお気に入りになってます」
「そこでものは相談ですが……」
パトリス帝国の者達は一呼吸を置いて、諜報部員の言葉を待った。
「エミール青年にキリー暗殺を頼みたい。アトランティカ帝国はキリーの言葉なら何でも実行に移す。なら、根源である彼女を亡き者にしたい。後は和平派がクーデターを起こしパトリス帝国との和平交渉の席に着きたい」
「エミールはその為に連絡を取りたいと仰ってました」
「エミール君。勝手にそんな事はできないから私達に連絡を取りたかったのね」
アネットはエミールの心配りに感心する。
確かに夜伽兼スパイだが、暗殺してこいとは命令してない。命令違反はできないから確認を取りたいと思ったのだろう。
しかも、国を治める女帝の暗殺は歴史的な事件だ。それがキッカケで戦争すらも起こる事は、それまでの歴史が雄弁に語る。
この非公式な会談で語られたキリー暗殺。
慎重に進める必要がある議題だった。
宰相エリオットは、しかし、慎重に進めるべきだが、時間は無いと読んだ。
この諜報部員を寄越すという事は近いうちにキリー暗殺の手筈は整っているという事だろう。
こちらの返事で、その手筈は動くと思った方がいい。
エミールは最後の確認の為に諜報部員にその話をしたのだろう。
女帝に手を掛ける覚悟はしている。
「エミールはその暗殺に関与する事は承諾しているという事だな?」
「はい」
「一日も話し合う時間はないとみた。皆の意見は?」
宰相エリオットはその場にいるパトリス帝国の重鎮の意見を聞いた。
「私はエミール君に賭けてもいい。アトランティカ帝国のクーデターが起ころうと起こるまいと関係ないし」
大臣オグスはこの暗殺にノッたようだ。
すかさずグリンウッド将軍も答える。
「そうだな。エミールの腕前を拝見させて貰おうかな」
アネットは想定外の事態が起きて、驚くがこれはチャンスと思ったらしい。
「よもや、こんな事態になるなんて想わなかったけど、チャンスよね。乗ってみるのも良いかも」
「ふむ。意外と皆はエミールのやる事に賛成しているな」
宰相エリオットは確認を取ると、彼もこう答えてその作戦を実行に移す事を承諾した。
「いいだろう。願ってもないチャンスだな。そちらのお手並みを拝見させて貰おう。抜かりは無いように私達は頼む」
「わかりました。話のわかる皆さんで良かった」
「しかし。それを済ませたら早々にこちらの帝国に帰還させる事を徹底させて頂く」
「その為の迎えは送らせて貰うぞ」
そうして細かい作戦の打ち合わせをして、そしてアトランティカ帝国の和平派の諜報部員はまた元の帝国へと戻る。
そして、数日の内に作戦が決行される事になった。
五分後。彼らは驚いた様子で客室にいるのがアトランティカ帝国の人間と聞いて警戒するような言葉を募る。
「アトランティカ帝国の和平派の諜報部員ね。信頼してもいいのか判らん話だな」
「そのために将軍にも同席して貰うんだよ。いいな? 将軍?」
「もう少し警備が厚い方がよろしいのでは?」
「そうだな。ライトニング兄弟を呼べるか?」
「彼らなら既に」
程なく客室の前に集合する彼らを見つけ、双子騎士ライトニング兄弟が剣を携帯して彼らの前に姿を現す。
「アトランティカ帝国の諜報部員が来ていると聞いたのですが」
「一応、和平派の諜報部員と名乗ってはいたが信頼するのはまだ危険だ。お前達にも同席を頼むぞ」
「はい」
「今回の会談は非公式だ。何が起こるか判らんから気を緩めるな」
「了解」
「こちらも敵対意志は無い事を示したいが、言葉を信頼しきるにはまだ早過ぎる。とりあえず何時でも自らの身を守れるだけの気迫は持って臨んでくれ。行くぞ」
その場に集まる者達が沈黙を守りながら頷いた。
そして、アトランティカ帝国の諜報部員を待たせている部屋へと入る。
「お待たせした。今回の会談は非公式ながらだが、こちらの者達も参加させたい。よろしいかな?」
「構いません」
「我々も敵対意志は無いが万が一の事も考えないとならない。物騒だとは思うが観念してくれ」
グリンウッド将軍は席には着かないで立ったままで話を聞くつもりだ。
オグス大臣と宮廷魔導師アネット、そして宰相エリオットが円卓に着いて、そしてアトランティカ帝国の和平派の諜報部員の話を聞く事にした。
「では。アトランティカ帝国の和平派と聞いたが、どういう状況なのか聞かせてくれるかな?」
「我々はパトリス帝国との戦争を望んではおりません。むしろパトリス帝国との和平交渉をしたい。しかし。女帝キリーはパトリス帝国との戦争を望んでおり、皆さんの地のものを欲しいと常日頃から口にしております」
「その中には例の泉も入っているのでしょうか?」
アネットが質問した。
浄化の泉はキリーにとっては欲しいものの一つに必ず入る筈だとアネットは考える。
和平派の諜報部員は包み隠さず話した。
「はい。『浄化の泉』も標的として入っております。その他にも、パトリス帝国の土地のもの。パトリス帝国を治める双子の兄弟の血筋。女帝は何もかも欲しいという話です」
「和平派の議員達はどうしているのかな?」
大臣オグスが確認を取るように質問する。
向こうの帝国にも議会はある筈だ。当然、徹底交戦派の議員と和平交渉派の議員はいる筈。諜報部員は答える。
「和平派の議員は水面下では女帝キリーの暗殺計画を立てております。しかし。キリーを奉る狂信的な兵士に裏で暗殺されているのが事実です。ですので、表立った活動は控えている状況です」
「エミールという青年には会ったかな? 我々が送った夜伽だが」
「エミール青年ならアトランティカ帝国でも評判になってまして、女帝キリーのお気に入りになってます」
「そこでものは相談ですが……」
パトリス帝国の者達は一呼吸を置いて、諜報部員の言葉を待った。
「エミール青年にキリー暗殺を頼みたい。アトランティカ帝国はキリーの言葉なら何でも実行に移す。なら、根源である彼女を亡き者にしたい。後は和平派がクーデターを起こしパトリス帝国との和平交渉の席に着きたい」
「エミールはその為に連絡を取りたいと仰ってました」
「エミール君。勝手にそんな事はできないから私達に連絡を取りたかったのね」
アネットはエミールの心配りに感心する。
確かに夜伽兼スパイだが、暗殺してこいとは命令してない。命令違反はできないから確認を取りたいと思ったのだろう。
しかも、国を治める女帝の暗殺は歴史的な事件だ。それがキッカケで戦争すらも起こる事は、それまでの歴史が雄弁に語る。
この非公式な会談で語られたキリー暗殺。
慎重に進める必要がある議題だった。
宰相エリオットは、しかし、慎重に進めるべきだが、時間は無いと読んだ。
この諜報部員を寄越すという事は近いうちにキリー暗殺の手筈は整っているという事だろう。
こちらの返事で、その手筈は動くと思った方がいい。
エミールは最後の確認の為に諜報部員にその話をしたのだろう。
女帝に手を掛ける覚悟はしている。
「エミールはその暗殺に関与する事は承諾しているという事だな?」
「はい」
「一日も話し合う時間はないとみた。皆の意見は?」
宰相エリオットはその場にいるパトリス帝国の重鎮の意見を聞いた。
「私はエミール君に賭けてもいい。アトランティカ帝国のクーデターが起ころうと起こるまいと関係ないし」
大臣オグスはこの暗殺にノッたようだ。
すかさずグリンウッド将軍も答える。
「そうだな。エミールの腕前を拝見させて貰おうかな」
アネットは想定外の事態が起きて、驚くがこれはチャンスと思ったらしい。
「よもや、こんな事態になるなんて想わなかったけど、チャンスよね。乗ってみるのも良いかも」
「ふむ。意外と皆はエミールのやる事に賛成しているな」
宰相エリオットは確認を取ると、彼もこう答えてその作戦を実行に移す事を承諾した。
「いいだろう。願ってもないチャンスだな。そちらのお手並みを拝見させて貰おう。抜かりは無いように私達は頼む」
「わかりました。話のわかる皆さんで良かった」
「しかし。それを済ませたら早々にこちらの帝国に帰還させる事を徹底させて頂く」
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