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やがて私は大学を卒業し、ブライアンと結婚しました。
ブライアンは父親の商会で下働きから始めていろんな仕事を覚え、今では支店を任されています。
私との結婚を機に副社長に就任し、父親を補佐して経営に参加するようになりました。私も加わり、家族みんなで仕事を頑張っています。もの凄く大きな商会という訳ではなく、そこそこではありますが、贅沢しなければ充分に食べていけます。ブライアンも相変わらず優しいし、私は自分が幸せだと思っています。
マデリンはその間に子供を産んだので、しばらく会うことはありませんでした。
その後、私の出産とマデリンの二番目の子供の出産が同時期だったため、マデリンが子連れで遊びに来るようになりました。
「セシリア! お久しぶり」
乳母に子供を抱かせたマデリンが私の家を訪れました。
「お久しぶりね、マデリン。まさか同じ月に子供が生まれるなんてね。そう言えば、ジョイスとケリーも今年初めての子供が生まれる予定なのよ。そのうち、みんな子連れで会えるわね」
「あら、そうなの……? でも私は、セシリアだけでいいわ。あの二人がいるとゆっくり話が出来ないから」
相変わらずマデリンはあの二人が苦手なようです。
「上のお子さんは今日はどうしてるの? 」
「家庭教師が来ているのよ。お義母様がついてて下さるから大丈夫よ」
上の子は男の子なので、どうやら義母に取られているようです。
本当はいろいろ愚痴を言いたいのでしょうが、今日は乳母が一緒に来ているので下手な事は言えないみたい。
当たり障りのない世間話と、子育ての話だけで和やかに時間は過ぎていきました。
(いつもこんなだったら楽しいのに。ずっと乳母がついて来てくれないかしら)
愚痴さえ無ければマデリンは普通のお友達なのです。
その後は私も二人目を産んだり、仕事を再開したりで忙しく、気がつけばあまりマデリンと会うこともなく年月が過ぎていきました。
私の子供が二人とも学校に通うようになると早速、マデリンから会おうという連絡がありました。
凄く久しぶりにカフェで会うことになり、待ち合わせの場所に着くとやはりマデリンは遅刻して来ました。
「ごめんなさいセシリア、お待たせしちゃって」
「いいけど、子供達との予定もあるからそんなに長い時間お付き合い出来ないわよ」
「ええ、わかってるわ。あと一時間ほどね」
それからはマデリンの独壇場でした。よっぽど愚痴が溜まっていたのか、ケーキを食べる間も惜しんで話し続けます。
「義母の子育てへの干渉が酷いの。私の意見なんて聞いてもらえない」
「夫は義母の言いなりよ。私の味方は誰もいないの」
「侯爵家なんて堅苦しいばっかり。私の子供たちには家を出て自由に生きて欲しい」
「子供達が外に出たら私も付いていくわ。あんな家、出ていってやる」
「セシリアが羨ましい。自由に生きて仕事も出来て。私は、外出も自由に出来ないし、本当に籠の鳥なの。こうしてセシリアに会うことだけは許されているのよ。それ以外はずっと家の中で義母と顔を突き合わせているわ。気分が落ち込んでしまうの」
暗い顔で話すマデリンに私は同情しました。
「でも子供達はきっとあなたの味方よ。だから強く心を持ってね」
「いえ、子供達も甘やかす義母のところばかり行くわ。娘は『お母様のような生き方はしたくない』なんて言うし。私は義母のせいで子供にも馬鹿にされているのよ」
「最近体調も悪くて。薬ばかり飲んでいるわ。元々体温が低いから、微熱でも凄くしんどいの。今日も少し熱があるんだけど、せっかくセシリアに会えるんだからと無理して来たのよ」
「まあ、マデリン! そんなに無理してはいけないわ。すぐ帰った方がいいわよ」
「大丈夫よ。あなたに会えて気分も良くなったわ。心配してくれてありがとう」
少し表情の明るくなったマデリンは、時間いっぱい愚痴を話し終えると手を振って帰って行きました。
私はまたしてもグッタリして帰宅したのですが、ブライアンが心配してくれました。
「またマデリンか? 君がそんなに疲れてしまうのなら、会うのをやめた方がいいんじゃないか?」
「ありがとうブライアン。でも彼女、私以外に愚痴を話せる人がいないんですって。辛い結婚生活を送っているようだからせめて話くらい聞いてあげようと思っているのよ。私は、あなたと結婚してとても幸せだからそれくらいのこと……」
「だからって、愚痴ばかりぶつけるのは本当の友達と言えないと思うよ。君はいつもマデリンに会うと暗い顔で帰ってくるもの」
その時の私は、マデリンが頼れるのは私だけだと思っていたので、ブライアンの忠告に従わずそれ以降もマデリンの愚痴に付き合うことになるのでした。
ブライアンは父親の商会で下働きから始めていろんな仕事を覚え、今では支店を任されています。
私との結婚を機に副社長に就任し、父親を補佐して経営に参加するようになりました。私も加わり、家族みんなで仕事を頑張っています。もの凄く大きな商会という訳ではなく、そこそこではありますが、贅沢しなければ充分に食べていけます。ブライアンも相変わらず優しいし、私は自分が幸せだと思っています。
マデリンはその間に子供を産んだので、しばらく会うことはありませんでした。
その後、私の出産とマデリンの二番目の子供の出産が同時期だったため、マデリンが子連れで遊びに来るようになりました。
「セシリア! お久しぶり」
乳母に子供を抱かせたマデリンが私の家を訪れました。
「お久しぶりね、マデリン。まさか同じ月に子供が生まれるなんてね。そう言えば、ジョイスとケリーも今年初めての子供が生まれる予定なのよ。そのうち、みんな子連れで会えるわね」
「あら、そうなの……? でも私は、セシリアだけでいいわ。あの二人がいるとゆっくり話が出来ないから」
相変わらずマデリンはあの二人が苦手なようです。
「上のお子さんは今日はどうしてるの? 」
「家庭教師が来ているのよ。お義母様がついてて下さるから大丈夫よ」
上の子は男の子なので、どうやら義母に取られているようです。
本当はいろいろ愚痴を言いたいのでしょうが、今日は乳母が一緒に来ているので下手な事は言えないみたい。
当たり障りのない世間話と、子育ての話だけで和やかに時間は過ぎていきました。
(いつもこんなだったら楽しいのに。ずっと乳母がついて来てくれないかしら)
愚痴さえ無ければマデリンは普通のお友達なのです。
その後は私も二人目を産んだり、仕事を再開したりで忙しく、気がつけばあまりマデリンと会うこともなく年月が過ぎていきました。
私の子供が二人とも学校に通うようになると早速、マデリンから会おうという連絡がありました。
凄く久しぶりにカフェで会うことになり、待ち合わせの場所に着くとやはりマデリンは遅刻して来ました。
「ごめんなさいセシリア、お待たせしちゃって」
「いいけど、子供達との予定もあるからそんなに長い時間お付き合い出来ないわよ」
「ええ、わかってるわ。あと一時間ほどね」
それからはマデリンの独壇場でした。よっぽど愚痴が溜まっていたのか、ケーキを食べる間も惜しんで話し続けます。
「義母の子育てへの干渉が酷いの。私の意見なんて聞いてもらえない」
「夫は義母の言いなりよ。私の味方は誰もいないの」
「侯爵家なんて堅苦しいばっかり。私の子供たちには家を出て自由に生きて欲しい」
「子供達が外に出たら私も付いていくわ。あんな家、出ていってやる」
「セシリアが羨ましい。自由に生きて仕事も出来て。私は、外出も自由に出来ないし、本当に籠の鳥なの。こうしてセシリアに会うことだけは許されているのよ。それ以外はずっと家の中で義母と顔を突き合わせているわ。気分が落ち込んでしまうの」
暗い顔で話すマデリンに私は同情しました。
「でも子供達はきっとあなたの味方よ。だから強く心を持ってね」
「いえ、子供達も甘やかす義母のところばかり行くわ。娘は『お母様のような生き方はしたくない』なんて言うし。私は義母のせいで子供にも馬鹿にされているのよ」
「最近体調も悪くて。薬ばかり飲んでいるわ。元々体温が低いから、微熱でも凄くしんどいの。今日も少し熱があるんだけど、せっかくセシリアに会えるんだからと無理して来たのよ」
「まあ、マデリン! そんなに無理してはいけないわ。すぐ帰った方がいいわよ」
「大丈夫よ。あなたに会えて気分も良くなったわ。心配してくれてありがとう」
少し表情の明るくなったマデリンは、時間いっぱい愚痴を話し終えると手を振って帰って行きました。
私はまたしてもグッタリして帰宅したのですが、ブライアンが心配してくれました。
「またマデリンか? 君がそんなに疲れてしまうのなら、会うのをやめた方がいいんじゃないか?」
「ありがとうブライアン。でも彼女、私以外に愚痴を話せる人がいないんですって。辛い結婚生活を送っているようだからせめて話くらい聞いてあげようと思っているのよ。私は、あなたと結婚してとても幸せだからそれくらいのこと……」
「だからって、愚痴ばかりぶつけるのは本当の友達と言えないと思うよ。君はいつもマデリンに会うと暗い顔で帰ってくるもの」
その時の私は、マデリンが頼れるのは私だけだと思っていたので、ブライアンの忠告に従わずそれ以降もマデリンの愚痴に付き合うことになるのでした。
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