魔王〜明けの明星〜

黒神譚

文字の大きさ
19 / 102
第2章 新国家「エデン」

第19話 美の化身

 明けの明星様が金塊きんかいを持ってきたとき、わたくしをめぐってのお金の競り合いに終止符が打たれたのでした。
 大国スパーダもアンドレア様の祖国ドラァーゴも嫁取合戦にここまでお金が払えないと思ったらしく、それ以上の融資は申し出てきませんでした。
 魔王様が姿を見せてから5日も経つと私の下へ話をしに来る諸侯もいなくなったので、それで終わったのだと落ち着くことができました。ただ、私は正直、ホッと致しました。
 
 だって、この出来レースはズル過ぎるのです。魔王様の魔法で作ったインチキです。そうとは知らずに多くの国の殿方が私に貢いできました。それは本当に申し訳が無いことです。いくら魔王様の命令に逆らえずにやったこととはいえ、殿方たちの御好意を利用しあざむくような行為をして良心が痛まないわけがありません。そして、これ以上の被害が出ずに済んだことに安心してしまったのです。

 執務室の窓から外を見ると諸侯の融資のおかげで城下町が随分再生しているのがわかります。
 各国のおかげでこれほどの短期間で民衆の暮らしが楽になったのは本当に有難いことでした。そして、融資されたお金の使い道を城ではなくて城下町にあてがったのは、せめて善行のためにお金を使おうという罪から逃げ出したいという気持ちの表れだったのかもしれません。

 悲しい・・・。私は、このようなことになってしまって本当に悲しい。
 しかし、これほど城下町が再生されて民衆が喜ぶ姿をこれほど短期間で成し遂げることは他の方法ではまず不可能だったことを考えると・・・・・・複雑な思いです。
 
「ああ・・・。せめて私に力があれば・・・・・・。」

 私が窓の外から城下を見つめて呟きに対し魔王様は仰いました。

「お前に力があればやと?
 何、寝言ぬかしとんねんいっているんだい。街の再生は、この世にお前ほど力を持った女はおらんちゅーこといないということを証明した証拠やで? 誇ったらええ。」

 魔王様は意外なことを仰いました。自分の力が足りないから町も再建できずに詐欺まがいの手段を甘んじて受け入れたというのに、そんな私にこの世で私ほどの力を持った女はいないと魔王様は仰ったのです。

「多くの権力者は暴力を使って富を得るが、お前は魔神と比類なき美貌でもって男どもから金を搾り取ったのだ。
 これが力でなくて何という。美は力なのだ。」
「詐欺行為、出来レースと心を痛める必要は何処にもない。
 金は賢く奪い合うものなのだ。
 権謀術数けんぼうじゅっすう、謀略を使って他者を蹴落として商売で成功する者も多い中、お前は何もせずに、ただ男どもに笑顔と乳房を見せびらかすだけで勝利したのだ。方法に善悪などない。それが商売の本質だ。」

「誇りに思うがええっ!!
 ラーマ。お前は美しいっ!!
 お前はその美貌で世界を手中に収めることも、破滅させることも出来るんやっ!!」

 この私の外見には世界を滅ぼす力がある。にわかかには信じがたいお話ですが、魔王様は自信満々で仰ったのです。
 そんな私の疑問を察した魔王様はお隣に立っていたお姉様の腰元を抱きかかえて引き寄せると、服を優しく脱がし始めるのでした。

「ああっ・・・・・・。お許しを・・・旦那様。どうかお許しください。」

 お姉様が涙をにじませて懇願こんがんしても魔王様は服を脱がそうとする手を止めようとはなさりませんでした。私は思わず歩み寄って魔王様の手を掴んで止めに入ります。

「おやめくださりませっ!!
 人前で女性に辱めを与えるなど、それが男のすることですかっ!!
 お姉様が泣いていおられるではないですかっ!!」

 必死になって魔王様をお止めするのですが、魔王様は笑って卑猥ひわいなことを仰ったのです。

「お前は何もわかってない。この女は俺を求めてるんや。・・・・・・
 泣いとるやとないているだと
 与えてほしいから、男が最も喜ぶ反応を見せとるだけだみせているだけや
 このびた目を見ろ。これが嫌がっている女の目に見えるんかのか
 見よ。周りの男どもをっ!!」

 言われるがままに見ると、男どもは全員、お姉様に釘付けになったように見入っていました。あの貞淑ていしゅくなヴァレリオ男爵でさえも・・・・・・。

「きゃああっ!! な、なにを見ているんですかっ!
 見てはいけませんっ!! 私のお姉様をいやらしい目で見ないで~~~っ!!」

 私はもう、腹が立って執務室から全員追い出すと魔王様が笑うのです。

「見たかっ!! これが美の力や。
 この女を見ろ。常識外れに大きなこの乳房は絹のような肌触りで水袋のように柔らかい。そしてどんな火酒よりも男を酔わせる甘露がとどめなくあふれる秘壺を隠し持つ。
 わかるか? この女の前では、どんな権力者も屈強な男もひざまずんやのだ
 今、お前がその目で確かめたようにな・・・・・・。」

 魔王様はそこまでお話になられると、お姉様を開放して私の目の前まで歩み寄ってくるのです。
 そして、私の額にご自身の額がくっつくほどに近づけるのでした。
 それだけで私は息が止まってしまうと思うほど、動揺してしまいます。
 その御尊顔ごそんがんは、お美しすぎたのです。
 私はその時に改めて魔王様が仰っていた美貌の魔力を思い知りました。
 清流のように美しい青い瞳にお天道様のように輝く金の髪。白雪のように輝く肌に薄いピンクの唇。
 お美しすぎる魔王様・・・。私は魔王様の御顔がこうして近づくだけで胸が高鳴り、呼吸は乱れ、肌は汗ばみ、女としての火照りを止められません。
 
 真の美貌のお力は魔王様のものっ!! 決して誰も抗うことができないっ!!
 私はそう確信せざるを得なかったのです。

「思い知ったか、美の力を。
 そしてこの女と比類なく美しい姫よ。お前も同じ力を持っとるんや。
 心して聴くがええ。
 これから争いが起きるぞ。いや、この期に及んでは起きないで済むわけがないんや。
 東方の童話に姫に難題を突き付けられた男どもが恋のライバルに勝つためならどんな不正もやってのけた話があるが、今からそれと同じことが起きるぞ。
 そして、それはあの皇太子かてだって同じことや。お前を手に入れるためなら何でもする。何でもな。」

「ラーマよ。お前はその美しい瞳で世界が破滅に向かう姿を見ていればいい。
 お前の美しさに目がくらんだ汚らわしい権力者共やお前を裏切る者達がこの世界から消え去っていく姿をな・・・・・・。」


 ・・・・・・そこまでは私の記憶があるのです。
 どうやら、私。お話の途中で魔王様の美貌に耐えられなくなって・・・・・・失神してしまったようです。
 「ようです」というのは、その時の状況は失神した私を解放してくださったお姉様から教えていただいたからです。

「旦那さまったら、『ようやく口説き落とせるってところまで来たのに、失神しやがってっ!』と、相当お怒りでしたわよ。」

 そう仰るお姉様のつややかな肌の張りを見ると、そのあと魔王様が何をしてお怒りをお沈めになられたのかは察せるのですが、とても聞く気にはなりません。
 しかし・・・。

「明けの明星様は仰いました。これから争いが起きると・・・。
 何が起きるというのでしょうか?」

 とても気がかりだったことを私が口にすると、お姉様はとても厳しいお顔で教えてくださいました。

「戦争が起きるのです。
 あなたが失神している間に大国スパーダの外交官が親書を携えてやってきました。
 
 ” この度の騒動でこちらが融資した金額がいくらか御存じか?
  当国がうわさ聞きたるところによれば、此度こたびの事は全て出来レースであったとか。
  結婚商法でこのような出来レースがあるのは周知の事実。しかし、何事にも限度というものがある。
  当国が融資した金額を考えれば、これは暗黙のルールを超えた無法むほうと言わざるをえない。
  かくなる上は当国のメンツの為にも実力行使で姫を頂く。 戦火をまき散らしたくなければ、無駄な抵抗はやめて姫の方から、こちらに来いっ!!

 そのような内容のかなりきつい口調の親書でした。

 そ、そんな・・・・・・。たかが私の結婚の事で戦争なんて・・・・・・。

「戦争は避けねばなりませんっ!! 
 私、私。スパーダに輿入こしいれしますっ!!」
 
 慌ててそういう私の唇を左手の指で押さえたお姉様は「もう手遅れです。」と仰るのです。

「親書は旦那様がおられる前で読み上げられたのです。あの旦那様の・・・・・・目の前でですよ?
 外交官の首は一瞬で跳ねられ、遺体は城外に捨てられました。
 外交官の首を撥ねるなどこれほどの無法はありません。これを謝罪したくらいで許す国があるものですか。
 ・・・・・・戦争回避など不可能なのです。」

 私は目の前が再び真っ白になって意識を失ってしまいました・・・・・・。
 そして、お姉様の仰ったとおり、どのような戦争回避のための外交策を使ってもすべてが無駄に終わり、外交官が殺されてから1カ月後、正式にスパーダが宣戦布告をいたしたのでした。詐欺レースにお金を巻き上げられた上に外交官が殺されてしまったのです。無理もない事なのです。

「・・・・・・どうしてこのようなことになってしまったのでしょう。
 もともとはただの婚姻外交だったのに・・・。」

 戦争を回避することが難しいと悟った私が頭を抱えてしまいました。しかし、魔王様は仰います、

「ふふふ。この世にメリットだけの存在などあるものか。全ては表裏の性質を持つ。
 力を持つ者は、その力で人をきつけ支配もするが、同時に争いも産むのだ。
 すなわち破滅も呼ぶ。」

 ゾッとするような笑顔を浮かべて仰ったのですのです。
 私は尋ねます。

「明けの明星様。では、今後はいかように?
 私どもはどうすればよいのでしょうか?」

「知れたことっ!! 戦いになれば、皆殺しにするまでやっ!!
 薄汚い連中がこの世界からいなくなったら、少しはこの世界も救われるってもんやものだ。」

 ・・・・・・っ!!
 なんということをっ!!

「明けの明星様っ!! 魔王様っ!!
 それはなりませんっ!!
 もとはと言えば、こちらに非があること。きちんと謝りましょうっ! そして何年かかっても融資していただいたお金を返しましょう。
 話せばわかってもらえるはずですっ!!」

 そう、あの時は私達も困窮こんきゅうし、ついやってしまったこと。非をびて懇切丁寧こんせつていねいに事情を説明すればわかってもらえるはずです。
 
「お前は底なしのアホたれやな。
 あいつらは出来レースがよくあることと認めたうえで・・・・・・・・・・・・・戦争を仕掛けてきたんやで?
 そんな奴らに話し合いが通用すると思うか?」
ええかきけ? お前、あいつらが止まると思うなよ。
 あいつらはな。狂っとるんじゃ。
 あいつらはお前と言う美の化身を手に入れる為やったら、何でもするぞ。
 元々、疲弊ひへいした新国家エデンは狙われとった。金の競争で負けたら戦争で手に入れることになるのは自明の理。
 お前は、その戦争の火種に油を注ぐ形になっただけで戦争はいつか必ず起こった。」
「この上でどこの誰が理性と理屈を求めると思う?
 全てを奪い、蹂躙じゅうりんするまで止まらん。」

「魔族とはそういう物や。」

「・・・そ、そんな・・・。」

 万事休す。私は戦争不可避を知らされると力無く、その場に座り込んでしまいました。
 お姉様は私の下へ近づいて私をサポートするかのように抱いてくださいました。

「お姉様。・・・・・・。お姉様。
 私・・・どうすればいいの?」

 私の問いかけにお姉様は本当に悲しそうなお顔を見せるだけで答えることは出来ませんでした。
 それが・・・答えだったのです。
 魔王様は続けて仰いました。


「戦火は広がる。
 名誉のため、名声の為。お前と言う美の象徴を手に入れるために争う愚かな者だけやないぞじゃないぞ
 お前と言う美の化身に心底惚れ込み、お前を手に入れる為やったら何でもする者もこの戦争に加担するからや。」

「見せてもらうぞっ!! 運命の花嫁よっ!
 貴様が本当に世界を救える子羊なのかをなっ!!」

 そう言うと魔王様は蜃気楼のように姿をお隠しになられました。
 執務室には絶望に震える私とお姉様のみが残るのみでした。
 



感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

『床下に札束を隠す金髪悪女は、毎朝赤いマットの上で黒の下着姿で股を開く』〜ストレッチが、私の金脈〜

まさき
恋愛
毎朝六時。 黒の下着姿で、赤いヨガマットの上に脚を開く。 それが橘麗奈、二十八歳の朝の儀式。 ストレッチが終わったら、絨毯をめくる。 床下収納を開けて、封筒の束を確認する。 まだある。今日も、負けていない。 儚く見える目と、計算された貧しさで男の「守りたい」を引き出し、感情を売らずに金だけを回収してきた。 愛は演技。体は商売道具。金は成果。 ブリーチで傷んだ金髪も、柔らかく整えた体も、全部武器だ。 完璧だったはずの計算が、同じマンションに住む地味な男——青木奏の登場で、狂い始める。 奢らない。 触れない。 欲しがらない。 それでも、去らない。 武器が全部外れる相手に、麗奈は初めて「演じない自分」を見られてしまう。 赤いマットの上で、もう脚を開けなくなる朝が来るまでの話。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。