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婚約
アミーレアの異変
しおりを挟むガルシア令嬢が旅立って一日が経った。
アミーレアの王宮は昨日の騒動があったものの、以前と変わらぬ風景が広がっていた。
使用人達はそれぞれの仕事をこなし、騎士も王宮の警護に勤しんでいる。
事の中心であるロズワートは相変わらずアレッサとの逢瀬に現を抜かしていた。
いつも通りの平穏な空気が流れる王宮にて、ただ一人鬼気迫る思いだったのが、国王アグナスであった。
「……どういうことだ?」
アグナスに問われた兵士は、苦虫を噛んだような顔をしていた。
「私はガルシア辺境伯に事の内容を伝えよとお前に頼んだはずだ」
「はっ」
「なのに、ガルシア領への出入りが禁止されているとは、一体どういうことなのだ!?」
「はっ、それが……」
言いづらそうにしている兵士を、アグナスは険しい顔で迫る。
「何があったというのだ!?」
「……現在、ガルシア領は隣国の兵士に占拠されておりまして、他国はおろか自国の我々ですら手が出せない状態なのです」
「……なんだと?」
アグナスが最も恐れていたことが起きてしまった。
ガルシア領の占領。
それすなわち外交の遮断であり、他国との繋がりを一切合切断ち切られる形となる。
そうなってしまったということは、資金巡りは国内のみとなり、財政の圧迫は逃れられないということであった。
しかも国内の資金は殆どガルシア辺境伯の外交が担っていたも同然であり、その喪失がこれからの王国に大打撃を及ぼすことも予想できた。できてしまった。
「隣国とは、まさか……」
アグナスの額に嫌な汗が流れる。そして、これ以上予感が当たらないことを願った。強く願っていた。
「……ベルフェナールです」
「!!!!!」
的中してしまった。
「どうすれば、どうすれば良いのだ……」
「……陛下、これはベルフェナールの無断占拠、宣戦布告でありますが、如何なさいますか?」
「今考えているであろう!?」
アグナスは頭を抱えたが、どれだけ考えても最良の案が浮かび上がることはなかった。
兵士の言った通り、これはベルフェナールからの宣戦布告とも取れるため、戦争を起こすことは可能である。しかし、ベルフェナールは他国からも強豪と恐れられ、下手に攻めれば王国が消えうる可能性のが高い。たとえ戦争を起こさず談話での解消となると、彼方がどのような条件でガルシア領を解放するのかはわからない。どちらにせよリスクが高過ぎるのだ。
どうにかして解決策を編みだそうとしていたアグナスだったが、そこに新たなる兵士が駆けつけてきた。
「陛下!たった今、ベルフェナールから通達がありました!!」
「なんだ!?向こうはなんと!?」
「それが、こちらの文書に……陛下だけが見ることを許可すると」
そう言って兵士がアグナスに渡した手紙には、糸が何重にも巻かれており簡単には解けないような造りとなっていた。
「危険物の確認で開封を試みましたが、ビクともしないのです」
「そうか……いい。私が開けるからお前達はもう下がって良いぞ」
「え、しかし……」
「大丈夫だ。だから下がれ」
「「はっ!」」
兵士二人が部屋を立ち去った後、アグナスは手紙に巻かれた糸の一本に手をかけた。
すると、開かなかったと言われた糸はするすると解けていき、白く綺麗な封筒が露わになった。
「これは……彼方の国に伝わる魔法の技術か」
感心しつつ、アグナスは恐る恐る封筒を開き、中に入っていた数枚の文書に綴られた文字を目で追いかけた。
文書の中身を全て読み終えた後、手紙の意味を悟ったアグナスはより悩まされる羽目になった。
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