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ある時、ジョイスが遊びに来ました。
「ジョイス! 久しぶりね! 来てくれて嬉しいわ」
「セシリア、私も会えて嬉しいわ。ようやく王都勤務になったのよ」
軍所属のジョイスの夫は長く地方都市で勤務していましたが、この度昇級して王都に配属になったのです。今後は地方へ行くことはないらしく、頻繁に会えると思うと楽しみです。
すっかり仲良くなって庭で遊び始めた子供達を見守りつつ、いろんな話に花を咲かせます。
「ケリーのワインも今年優秀賞を貰っていたわね。今、注文が殺到して大忙しらしいわ」
「ええ、本当に美味しいワインですもの。賞を取ってたくさんの人に知ってもらえて良かったわね」
「ねえ、ところでセシリア。私、夫が昇級した時に王宮のパーティーに出席したのよ。パーティーなんて十年振りくらいで、緊張しちゃったわ」
「まあパーティーへ? 私もずっと出席していないわ。どうだった? 楽しかった?」
私の夫ブライアンの商会は貴族よりも平民との商談がほとんどです。貴族と商談をするのはもっと高位貴族がやっている大きな商会ですから、私達は出る幕がないのです。
だから社交界で顔を広げる必要性があまりなく、たまにお義父様が出席なさるくらいで私とブライアンはパーティーにはほとんど参加していないのでした。
「うーん、雰囲気はセレブ感あって素敵だったけどね。パーティーって私には合わないわね。疲れちゃった。あっそうそう、マデリンを見かけたわよ」
「あら、マデリンに? 旦那様も?」
「それが、旦那様は相変わらず社交嫌いらしくて、マデリンはいつも一人で来るんですって。リリアナ達と五、六人でお酒も入ってキャッキャと騒いでいたわ。随分明るくなっていてびっくりよ」
「えっ、そうなの?」
(マデリン、パーティーでは明るくしているの……? それに、リリアナのことを嫌いなのではなかったかしら)
「マデリンと少し話したんだけどね、リリアナ達とは一緒に旅行したりショッピングしたり、仲良くしているみたい。『あの人達とは生活レベルが同じだから一緒にいて楽なの』って言ってたわ。やっぱり私達とは階級が違うって昔から思っていたんでしょうねえ。リリアナ達といる時は生き生きしていたわ」
「そうなんだ……」
私はマデリンにずっと聞かされてきた話と随分違うことにショックを受けていました。
「観劇にもハマっているらしくて、毎日のように劇場に通っているみたいよ。子供達を放ったらかしで。あ、これは別の人から聞いたんだけどね」
(観劇って、チケット代もかなりお高いはず。毎日行けるなんて凄いわ。あんなに、どこにも出掛けられない籠の鳥だと辛そうに言っていたのに)
「それとね」
ジョイスは急に声をひそめて子供達に聞こえないように言いました。
「若い俳優に入れ上げてしまって、随分貢いでいるんですって。どうやら不適切な関係も結んでいるらしいの」
「ええっ! 本当に……?」
ジョイスは真面目な顔で頷きます。
「社交界のご婦人方の間では有名な話みたい。マデリンの旦那様とお義母様は滅多に社交の場に出てこないから、噂が伝わってないんじゃないかって」
「もし不倫だとしたら早く縁を切らないとダメよね。子供達の耳に入ってもいけないし」
母親が不倫しているなんて、子供にとってはかなりの衝撃です。
「そうよねえ。そろそろ多感な時期だもの。でもそんなことを冷静に考えられないくらい、その彼に熱くなってるのかしら」
私はマデリンが本当に不幸なのかわからなくなってきました。
「ジョイス! 久しぶりね! 来てくれて嬉しいわ」
「セシリア、私も会えて嬉しいわ。ようやく王都勤務になったのよ」
軍所属のジョイスの夫は長く地方都市で勤務していましたが、この度昇級して王都に配属になったのです。今後は地方へ行くことはないらしく、頻繁に会えると思うと楽しみです。
すっかり仲良くなって庭で遊び始めた子供達を見守りつつ、いろんな話に花を咲かせます。
「ケリーのワインも今年優秀賞を貰っていたわね。今、注文が殺到して大忙しらしいわ」
「ええ、本当に美味しいワインですもの。賞を取ってたくさんの人に知ってもらえて良かったわね」
「ねえ、ところでセシリア。私、夫が昇級した時に王宮のパーティーに出席したのよ。パーティーなんて十年振りくらいで、緊張しちゃったわ」
「まあパーティーへ? 私もずっと出席していないわ。どうだった? 楽しかった?」
私の夫ブライアンの商会は貴族よりも平民との商談がほとんどです。貴族と商談をするのはもっと高位貴族がやっている大きな商会ですから、私達は出る幕がないのです。
だから社交界で顔を広げる必要性があまりなく、たまにお義父様が出席なさるくらいで私とブライアンはパーティーにはほとんど参加していないのでした。
「うーん、雰囲気はセレブ感あって素敵だったけどね。パーティーって私には合わないわね。疲れちゃった。あっそうそう、マデリンを見かけたわよ」
「あら、マデリンに? 旦那様も?」
「それが、旦那様は相変わらず社交嫌いらしくて、マデリンはいつも一人で来るんですって。リリアナ達と五、六人でお酒も入ってキャッキャと騒いでいたわ。随分明るくなっていてびっくりよ」
「えっ、そうなの?」
(マデリン、パーティーでは明るくしているの……? それに、リリアナのことを嫌いなのではなかったかしら)
「マデリンと少し話したんだけどね、リリアナ達とは一緒に旅行したりショッピングしたり、仲良くしているみたい。『あの人達とは生活レベルが同じだから一緒にいて楽なの』って言ってたわ。やっぱり私達とは階級が違うって昔から思っていたんでしょうねえ。リリアナ達といる時は生き生きしていたわ」
「そうなんだ……」
私はマデリンにずっと聞かされてきた話と随分違うことにショックを受けていました。
「観劇にもハマっているらしくて、毎日のように劇場に通っているみたいよ。子供達を放ったらかしで。あ、これは別の人から聞いたんだけどね」
(観劇って、チケット代もかなりお高いはず。毎日行けるなんて凄いわ。あんなに、どこにも出掛けられない籠の鳥だと辛そうに言っていたのに)
「それとね」
ジョイスは急に声をひそめて子供達に聞こえないように言いました。
「若い俳優に入れ上げてしまって、随分貢いでいるんですって。どうやら不適切な関係も結んでいるらしいの」
「ええっ! 本当に……?」
ジョイスは真面目な顔で頷きます。
「社交界のご婦人方の間では有名な話みたい。マデリンの旦那様とお義母様は滅多に社交の場に出てこないから、噂が伝わってないんじゃないかって」
「もし不倫だとしたら早く縁を切らないとダメよね。子供達の耳に入ってもいけないし」
母親が不倫しているなんて、子供にとってはかなりの衝撃です。
「そうよねえ。そろそろ多感な時期だもの。でもそんなことを冷静に考えられないくらい、その彼に熱くなってるのかしら」
私はマデリンが本当に不幸なのかわからなくなってきました。
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