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異世界の下着事情
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とりあえず、部屋を出て生活用品を買いに行くことにする。稼ぎ口が判然としないままでも必要な物はあった。例えばプリムラのエッチな下着とか。もちろん裸もいいんだけれど、それは別腹みたいな。
「スケベな顔のご主人様も素敵ね」
褒めてるようで褒めてないが甘んじて受けよう。
部屋を出て鍵をかけ、階段を下りて鍵を預けにカウンターへ向かった。
「出かける」
「はい、お預かりします」
「近くに生活用品を売る店は?」
「バスだと三つ先、地下鉄だと一駅先にお店が立ち並ぶエリアがございます」
バスはともかく地下鉄まであると。広い町だからその類の移動手段は発達しているようだ。ただ、それだと瞬間移動やワープみたいな魔法には期待できないな。
カウンターの女スタッフに礼を言って宿を出た。バスでもいいが一度電車を体験しておこう。
「地下鉄の入り口は一目でわかるか?」
ふとぶっきらぼうな口調のままだなと思ったが、奴隷のご主人様なことを考えればそのほうがさまになりそうだ。
「あれじゃないかしら」
歩道にある長方形の小さな建築物を覗いたら地下への階段が見えた。そこを下りていくと光量の足りていない灯りで照らされた階段が続く。階段は建物で言えば二階分ぐらいだ。
それが終わると開けた場所に出る。改札があるだけだが機械ではなく人力で、駅員風の制服を着た職員が改札を通る人からお金を受け取っている。料金表が見当たらないな。
「いくら払えばいい?」
「下層では六百ディルだったわ」
「一駅ごとに?」
「どこで降りようと値段は一緒ね」
それはまたサービスがいい。
「バスはどうなんだ?」
「四百ディルね」
「それも距離に関わらず?」
「そうよ」
あまり変わらないな。近くならバスで遠い場所は地下鉄って具合で使い分けることになりそうだ。となるとタクシーの料金が飛び抜けていた。一番便利だしそうなるか。
改札で二人分の料金を支払って進むと駅のホームに出る。灯りが弱いせいか寂れた地下鉄の雰囲気を感じた。
数字が書かれている時刻表らしきものがあったため、電車の来る時間はなんとなくわかる。近くにあった時計と見比べるともうすぐ到着だ。
ホームで待っている人の数を見るに利用率はそこそこ。手持ち無沙汰にプリムラを眺めていると電車がやってきた。電車と言ってるけれど、動力が電気じゃない可能性もあるのか。
「これの名前は?」
「魔導列車」
電車に指を差して聞くとそんな答えが返ってきた。さすがにプリムラも少し呆れた顔だ。
魔導ってことは魔法なりが動力と想像がつく。道を走っている車もその可能性があった。
魔導列車の扉が開いたので乗り込む。中は両サイドに長い椅子が設置され、つり革もあった。利便性を求めるとこういう形に落ち着くのかもしれない。
椅子に座るとプリムラが俺の前でつり革を掴んだ。隣空いてますよ。お前の横なんて座りたくないって? 悲しくなるからどうか座ってほしい。
「座ったらどうだ」
「そうね、座らせていただきます」
一々許可が必要なんて、奴隷も大変だな。
「心の広いご主人様で感激です」
「他のご主人様はそんなに心が狭いんだな」
「奴隷にそれほど興味のない人が多いんじゃないかしら」
「何千万も払っておいて?」
「その場合は夫婦だったり愛人として迎えられるんだと思うけど」
そういう場合もあるのか。
「なら、俺もプリムラと結婚?」
「ご主人様が望むならね」
奴隷自身の意思は重要視されないんだな。いくら見覚えあるものが多くてもやはり異世界。価値観そのままというわけにはいかなそうだ。
慣れた揺れにうとうとする間もなく次の駅へ着いた。列車を降りて今度はお金を支払わずに改札を通る。階段から地上へ出ると人の数はそこそこ多い。そして、言われた通りに色々な店があった。
ガラス張りのディスプレイにはマネキンが服を着ていたり家具が置いてあったりで、どこから入ればいいのか迷ってしまう。
まずはプリムラの服を見繕うか。白いワンピース姿はそそるが少々薄着過ぎた。
「服を買おうと思う」
「ご主人様ならなんでも似合うと思うわよ」
俺なんてジャージで十分だから。まあ買いはするけれど、周りを見ると原色系の服が多くて似合う気がしなかった。
「買うのはプリムラの服からだ」
「着られればなんでもいいわ」
「ショートパンツにひざ上までのソックス、それとブーツを合わせよう」
「……随分と具体的ね」
せっかくの異世界なんだし心機一転、欲望へ忠実に生きていこう。まずは女物を売ってそうな店に入ってみた。
しかし、店の中には男など一人もおらず。場違い感がちょっと恥ずかしかった。
「気になる服は?」
一人では挙動不審になってしまうのでプリムラに引っついて回ることにする。
「ショートパンツはここかしら」
赤緑青と派手なのが多いが、プリムラにはどれも似合いそうだった。
「これ、見て」
「ん?」
値札には六千ディルと書かれている。予想していたラインなので特に驚きはない。
「あ、こっちは二千ディルね」
触り比べてみると素材で値段が変わるようだ。それに、安いほうは可愛さの点でも劣っている気がする。着たとして映えそうなのは高い物が多かった。
「これにしよう」
ピンとくる物を発見して手に取ってみる。
「八千ディルもするじゃない……」
レザーっぽい黒のショートパンツだ。テロテロした感じはなく安っぽさもない。だからそれなりの値段なんだろう。
「お金がなくなって、あたしを奴隷として売るのは止めて欲しいんだけど」
「プリムラを手放すつもりはない」
「……そう」
会ったばっかりでも隣にいてなんとなく居心地は良かった。異世界での初めてできた身内感にひな鳥の気持ちだ。
奴隷として気を使ってくれているだけの可能性はあるのだが、手のひらで転がされるのも悪くなかった。
他にも店を二軒回ってプリムラの服を揃えた。自分の服は一軒で済ませたけれど。無難に黒系統の地味なやつを。
「そうだ、下着もいるな」
最高にエロいのが。
「ご主人様ってお金持ちなの?」
「これを見ろ」
ポケットの札束を見せる。少し減ったがまだまだ厚みは大丈夫、なはず。
「無用心ね」
「預けておくなら銀行?」
「それ以外にある?」
「うん、ないな」
あとで行くことにしよう。
「下着は、この店……?」
ディスプレイではマネキンが下着を着けている。しかし、パンツはともかくこのブラジャー……乳首が見事に丸出しだった。
「入らないの?」
「いや、入る」
完全にエロいタイプのランジェリーに見える。これが普通なのか?
ともかく行くしかない。まさか異世界に来て初めての冒険が下着を売る店になるとは思わなかった。
「……」
鼓動が早くなるのがわかる。店にいる客層はもちろん女のみ。下着を選んで試着室に入っていく姿だけで不思議と興奮してきた。
「どうしたの?」
「別に」
さすがにここではどれを勧めればいいのか……。やはりプリムラについて回るしか打つ手はなかった。
「これでいい?」
「ダメだ」
「どうして?」
「どうしてって……」
かぼちゃパンツはノーサンキュー。それだけは断固拒否の方向で。
「下着なんてこだわる必要があるのかしら」
どうやらプリムラには俺を誘惑するという意識が欠けているらしい。確かにイケメンと呼べるほどの人物ではないが、ご主人様なのだ。そう、ご主人様のが欲しくてたまらないの、みたいなありきたりとも言えるやり取りが望ましかった。
ゴルマフのやつめ、大事な部分の教育ができていないじゃないか。こうなれば仕方ない。俺がプリムラに似合う下着をチョイスするしか道はなかった。
「プリムラにはこの下着が似合う」
プリムラの髪色と同じ色をした下着だ。パンツはTバックほどではないにしろ、中々の際どさ。そして、ブラジャーに至っては下乳を支えることだけに特化したデザイン。
「そういうのが好きなの?」
「プリムラに似合うと思っただけだ」
「そう。ならそれにするわ」
こんな下着を選んで似合うと言っても怒られないのか。ビッチ呼ばわりしてるようなものでは?
「これも買っていい?」
プリムラが手に取ったのは丸い形の薄い布……?
「乳首が擦れて痛い時があるから」
「……それの名前は?」
「ニップルシールね」
完全に乳首シールだった。
「ひとつ聞くが、ブラジャーのデザインは乳首を丸出しにするのが一般的なのか?」
「他には見たことがないわよ」
「なるほど」
異世界進みすぎだな。
「じゃ、じゃあ……このハートの形をしたやつとか……」
「これがいいの?」
「……はい」
「じゃあそうするわ」
ありがとうございます。
「スケベな顔のご主人様も素敵ね」
褒めてるようで褒めてないが甘んじて受けよう。
部屋を出て鍵をかけ、階段を下りて鍵を預けにカウンターへ向かった。
「出かける」
「はい、お預かりします」
「近くに生活用品を売る店は?」
「バスだと三つ先、地下鉄だと一駅先にお店が立ち並ぶエリアがございます」
バスはともかく地下鉄まであると。広い町だからその類の移動手段は発達しているようだ。ただ、それだと瞬間移動やワープみたいな魔法には期待できないな。
カウンターの女スタッフに礼を言って宿を出た。バスでもいいが一度電車を体験しておこう。
「地下鉄の入り口は一目でわかるか?」
ふとぶっきらぼうな口調のままだなと思ったが、奴隷のご主人様なことを考えればそのほうがさまになりそうだ。
「あれじゃないかしら」
歩道にある長方形の小さな建築物を覗いたら地下への階段が見えた。そこを下りていくと光量の足りていない灯りで照らされた階段が続く。階段は建物で言えば二階分ぐらいだ。
それが終わると開けた場所に出る。改札があるだけだが機械ではなく人力で、駅員風の制服を着た職員が改札を通る人からお金を受け取っている。料金表が見当たらないな。
「いくら払えばいい?」
「下層では六百ディルだったわ」
「一駅ごとに?」
「どこで降りようと値段は一緒ね」
それはまたサービスがいい。
「バスはどうなんだ?」
「四百ディルね」
「それも距離に関わらず?」
「そうよ」
あまり変わらないな。近くならバスで遠い場所は地下鉄って具合で使い分けることになりそうだ。となるとタクシーの料金が飛び抜けていた。一番便利だしそうなるか。
改札で二人分の料金を支払って進むと駅のホームに出る。灯りが弱いせいか寂れた地下鉄の雰囲気を感じた。
数字が書かれている時刻表らしきものがあったため、電車の来る時間はなんとなくわかる。近くにあった時計と見比べるともうすぐ到着だ。
ホームで待っている人の数を見るに利用率はそこそこ。手持ち無沙汰にプリムラを眺めていると電車がやってきた。電車と言ってるけれど、動力が電気じゃない可能性もあるのか。
「これの名前は?」
「魔導列車」
電車に指を差して聞くとそんな答えが返ってきた。さすがにプリムラも少し呆れた顔だ。
魔導ってことは魔法なりが動力と想像がつく。道を走っている車もその可能性があった。
魔導列車の扉が開いたので乗り込む。中は両サイドに長い椅子が設置され、つり革もあった。利便性を求めるとこういう形に落ち着くのかもしれない。
椅子に座るとプリムラが俺の前でつり革を掴んだ。隣空いてますよ。お前の横なんて座りたくないって? 悲しくなるからどうか座ってほしい。
「座ったらどうだ」
「そうね、座らせていただきます」
一々許可が必要なんて、奴隷も大変だな。
「心の広いご主人様で感激です」
「他のご主人様はそんなに心が狭いんだな」
「奴隷にそれほど興味のない人が多いんじゃないかしら」
「何千万も払っておいて?」
「その場合は夫婦だったり愛人として迎えられるんだと思うけど」
そういう場合もあるのか。
「なら、俺もプリムラと結婚?」
「ご主人様が望むならね」
奴隷自身の意思は重要視されないんだな。いくら見覚えあるものが多くてもやはり異世界。価値観そのままというわけにはいかなそうだ。
慣れた揺れにうとうとする間もなく次の駅へ着いた。列車を降りて今度はお金を支払わずに改札を通る。階段から地上へ出ると人の数はそこそこ多い。そして、言われた通りに色々な店があった。
ガラス張りのディスプレイにはマネキンが服を着ていたり家具が置いてあったりで、どこから入ればいいのか迷ってしまう。
まずはプリムラの服を見繕うか。白いワンピース姿はそそるが少々薄着過ぎた。
「服を買おうと思う」
「ご主人様ならなんでも似合うと思うわよ」
俺なんてジャージで十分だから。まあ買いはするけれど、周りを見ると原色系の服が多くて似合う気がしなかった。
「買うのはプリムラの服からだ」
「着られればなんでもいいわ」
「ショートパンツにひざ上までのソックス、それとブーツを合わせよう」
「……随分と具体的ね」
せっかくの異世界なんだし心機一転、欲望へ忠実に生きていこう。まずは女物を売ってそうな店に入ってみた。
しかし、店の中には男など一人もおらず。場違い感がちょっと恥ずかしかった。
「気になる服は?」
一人では挙動不審になってしまうのでプリムラに引っついて回ることにする。
「ショートパンツはここかしら」
赤緑青と派手なのが多いが、プリムラにはどれも似合いそうだった。
「これ、見て」
「ん?」
値札には六千ディルと書かれている。予想していたラインなので特に驚きはない。
「あ、こっちは二千ディルね」
触り比べてみると素材で値段が変わるようだ。それに、安いほうは可愛さの点でも劣っている気がする。着たとして映えそうなのは高い物が多かった。
「これにしよう」
ピンとくる物を発見して手に取ってみる。
「八千ディルもするじゃない……」
レザーっぽい黒のショートパンツだ。テロテロした感じはなく安っぽさもない。だからそれなりの値段なんだろう。
「お金がなくなって、あたしを奴隷として売るのは止めて欲しいんだけど」
「プリムラを手放すつもりはない」
「……そう」
会ったばっかりでも隣にいてなんとなく居心地は良かった。異世界での初めてできた身内感にひな鳥の気持ちだ。
奴隷として気を使ってくれているだけの可能性はあるのだが、手のひらで転がされるのも悪くなかった。
他にも店を二軒回ってプリムラの服を揃えた。自分の服は一軒で済ませたけれど。無難に黒系統の地味なやつを。
「そうだ、下着もいるな」
最高にエロいのが。
「ご主人様ってお金持ちなの?」
「これを見ろ」
ポケットの札束を見せる。少し減ったがまだまだ厚みは大丈夫、なはず。
「無用心ね」
「預けておくなら銀行?」
「それ以外にある?」
「うん、ないな」
あとで行くことにしよう。
「下着は、この店……?」
ディスプレイではマネキンが下着を着けている。しかし、パンツはともかくこのブラジャー……乳首が見事に丸出しだった。
「入らないの?」
「いや、入る」
完全にエロいタイプのランジェリーに見える。これが普通なのか?
ともかく行くしかない。まさか異世界に来て初めての冒険が下着を売る店になるとは思わなかった。
「……」
鼓動が早くなるのがわかる。店にいる客層はもちろん女のみ。下着を選んで試着室に入っていく姿だけで不思議と興奮してきた。
「どうしたの?」
「別に」
さすがにここではどれを勧めればいいのか……。やはりプリムラについて回るしか打つ手はなかった。
「これでいい?」
「ダメだ」
「どうして?」
「どうしてって……」
かぼちゃパンツはノーサンキュー。それだけは断固拒否の方向で。
「下着なんてこだわる必要があるのかしら」
どうやらプリムラには俺を誘惑するという意識が欠けているらしい。確かにイケメンと呼べるほどの人物ではないが、ご主人様なのだ。そう、ご主人様のが欲しくてたまらないの、みたいなありきたりとも言えるやり取りが望ましかった。
ゴルマフのやつめ、大事な部分の教育ができていないじゃないか。こうなれば仕方ない。俺がプリムラに似合う下着をチョイスするしか道はなかった。
「プリムラにはこの下着が似合う」
プリムラの髪色と同じ色をした下着だ。パンツはTバックほどではないにしろ、中々の際どさ。そして、ブラジャーに至っては下乳を支えることだけに特化したデザイン。
「そういうのが好きなの?」
「プリムラに似合うと思っただけだ」
「そう。ならそれにするわ」
こんな下着を選んで似合うと言っても怒られないのか。ビッチ呼ばわりしてるようなものでは?
「これも買っていい?」
プリムラが手に取ったのは丸い形の薄い布……?
「乳首が擦れて痛い時があるから」
「……それの名前は?」
「ニップルシールね」
完全に乳首シールだった。
「ひとつ聞くが、ブラジャーのデザインは乳首を丸出しにするのが一般的なのか?」
「他には見たことがないわよ」
「なるほど」
異世界進みすぎだな。
「じゃ、じゃあ……このハートの形をしたやつとか……」
「これがいいの?」
「……はい」
「じゃあそうするわ」
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