四人の令嬢と公爵と

オゾン層

文字の大きさ
20 / 101
婚約

アミーレアの異変

しおりを挟む



 ガルシア令嬢が旅立って一日が経った。

 アミーレアの王宮は昨日の騒動があったものの、以前と変わらぬ風景が広がっていた。
 使用人達はそれぞれの仕事をこなし、騎士も王宮の警護に勤しんでいる。
 事の中心であるロズワートは相変わらずアレッサとの逢瀬に現を抜かしていた。

 いつも通りの平穏な空気が流れる王宮にて、ただ一人鬼気迫る思いだったのが、国王アグナスであった。





「……どういうことだ?」


 アグナスに問われた兵士は、苦虫を噛んだような顔をしていた。


「私はガルシア辺境伯に事の内容を伝えよとお前に頼んだはずだ」

「はっ」

「なのに、ガルシア領への出入りが禁止されているとは、一体どういうことなのだ!?」

「はっ、それが……」


 言いづらそうにしている兵士を、アグナスは険しい顔で迫る。


「何があったというのだ!?」

「……現在、ガルシア領は隣国の兵士に占拠されておりまして、他国はおろか自国の我々ですら手が出せない状態なのです」

「……なんだと?」


 アグナスが最も恐れていたことが起きてしまった。

 ガルシア領の占領。
 それすなわち外交の遮断であり、他国との繋がりを一切合切断ち切られる形となる。
 そうなってしまったということは、資金巡りは国内のみとなり、財政の圧迫は逃れられないということであった。
 しかも国内の資金は殆どガルシア辺境伯の外交が担っていたも同然であり、その喪失がこれからの王国に大打撃を及ぼすことも予想できた。できてしまった。


「隣国とは、まさか……」


 アグナスの額に嫌な汗が流れる。そして、これ以上予感が当たらないことを願った。強く願っていた。


「……ベルフェナールです」

「!!!!!」


 的中してしまった。


「どうすれば、どうすれば良いのだ……」

「……陛下、これはベルフェナールの無断占拠、宣戦布告でありますが、如何なさいますか?」

「今考えているであろう!?」


 アグナスは頭を抱えたが、どれだけ考えても最良の案が浮かび上がることはなかった。

 兵士の言った通り、これはベルフェナールからの宣戦布告とも取れるため、戦争を起こすことは可能である。しかし、ベルフェナールは他国からも強豪と恐れられ、下手に攻めれば王国が消えうる可能性のが高い。たとえ戦争を起こさず談話での解消となると、彼方がどのような条件でガルシア領を解放するのかはわからない。どちらにせよリスクが高過ぎるのだ。

 どうにかして解決策を編みだそうとしていたアグナスだったが、そこに新たなる兵士が駆けつけてきた。


「陛下!たった今、ベルフェナールから通達がありました!!」

「なんだ!?向こうはなんと!?」

「それが、こちらの文書に……陛下だけが見ることを許可すると」


 そう言って兵士がアグナスに渡した手紙には、糸が何重にも巻かれており簡単には解けないような造りとなっていた。


「危険物の確認で開封を試みましたが、ビクともしないのです」

「そうか……いい。私が開けるからお前達はもう下がって良いぞ」

「え、しかし……」

「大丈夫だ。だから下がれ」

「「はっ!」」


 兵士二人が部屋を立ち去った後、アグナスは手紙に巻かれた糸の一本に手をかけた。

 すると、開かなかったと言われた糸はするすると解けていき、白く綺麗な封筒が露わになった。


「これは……彼方の国に伝わる魔法の技術か」


 感心しつつ、アグナスは恐る恐る封筒を開き、中に入っていた数枚の文書に綴られた文字を目で追いかけた。



 文書の中身を全て読み終えた後、手紙の意味を悟ったアグナスはより悩まされる羽目になった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています

鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。 指示を出さない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。 それなのに―― いつの間にか屋敷は落ち着き、 使用人たちは迷わなくなり、 人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。 誰かに依存しない。 誰かを支配しない。 それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。 必要とされなくてもいい。 役に立たなくてもいい。 それでも、ここにいていい。 これは、 「何もしない」ことで壊れなかった関係と、 「奪わない」ことで続いていった日常を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

龍人の愛する番は喋らない

安馬川 隠
恋愛
魔法や獣人などが混在する世界。 ハッピーエンドの裏側で苦しむ『悪役令嬢』はヒロインから人以下の証を貰う。 物として運ばれた先で出会う本筋とは相容れないハッピーエンドへの物語

【完結】愛する人が出来たと婚約破棄したくせに、やっぱり側妃になれ! と求められましたので。

Rohdea
恋愛
王太子でもあるエイダンの婚約者として長年過ごして来た公爵令嬢のフレイヤ。 未来の王となる彼に相応しくあろうと、厳しい教育にも耐え、 身分も教養も魔力も全てが未来の王妃に相応しい…… と誰もが納得するまでに成長した。 だけど─── 「私が愛しているのは、君ではない! ベリンダだ!」 なんと、待っていたのは公衆の面前での婚約破棄宣言。 それなのに…… エイダン様が正妃にしたい愛する彼女は、 身分が低くて魔力も少なく色々頼りない事から反発が凄いので私に側妃になれ……ですと? え? 私のこと舐めてるの? 馬鹿にしてます? キレたフレイヤが選んだ道は─── ※2023.5.28~番外編の更新、開始しています。 ですが(諸事情により)不定期での更新となっています。 番外編③デート編もありますので次の更新をお待ちくださいませ。

皇帝陛下!私はただの専属給仕です!

mock
恋愛
食に関してうるさいリーネ国皇帝陛下のカーブス陛下。 戦いには全く興味なく、美味しい食べ物を食べる事が唯一の幸せ。 ただ、気に入らないとすぐ解雇されるシェフ等の世界に投げ込まれた私、マール。 胃袋を掴む中で…陛下と過ごす毎日が楽しく徐々に恋心が…。

【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!

まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。 お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。 それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。 和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。 『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』 そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。 そんな…! ☆★ 書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。 国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。 読んでいただけたら嬉しいです。

私に用はないのでしょう?

たくわん
恋愛
サクッと読める短編集

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

処理中です...