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第一章
ストーカーの山田くん
しおりを挟むストーカー初日。
初日と言えば、何でもドキドキして緊張するものですね。
ただ今の時間、早朝の五時です。
おはようございまーす(小声)
あっ、これは本当に言ってます。
盗聴器越しに、愛しの美咲ちゃんへ朝のご挨拶。
ストーカーに本日よりなったということで、佐伯さんから、美咲ちゃんへ呼び方を変えてみました。
こう、呼び方が変わると関係性も変わったんだなって実感する。できれば恋人が良かったけれど、ストーカーと被害者の関係性だけども、それでも嬉しいのは嬉しい。
美咲ちゃんが何時に起きるのかさっぱりで、早く来てはみたけれど、あれ?今日からお休みだから普通に惰眠をむさぼるんじゃね?と気が付いたのが、十時過ぎのことだった。
バカと言ってもらって大丈夫ですよ。
きっとここくらいまでが町内だろうなーってところをグルグルと何十週したことか……危うく小学生らしき女の子に通報されそうになった。
怪しくないよー大丈夫だよーって笑顔で言ってみたけれど、それが逆効果だったらしい。
解せぬ。
俺をそこら辺の変態と一緒にされても困るんだけどな。
俺はさ、美咲ちゃんだけのストーカーさんだから。皆のじゃないのよ、ごめんね。
泣き目で走り去って行った女の子の制服が、近くの中学校の制服であったことに後ろ姿でやっと気が付いた。
それくらいすぐ分かるだろって言われてもさ、美咲ちゃん以外の女の子ってどうでもいいじゃない?
でも、年の割に子供扱いされて嫌だったのかな?
今度会うことがあったらちゃんと謝罪しなければ。
どうでもいいけど、泣かせてしまったら美咲ちゃんに嫌われてしまうかもしれないし。
『ぅう~ん』
ふは、美咲ちゃんのお声だ~!!
可愛い、寝起きの声、可愛い!!
『んんー、ダイフク。おはよぉ』
おはよう、美咲ちゃん!!
ダイフクって言うのがちょっと気になるけど、ペットか何かかな?ワンとかニャンとかの鳴き声はしないけど。
俺のお小遣いで買える範囲内で探した盗聴器だったから、聞こえが悪くないか不安だったけれど、今のところ問題は無いみたいだ。よかった良かった。
ふう、声も聞けたし、今日のところは帰ろうかな。
早朝からウロウロしすぎて正直周りの皆様の目が痛いのよ。
洗濯中の奥様に胡乱げな目で見られ、散歩中のお爺ちゃんには持ってる杖を強く握りしめながら通り過ぎられた。
地域の警戒が強い、いい町だ。
女性の一人暮らしも安心だな。
皆さん、何度も言いますが大丈夫ですよ。俺は美咲ちゃん専用のストーカーなんで。安心して下さい。
美咲ちゃんに朝の挨拶をするというミッションをクリアした俺は、悠々と急勾配の坂道を下っていった。
後ろに不審な影があるのを知らずに。
毎朝、五時に美咲ちゃんの家の周りをウロウロする。
今日でもう二週間とちょっと。今日は日曜で座ってる公園にも沢山の子供たちが遊びに来てる。
二週間……ここまで来ると周りの方も呆れたような目をなさるようになってきた。
粘り勝ちってやつかな?
今のところは通報とかされる様子も無いみたいだし。よかったと言えるだろう。
しかし、しかしだよ美咲ちゃん。
確かに今はお休み期間中だけどもさ、ちゃんと朝から起きないとリズムとか崩れちゃうよ?
何時に起きるか分からない中、早く来る俺も俺だけどさぁ、下手すると十二時過ぎてからしか起きないってどうなの?
これはきっちりお説教しなければ。
……できないけど。
時計を見れば、もうお昼。
今日は最長記録更新の一時。
朝から歩き疲れてクタクタの俺です。
お腹も空いてきたし。一体いつまで寝るつもりなの美咲ちゃん。
さっきから座ってるベンチの前を首をかしげたりしながら、疑いの目で小っちゃい子供たちが見ていく。
純粋な子供の目ってたまに凶器にもなるよね。
お兄さん、心が痛くなるからその目で見るの止めてもらえるかな。
『ガサッ』
俺のHPが限界に来た頃、唐突にイヤホンから物音がした。
やっと起きてくれたのかな?
『ううん、あーテステス。ただ今マイクのテスト中。テステス、テステス……ってよく聞くけどこれって何の意味があるのかしらね。なんかほかに言えば良いのにっていつも思ってるのよ。どう思う?そこのストーカーさん』
ん?
えっどういう事これ。
美咲ちゃん?
『これを盗聴しているバカ者へ告ぐ、おまえの正体はバレている。大人しく投降しなさい。制限時間は五分、それまでに私の家に来て土下座しなければ、警察へ通報する。』
はっ、えっどういう事?バレてるってなに?
何で分かったの!?
『もう一度繰り返す、お前の正体はバレている。大人しく、頭を丸めて出てきなさい』
あれ、さっきより酷くなってない?
頭丸めてこいなんてさっき言ってなかったよね?
『おい、そこでぐだぐだ考えたところで何も分からねーよ、さっさと来いやコラー』
おぉ、美咲ちゃんの言葉が荒々しく為ってる。
でも、何でかな……ゾクゾクしちゃう。
「おい、そこの変態。早く行かなくていいのか?」
声のした方を見れば、小学生ぐらいの可愛らしい女の子が立っていた。
…………えっと、会ったことある、よね?
名前知らないけど。
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