11 / 18
解体してとんずら
しおりを挟む
床に転がるボディポットへ近づいてまじまじと確認する。
「触っても大丈夫か?」
「ええ」
了承を得たのでプリムラの太ももを触ってみた。すべすべで非常に良い触り心地だ。
「……何をしているのかしら」
ジト目で睨まれたので、咳を一つしてボディポットに手を伸ばす。あれだけ機敏な動きをして殴り飛ばされていたから軽いのかと思いきや、一切持ち上がらないほどに重かった。
銃でダメージを与えられるのかも怪しい。持って帰るのですら骨だろう。
「担ぐには難儀だな」
「全部がお金になるわけじゃないわよ」
確かに、ひしゃげた金属なんて売れたとして二束三文か。
「なるのは極一部だけね」
そう言ってプリムラはボディポットを解体し始めた。このための工具か、と思ったら素手の力技だった。そんな細い腕のどこに怪力が……。
「もしかして、魔力で身体能力を上げる方法も?」
「できるわよ。ベールを使うのと同じような感覚かしら」
なるほど。それなら俺にもできるのか。
「ただし、ベールに回す魔力は温存しておかないと痛い目を見るわね」
魔力の総量を把握しておく必要があるんだな。そればっかりは経験で学ぶしかない。
プリムラはボディポットの中に手を突っ込み、何かを取り出した。
「心臓……?」
形がそれっぽい。見るからに機械ではあるが。
「擬似魔力器官よ」
動力源になるんだな。擬似ってことは、そもそもの魔力器官がこんな形なのか。今の俺がレントゲンを撮ったら心臓が二つ映りそうだ。
「お金になるのはここぐらいだと思う」
「いくらになる?」
「五百ディル前後かしら」
単純計算で一日のノルマが十体か。だったらなんとかなる気がしてきた。ただ、それだけだとつまらないと思ってしまう自分がどこかにいる。
毎晩プリムラと楽しむだけでも充実した日々になるだろう。しかし、欲望へ忠実にというモットーを考えれば目指すところは別にある。そう、複数の奴隷に囲まれてのハーレム生活だ。
思わずにやけてしまう。そして、そんな表情ををプリムラに見られていた。
現状、お金を稼ぐ手段は迷宮しかない。より手ごわいストレンジを倒して収入のアップを図るしか道はなかった。当面は迷宮通いだな。
「残骸は放置でいいのか?」
「スイーパーが回収していくからそのうちなくなるわよ」
それもストレンジ?
「タイミングよく来たわね」
言われて通路の先を見ると何かがやって来た。
円柱型の部分はボディポットと似ているが、足元が違う。何本もの細い足があって忙しく動いていた。
それに目立つのが上部だ。キノコの傘みたいな形になっている。というかキノコにしか見えなくなってきた。
傘の上にはランプがついていて黄色く点滅を繰り返す。
「あれに危険は?」
プリムラが棒立ちのままなので少し焦ってしまう。
「生きてる人には無害だから大丈夫よ」
死んだら襲ってくるのか。いや、襲うではなく回収されるわけだ。
プリムラの視線は通路の先に固定されたまま。言わなくても警戒してくれていた。本当に頼りになる。
そして、スイーパーがすぐ近くまで来た。ボディポットの残骸そばに寄るとわしゃわしゃ動く足がより活発になり、残骸を取り込み始めた。
若干のキモさがあるが、的にはちょうどいいかもしれない。銃の試し撃ちにはもってこいだった。
銃を構えて魔力を流す。狙いを定めてそのまま引き金を引いた。
光の弾が銃身から飛び出し、寸分の狂いなくスイーパーの胴体へ命中する。反動がほとんどないため意外に上手くできた。
スイーパーの胴体には風穴が一つ。銃の威力は申し分なしだ。
「ちょっと! 何してるのよ!?」
なぜかプリムラに詰め寄られた。
「逃げるわよ!」
プリムラが来た道を走って戻っていく。どうも危険な状況らしい。俺も走るがプリムラが早すぎてどんどん離されてしまう。
プリムラが振り向いて俺を見ると引き返してきて抱えられた。お姫様抱っこではなく、ただただ荷物としての持ち方だ。頭を後ろにして抱えられているため尻尾が顔に当たってむず痒かった。
「ん……?」
通路の奥から赤い光が見える。点滅を繰り返して近づいてきていた。
「なんだあれ……」
「早いわね……」
プリムラが焦ったように呟く。あれもストレンジ……?
プリムラよりも移動が速いのか、だんだんと姿が見えてきた。
またボディポットに似た形状だ。円柱型で頭に赤いランプが点灯している。しかし、何かが変だ。周囲がぼやけて見えるというか……。
プリムラの動きが止まる。どうやらリフトまで戻ってきたようだ。
金網のドアが開く音がしてリフトに放り込まれる。プリムラもリフトへ入るとレバーを操作、ドアが閉まった。
立ち上がって通路を見ると金網のすぐ向こうに謎のストレンジが迫る。そして、凄まじい金属音が響き始めた。
「……びっくりした」
音は止まる気配がない。リフトの金網が攻撃を受けているのか?
空気を裂くような音が金属音に混じる。振動がリフト内にまで届いていた。
ボタンを押すとリフトは動き始め、謎のストレンジともおさらばだ。よくわからないが、無地で良かった。
「触っても大丈夫か?」
「ええ」
了承を得たのでプリムラの太ももを触ってみた。すべすべで非常に良い触り心地だ。
「……何をしているのかしら」
ジト目で睨まれたので、咳を一つしてボディポットに手を伸ばす。あれだけ機敏な動きをして殴り飛ばされていたから軽いのかと思いきや、一切持ち上がらないほどに重かった。
銃でダメージを与えられるのかも怪しい。持って帰るのですら骨だろう。
「担ぐには難儀だな」
「全部がお金になるわけじゃないわよ」
確かに、ひしゃげた金属なんて売れたとして二束三文か。
「なるのは極一部だけね」
そう言ってプリムラはボディポットを解体し始めた。このための工具か、と思ったら素手の力技だった。そんな細い腕のどこに怪力が……。
「もしかして、魔力で身体能力を上げる方法も?」
「できるわよ。ベールを使うのと同じような感覚かしら」
なるほど。それなら俺にもできるのか。
「ただし、ベールに回す魔力は温存しておかないと痛い目を見るわね」
魔力の総量を把握しておく必要があるんだな。そればっかりは経験で学ぶしかない。
プリムラはボディポットの中に手を突っ込み、何かを取り出した。
「心臓……?」
形がそれっぽい。見るからに機械ではあるが。
「擬似魔力器官よ」
動力源になるんだな。擬似ってことは、そもそもの魔力器官がこんな形なのか。今の俺がレントゲンを撮ったら心臓が二つ映りそうだ。
「お金になるのはここぐらいだと思う」
「いくらになる?」
「五百ディル前後かしら」
単純計算で一日のノルマが十体か。だったらなんとかなる気がしてきた。ただ、それだけだとつまらないと思ってしまう自分がどこかにいる。
毎晩プリムラと楽しむだけでも充実した日々になるだろう。しかし、欲望へ忠実にというモットーを考えれば目指すところは別にある。そう、複数の奴隷に囲まれてのハーレム生活だ。
思わずにやけてしまう。そして、そんな表情ををプリムラに見られていた。
現状、お金を稼ぐ手段は迷宮しかない。より手ごわいストレンジを倒して収入のアップを図るしか道はなかった。当面は迷宮通いだな。
「残骸は放置でいいのか?」
「スイーパーが回収していくからそのうちなくなるわよ」
それもストレンジ?
「タイミングよく来たわね」
言われて通路の先を見ると何かがやって来た。
円柱型の部分はボディポットと似ているが、足元が違う。何本もの細い足があって忙しく動いていた。
それに目立つのが上部だ。キノコの傘みたいな形になっている。というかキノコにしか見えなくなってきた。
傘の上にはランプがついていて黄色く点滅を繰り返す。
「あれに危険は?」
プリムラが棒立ちのままなので少し焦ってしまう。
「生きてる人には無害だから大丈夫よ」
死んだら襲ってくるのか。いや、襲うではなく回収されるわけだ。
プリムラの視線は通路の先に固定されたまま。言わなくても警戒してくれていた。本当に頼りになる。
そして、スイーパーがすぐ近くまで来た。ボディポットの残骸そばに寄るとわしゃわしゃ動く足がより活発になり、残骸を取り込み始めた。
若干のキモさがあるが、的にはちょうどいいかもしれない。銃の試し撃ちにはもってこいだった。
銃を構えて魔力を流す。狙いを定めてそのまま引き金を引いた。
光の弾が銃身から飛び出し、寸分の狂いなくスイーパーの胴体へ命中する。反動がほとんどないため意外に上手くできた。
スイーパーの胴体には風穴が一つ。銃の威力は申し分なしだ。
「ちょっと! 何してるのよ!?」
なぜかプリムラに詰め寄られた。
「逃げるわよ!」
プリムラが来た道を走って戻っていく。どうも危険な状況らしい。俺も走るがプリムラが早すぎてどんどん離されてしまう。
プリムラが振り向いて俺を見ると引き返してきて抱えられた。お姫様抱っこではなく、ただただ荷物としての持ち方だ。頭を後ろにして抱えられているため尻尾が顔に当たってむず痒かった。
「ん……?」
通路の奥から赤い光が見える。点滅を繰り返して近づいてきていた。
「なんだあれ……」
「早いわね……」
プリムラが焦ったように呟く。あれもストレンジ……?
プリムラよりも移動が速いのか、だんだんと姿が見えてきた。
またボディポットに似た形状だ。円柱型で頭に赤いランプが点灯している。しかし、何かが変だ。周囲がぼやけて見えるというか……。
プリムラの動きが止まる。どうやらリフトまで戻ってきたようだ。
金網のドアが開く音がしてリフトに放り込まれる。プリムラもリフトへ入るとレバーを操作、ドアが閉まった。
立ち上がって通路を見ると金網のすぐ向こうに謎のストレンジが迫る。そして、凄まじい金属音が響き始めた。
「……びっくりした」
音は止まる気配がない。リフトの金網が攻撃を受けているのか?
空気を裂くような音が金属音に混じる。振動がリフト内にまで届いていた。
ボタンを押すとリフトは動き始め、謎のストレンジともおさらばだ。よくわからないが、無地で良かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
66
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる